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世界規模での挑戦:魚類の種多様性を河川の流況から読み解く

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概要

東京工業大学理工学研究科土木工学専攻の吉村千洋准教授とオリバー・サベドラ特任准教授の研究室は、世界規模での河川における魚類種数を、流況(用語1)指標と他の環境要因を用いて予測する経験的なモデルを開発した。

研究の背景

世界各地において生物多様性の減少が深刻な懸念となる最中、河川においては水利用の増加に加えて気候変動が自然の流況を変化させ、魚類種数を含めた淡水生物多様性に影響を及ぼしている。しかし、利用できる生物データは限られており、また河川の流れの多様性を表現する流況指標が未だ発展段階であるため、全球規模での流況と魚類種数の関係は未だ明らかとなっていなかった。

研究成果

対象河川において、生態学的に重要とされる流況を観測流量に基づき評価した上で、一般化線形モデル(用語2)を適用することで魚類種数との関係解析を行った。世界初の経験的知見として、特定の低水・高水特性が河川流域規模の魚類種数の多様性を説明する重要な要因であることが示唆された。また、今後の予測されている水利用や気候変動に基づき、将来の魚類種数の変化を定量的に予測した。

今後の展開

魚類種数多様性の保全の観点から、絶滅リスクの高い河川を特定する際に、この発見が有益となり得る。継続的な試みとして、流況のみならず、ダムが及ぼす影響や魚類の詳細な形態分類といった要素を考慮したモデルを構築中である。

流域ごとの魚類種多様性ポテンシャルの変化.灌漑地拡大および気候変動を考慮したシナリオに基づき、将来(2036-50, FSR.f)と過去(1971-85, FSR.p)の在来種の種多様性ポテンシャルの比を表す。
図: 流域ごとの魚類種多様性ポテンシャルの変化.灌漑地拡大および気候変動を考慮したシナリオに基づき、
将来(2036-50, FSR.f)と過去(1971-85, FSR.p)の在来種の種多様性ポテンシャルの比を表す。

用語説明

(1) 流況
流れの特性。時々刻々と変化する河川流量をその強さ、頻度、期間、時期、変化率といった観点から包括的に言い表したもの。

(2) 一般化線形モデル
正規分布以外の分布を扱えるように線形回帰モデルを拡張したモデル

論文情報

論文タイトル:
Evaluating the relationship between basin-scale fish species richness and ecologically relevant flow characteristics in rivers worldwide
雑誌名:
Freshwater Biology
DOI:
執筆者:
Yuichi IWASAKI, Masahiro RYO, Pengzhe SUI, and Chihiro YOSHIMURA
所属:
Department of Civil Engineering, Tokyo Institute of Technology

お問い合わせ先

吉村千洋

理工学研究科 土木工学専攻 准教授

TEL: 03-5734-2597

FAX: 03-5734-3577

Email: yoshimura.c.aa@m.titech.ac.jp


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