本研究は、文部科学省 元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の一環として行われたもので、一部の実験は高エネルギー加速器研究機構とフランスのラウエ・ランジュバン研究所との共同で実施された。本成果は5月15日に「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」のオンライン速報版に掲載された。
研究の背景
2008年に本研究グループが発見した鉄系超伝導体は、1986年に報告された銅酸化物以来の革新的な高温超伝導物質[用語1]だ。その超伝導転移温度(Tc)の高温化と発現メカニズムの解明を目指し、世界中で激しい競争が繰り広げられている。常圧下での最高TcはSmFeAsO1-xAx (A = H or F)が示すTc = 58 Kにまで向上しており、これは銅酸化物系を除くと最も高い値となっている。
図2に154SmFeAsO1-xDxの電子注入量(x)に対する各転移温度の依存性を示す。鉄系中で最も高いTcを示す超伝導相は0.05 < x ≤ 0.45において生じる。その左右を囲むように二つの反強磁性相が発達することが本研究によって初めて明らかとなった。第一反強磁性相(0.00 ≤ x ≤ 0.05)は他の鉄系超伝導体全般に見られるストライプ型の磁気構造をとる。一方で、第二反強磁性相(0.56 ≤ x ≤ 0.81)は鉄ニクタイド中で最大の磁気モーメントと特異な格子非整合構造を持つ。これらの結果は、第二反強磁性相から生じる大きな磁気モーメントの揺らぎが高い温度での超伝導の発現に重要な役割を果たしていることを示唆している。
Smart Network Polymers with Bis(piperidyl)naphthalene Cross-Linkers: Selective Fluorescence Quenching and Photodegradation in the Presence of Trichloromethyl-Containing Chloroalkanes
[参考論文1] Shunsuke Sasaki, Satoshi Suzuki, W. M. C. Sameera, Kazunobu Igawa, Keiji Morokuma, Gen-ichi Konishi, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 8194–8206. [DOI: 10.1021/jacs.6b03749Image may be NSFW. Clik here to view.]
[参考論文2] S. Sasaki, K. Igawa, G. Konishi, J. Mater. Chem. C 2015, 3, 5940-5950. [DOI: 10.1039/C5TC00946DImage may be NSFW. Clik here to view.]
Image may be NSFW. Clik here to view. 古賀逸策(1899~1982)
本学で生まれた水晶振動子は、小型化されつつ今やあらゆる電子機器に組み込まれ、ディジタル社会を支えています。古賀逸策名誉教授(当時、助教授)らの努力が実り、温度に左右されない水晶振動子が実現したのは今から85年程前の1932~33年にかけてでした。この度、この「温度無依存水晶振動子」が、社会や産業に多大な貢献をした歴史的な業績として、IEEEマイルストーン(Milestone)に認定され、記念銘板(プラーク)が贈呈されました。IEEE(アイ・トリプル・イー: The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)は、米国に本部を持つ電気電子分野の世界最大の専門家組織で、IEEEマイルストーンは、IEEEが電気・電子技術やその関連分野における歴史的偉業に対して認定する賞です。認定されるためには、25年以上に渡って世の中で高く評価を受けてきたという実績が必要です。本学にとっては、フェライトに続き2つ目のマイルストーンとなります。これを記念して、3月6日に記念式典と記念講演会、4月21日に除幕式が行われました。
引き続き、同館4階ラウンジにて開催された記念祝賀会では、IEEE Japan Council(日本支部) Chairの津田俊隆氏、文部科学省研究振興局長の関靖直氏をはじめ、日本水晶デバイス工業会会長・日本電波工業株式会社代表取締役会長兼社長の竹内敏晃氏、KDDI株式会社代表取締役社長の田中孝司氏(代読:理事・技術開発本部長の宇佐見正士氏)よりそれぞれ祝辞が述べられた後、蔵前工業会副理事長・NHK元会長の橋本元一氏の乾杯のご発声により、祝賀会が開催され、参加者は和やかに歓談しました。
記念講演会「水晶振動子のIEEEマイルストーンと情報通信の発展」
Image may be NSFW. Clik here to view. 講演会の様子
記念講演会は、大岡山西講義棟1(レクチャーシアター)で行われました。最初に、IEEE Japan Council History Committee Chairの白川功氏によって「IEEE Milestoneの概要」が説明された後、本学名誉教授の伊賀健一前学長が「古賀逸策の水晶振動子とマイルストーン」と題し、水晶振動子開発の歴史と、古賀グループが如何にしてゼロ温度係数の水晶振動子に辿り着いたかを解説しました。休憩の後、本学栄誉教授の末松安晴元学長が「水晶から光通信まで―東工大における通信の研究」と題し、古賀名誉教授の思い出やその流れをくむ本学の研究業績、さらには末松グループの大容量長距離光ファイバ通信用の半導体レーザの研究や大岡山‐長津田キャンパス間情報伝達(光通信)システム設置のいきさつなどを紹介しました。次に、日本電気株式会社代表取締役会長の遠藤信博氏が「AI・IoT・ビッグデータ、豊かな人間社会に向けて」と題して、情報通信の最先端技術について、豊富な事例を交えて、今後、AIによって“仕事”や“社会”のあり様は大きく変化するという趣旨の講演を行いました。最後に、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員の久間和生氏が「我が国の科学技術イノベーション戦略」と題して、古賀グループの仕事をイノベーションの観点から、ディジタル革命の原点・立役者であると分析したうえで、現在久間氏が国家プロジェクトとして取り組んでいる「超スマート社会」(Society 5.0)の実現に向けた我が国の技術開発の取り組みについて紹介しました。講演終了後には質疑応答も活発に行われ、出席者202名のもと盛況の内に終了となりました。
Robust Binding between Carbon Nitride Nanosheets and a Binuclear Ruthenium(II) Complex Enabling Durable, Selective CO2 Reduction under Visible Light in Aqueous Solution
著者 :
Ryo Kuriki, Muneaki Yamamoto, Kimitaka Higuchi, Yuta Yamamoto,
Masato Akatsuka, Dr. Daling Lu, Prof. Dr. Shinya Yagi, Prof. Dr. Tomoko Yoshida, Prof. Dr. Osamu Ishitani, Prof. Dr. Kazuhiko Maeda
規則的な行列演算である連立一次方程式を解く計算速度(LINPACK[用語2])でスーパーコンピュータを評価するTOP500[用語3]においては、「京」は2011年(6月、11月)に第1位、その後、2017年6月19日に公表された最新のランキングでも第8位につけています。一方、Graph500ではグラフの幅優先探索(1秒間にグラフのたどった枝の数(Traversed Edges Per Second; TEPS[用語4]))という複雑な計算を行う速度で評価されており、計算速度だけでなく、アルゴリズムやプログラムを含めた総合的な能力が求められます。