学際的分野研究会(Association for Collaborative Exploration Exceeding Each Specialty: ACEEES)は、東京工業大学リーディング大学院プログラム「環境エネルギー協創教育院(Academy for Co-creative Education of Environment and Energy Science: ACEEES、2018年4月1日から環境エネルギー協創教育課程に名称変更)」の修了生4人が中心となって発足しました。これまで、我が国が牽引してきた多くの機能性材料分野を持続・発展させていくために、次世代を担う若手研究者が、世界にパラダイムシフトをもたらすような革新的機能材料の開発に積極的に挑戦し、研究領域を自ら開拓することが重要です。本研究会では、異分野の若手研究者同士が容易に知識交換・共同研究できる研究協力ネットワークを構築し、積極的に革新的機能材料の開発研究に取り組む土壌を作りだすことを目的としています。合宿型のワークショップを通して異分野の研究者間が濃密に議論し、新たな研究題目を立ち上げて競争的グラントを獲得することを目指しています。運営メンバーと現在の所属は下記の通りです。
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の服部祥平助教らは、フランス・グルノーブルの環境地球科学研究所(Institut des Géosciences de l'Environnement)のエルザ・ゴーティエ(Elsa Gautier)博士、ジョエル・サバリノ(Joel Savarino)博士と米国メリーランド大学(University of Maryland)のジェームズ・ファーカー(James Farquhar)教授などとの国際共同研究により、地球規模の気候影響を与えた大規模火山噴火[用語1]の歴史を過去2600年にわたり復元することに成功した。
東工大の千葉教授、Mark Dennis Usang(マーク・ デニス・ウサング)大学院生(現マレーシア原子力庁)、石塚知香子助教、Fedir Ivanyuk(フェディエール・イヴァニューク)特任教授の研究グループは、核分裂生成物の質量数分布と全運動エネルギーの系統性と特異性を同時に記述できる理論を構築した。この研究成果により、原子炉で生成する放射性原子核の量や発生する熱の予測精度が飛躍的に向上することが期待される。
核分裂生成物の質量数分布のピーク位置(左)と全運動エネルギー(右)の実験データ。左図の横軸は核分裂する原子核の質量数、<AH>、<AL>はそれぞれ重い核分裂生成物の平均質量数、軽い核分裂生成物の平均質量数を表す。<AH>はほぼ一定値であり、<AL>は単調に増加しているが、横軸の258~260にその傾向に合わない特異な原子核が現れている。右図の横軸は核分裂原子核のZ2/A1/3(Zは陽子数、Aは質量数)、縦軸は核分裂片の全運動エネルギーの平均値を表す。この図においても、質量数258~260に、明らかに他の原子核と異なる振る舞いをする3個の原子核が示されている(T. Otsuki et al., "Bimodal nature of nuclear fission", in Heavy Elements and Related New Phenomena, edited by W. Greiner, R.K. Gupta (World Scientific, 1999), pp. 507–535, ISBN: 9789814525305.)。
京都大学化学研究所 緒方博之 教授、京都大学理学研究科 吉川元貴 博士課程学生、東京理科大学 武村政春 教授、生理学研究所 村田和義 准教授、東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)Image may be NSFW. Clik here to view. 望月智弘 研究員らの共同研究チームが、アメーバに感染する新規巨大ウイルスを発見しました。メドゥーサウイルスと名づけられたこの巨大ウイルスは、全セットのヒストン遺伝子をゲノム内に保持しており、特異な粒子形態とゲノム組成から新たな「科」に属することが明らかになりました。ヒストンは真核生物がDNAを折り畳んで核内に収納するために必須な5種類のタンパク質で、その一部を持つウイルスはこれまでに知られていました。しかし、ヒストン遺伝子全セットを保持するウイルスはメドゥーサウイルスが初めてです。真核生物のDNA関連遺伝子がウイルスに由来するという仮説が提唱されていますが、本研究成果はそうした仮説を支持する結果と考えられます。今後、ウイルスヒストンの役割などメドゥーサウイルスの感染過程を分子レベルで解明することにより、巨大ウイルスと真核生物の太古以来の共進化誌が紐解かれるのではないかと期待されます。
本研究成果は、2019年2月6日に米国の国際学術誌「Journal of Virology」にオンライン掲載されました。
Image may be NSFW. Clik here to view. 図2. メドゥーサウイルス粒子のクライオ電子顕微鏡による単粒子解析 (a)クライオ電子顕微鏡で見たメドゥーサウイルス粒子。(b)3D構築した粒子の断面図。赤矢印は核を覆う脂質二重膜がカプシドと結合している部分を表す。(c)図bの黄色い四角部分の拡大図。(d)単粒子解析による3D構築した粒子像。白矢印は粒子の大きさ(T=277)を算出するためのk値、h値。(e)図dの黒い四角部分を切り出した拡大図。
[1] Claverie J.-M., Ogata H. Ten good reasons not to exclude giruses from the evolutionary picture. Nat. Rev. Microbiol., 7, 615 (2009). doi: 10.1038/nrmicro2108-c3Image may be NSFW. Clik here to view..
[2] Claverie JM. Viruses take center stage in cellular evolution. Genome Biol. 7, 110 (2006). doi: 10.1186/gb-2006-7-6-110Image may be NSFW. Clik here to view..
[3] Forterre P. Three RNA cells for ribosomal lineages and three DNA viruses to replicate their genomes: a hypothesis for the origin of cellular domain. Proc Natl Acad Sci U S A. 103, 3669-3674 (2006). doi: 10.1073/pnas.0510333103Image may be NSFW. Clik here to view..
[4] Takemura M. Poxviruses and the origin of the eukaryotic nucleus. J Mol Evol. 52, 419-25 (2001). doi: 10.1007/s002390010171Image may be NSFW. Clik here to view..
A weak topological insulator state in quasi-one-dimensional bismuth iodide
著者 :
R. Noguchi, T. Takahashi, K. Kuroda, M. Ochi, T. Shirasawa, M. Sakano, C. Bareille, M. Nakayama, M. D. Watson, K. Yaji, A. Harasawa, H. Iwasawa, P. Dudin, T. K. Kim, M. Hoesch, V. Kandyba, A. Giampietri, A. Barinov, S. Shin, R. Arita, T. Sasagawa*, and Takeshi Kondo* (* 責任著者)
東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)のショウン・エリン・マックグリン(Shawn E. McGlynn)准教授、ソウル大学校 地球環境科学部のミン・スブ・シム(Min Sub Sim)助教、北海道大学 低温科学研究所の緒方英明特任准教授らの研究グループは、約35億年前の太古代の地球に硫酸塩還元[用語1]細菌が広く繁栄していたことを突き止めた。硫酸塩を代謝して呼吸[用語2]を行う硫酸塩還元細菌の代謝経路に働く酵素によって生じる硫黄安定同位体分別を実験的に再現して解明した。
AGUは米国の首都に本部を持つ地球・宇宙科学分野の国際的な組織で、世界の137の国と地域に約6万人の会員を有し、創立100年の歴史を持つこの分野で世界最大の学術連合です。AGUは1962年以来、全会員の中で0.1%以内の、地球・宇宙科学分野に偉大なる貢献をした会員を相互に選出し、AGUフェローとして顕彰してきています。2018年はAGU創立100周年にあたり、授賞式および招待講演は、2万8,500人を超える会員が参加した秋季大会Image may be NSFW. Clik here to view.の中日に行われました。過去100年を振り返り、今後の100年を見通す記念すべき大会の様子はデイヴィドソン会長の記事に記されています。