東京工業大学は、分野を超えた研究を支援する2022年度の「異分野融合研究支援」に2つの研究チームを選出しました。
「異分野融合研究支援」は学内における研究分野の多様性を生かした異分野融合研究を推進することを目的とし、分野を横断する研究チームに対して研究費の支援を行うものです。研究領域が異なる場合のみではなく、「異なる技術、手法の組み合わせにより、既知の学問を超えた革新的な知見・知識の創出が期待できる場合」も対象としています。
本支援は2018年に東工大基金を活用して創設されました。
5回目となる2022年度は、工学院 電気電子系の荒井慧悟准教授を研究代表とするチームと、環境・社会理工学院 建築学系の沖拓弥准教授を研究代表とするチームの2チーム(計6人)が選ばれました。
2022年度「異分野融合研究支援」採択者一覧
研究課題:
ナノスケール極限環境物性科学の開拓
研究課題:
鑑賞者の多様な心理生理データに基づく英語能のエビデンス・ベースド・デザイン手法の検討
- 環境・社会理工学院 建築学系 准教授 沖拓弥
- リベラルアーツ研究教育院 准教授 安納真理子
- リーダーシップ教育院 准教授 永岑光恵
- 環境・社会理工学院 建築学系 助教 KAHLON Yuval(カーロン・ユバル)
支援決定通知書授与式は、3月7日に大岡山図書館会議室にて3年ぶりに対面で執り行い、採択チームによる研究紹介を行った後、益一哉学長、審査員の渡辺治理事・副学長(研究担当)、桑田薫理事・副学長(ダイバーシティ推進担当)、日置滋副学長(社会連携担当)、大竹尚登科学技術創成研究院長らとの懇談が行われ、活発な意見交換がありました。
荒井准教授チームの研究紹介
研究概要:
ナノスケール極限環境物性科学の開拓
30年後の未来社会、私たち人類が知覚できる世界の地平線はどこまで広がっているでしょうか?知覚の地平線は、どれだけ豊かな「情報」をこの世界からセンシングできるかによって決まります。センシングといえば、昨今のIoT化の興隆、およびそれに伴う各国の積極投資によって、爆発的に発展している技術分野です。ところが、今日のセンシング技術で得られる情報は、已然として人間生活に近い領域、つまり“常温常圧”で“マクロスケール”に限ったものがほとんどです。この世界には、例えば、地震火山・宇宙・海底などの自然界から、高圧機械や高温溶鉱炉などの産業界に至るまで、人類の知覚がいまだ及んでいない広大な領域が残されています。私たちは、量子センサと極限環境を実現する技術を融合し、このような領域を“みる”次世代センサを創出します。次世代センサの応用先として、高圧室温超伝導、地球内部組成、固体電池化学などの基礎科学から、化学プラントや海底インフラといった産業応用に至るまでを見通し、共同研究の輪が一層広がってゆくことを願っています。
沖准教授チームの研究紹介
研究概要:
鑑賞者の多様な心理生理データに基づく英語能のエビデンス・ベースド・デザイン手法の検討
英語能(English-language Noh)は能がもつ伝統的な技法や構造をベースとしているが、鑑賞者と演者双方の属性やバックグラウンドが多様であるため、同じ所作や音楽、謡(うたい)から鑑賞者が受ける印象が個々人で大きく異なる可能性がある。本研究では英語能ワークショップ時に記録・計測する、演者による所作・音楽・謡の動画データや3Dスキャンデータ、および鑑賞者の生理データ(発汗・心拍・視線行動など)や心理評価アンケートデータを分析することで、英語能の舞台設計や演出が鑑賞者に及ぼす影響を定量的に明らかにする。そして得られた知見をエビデンス(根拠)として、演出や舞台設計を効果的かつ効率的に行うための基礎的検討を行う。さらに演者の記録・計測データから英語能をVR(Virtual Reality:仮想現実)で体験可能な仮想空間を構築し、実空間とVR空間での鑑賞者の「感じ方」の違いを比較するとともに伝統芸能の継承に寄与するデジタルアーカイブの活用可能性についての知見と技術的課題を示す。
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