要点
- 新しい結晶構造(原子配列)を持つ酸化物イオン伝導体グループ(新構造ファミリー)NdBaInO4(ネオジム・バリウム・インジウム酸化物)を発見
- 室温~1000℃まで①(Nd,Ba)InO3ペロブスカイトユニットと②A-希土類酸化物Nd-Oユニットから成る結晶構造であることを中性子と放射光で解明(図1)
- Nd-Oユニット内を酸化物イオンが二次元的に移動することを見出す(図1)
概要
東京工業大学理工学研究科物質科学専攻の八島正知教授、藤井孝太郎助教、茨城大学の石垣徹教授、星川晃範准教授、豪州原子力科学技術機構(ANSTO)のヘスタージェームス(James R. HESTER)博士らの研究グループは、酸化物イオン伝導体(用語1)の新しい構造ファミリーであるネオジム・バリウム・インジウム酸化物「NdBaInO4」(用語2)を発見した。NdBaInO4の結晶構造(用語3)の決定およびNdBaInO4における酸化物イオンの拡散経路の可視化にも成功した(図1)。
酸化物イオン伝導体は固体酸化物形燃料電池や酸素濃縮器などに使われており、新材料発見はこれら機器の高効率化や新規酸化物イオン伝導体、電子材料の開発を促すと期待される。
NdBaInO4の結晶構造解析にはJ-PARCに設置された茨城県の中性子回折装置、豪州ANSTOに設置された中性子回折装置、大型放射光施設SPring-8および高エネルギー加速器研究機構(KEK)放射光科学研究施設(PF)に設置された放射光X線回折計を用いた。
図1:NdBaInO4の精密化した結晶構造と酸化物イオン伝導経路。この構造は(i) A-O (Nd-O)ユニットおよび(ii) (A,A' )BO3 (= Nd2/8Ba6/8InO3)ペロブスカイトユニットから成る。酸化物イオン(O2-)伝導はA-O (Nd-O)ユニットにおいて起こる(図の⇔)。
論文情報
New Perovskite-Related Structure Family of Oxide-Ion Conducting Materials NdBaInO4, Kotaro Fujii, Yuichi Esaki , Kazuki Omoto, Masatomo Yashima , Akinori Hoshikawa , Toru Ishigaki , and James R. Hester, Chemistry of Materials, 2014, 26 (8), pp 2488-2491
電子版が2014年3月21日出版された
用語説明
用語1) 酸化物イオン伝導体(酸化物イオン伝導性材料):外部電場を印加したとき酸化物イオンが伝導できる材料。酸化物イオン伝導性材料は①純酸化物イオン伝導体および②酸化物イオン-電子混合伝導体に分類できる。
用語2) NdBaInO4:Nd, BaおよびIn陽イオンと酸化物イオンから成る酸化物。
用語3) 結晶構造:原子配列が正確な周期性を持つ物質が結晶である。結晶構造は結晶の原子配列である。結晶構造は空間群(原子配列の対称性)、単位胞パラメーター(単位胞の大きさと形)、原子座標(単位胞における原子の位置)などによって規定される。
お問い合わせ先
大学院理工学研究科物質科学専攻 教授 八島正知
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