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炎症反応を制御する新たな分子MKRN2を発見 ―過剰な炎症反応を防ぐ仕組みの一端を解明―

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要旨

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター 炎症制御研究チームのシン・チャンヨン国際プログラム・アソシエイト(東京工業大学 生命理工学院 博士課程、所属は共に研究当時)と田中貴志チームリーダー、東京工業大学 生命理工学院の十川久美子准教授、徳永万喜洋教授らの共同研究チームは、炎症反応を制御する新たな分子「MKRN2」を発見しました。

ウイルスや細菌に感染したとき、私たちの体は炎症反応という一連の免疫反応を起こし、侵入した病原体と戦います。ところが、この炎症反応が何らかの原因で暴走する状態が続くと、アレルギー性疾患や、自己免疫疾患[用語1]を発症します。このことから、生体は免疫系を効率的に活性化するだけでなく、逆に抑制するシステムも備えており、炎症反応が過剰にならないよう巧妙に調節していると考えられています。田中貴志チームリーダーらはこれまで、免疫細胞内で核内タンパク質「PDLIM2[用語2]」が、炎症反応に必須の核内転写因子「NF-κB[用語3]」にユビキチン[用語4]という小さなタンパク質を付加(ユビチキン化)して、NF-κBの分解を誘導することで炎症反応を抑制する分子メカニズムを研究してきました。PDLIM2は自らが持つLIMドメイン[用語5]という特有の構造を介して、細胞内のさまざまなタンパク質と相互作用することにより機能を発揮することが知られていました。しかし、PDLIM2がNF-κBをユビキチン化して分解する反応の詳細なメカニズムは不明でした。

今回、共同研究チームは酵母ツーハイブリッド法[用語6]という手法を用いて、PDLIM2と結合するタンパク質を網羅的に探索し、炎症反応を抑制する新たなタンパク質分子の同定を試みました。その結果、MKRN2というタンパク質が、NF-κBのユビキチン化および分解を誘導することにより炎症反応を収束させる新たな分子であることを発見しました。実際、MKRN2はPDLIM2と結合し共同して、より効率的にNF-κBの働きを抑制するということが明らかになりました。また、MKRN2を欠損させた免疫細胞では、NF-κBの分解が妨げられ、コントロールの細胞と比べて、炎症反応が2~3倍増加することが分かりました。

今回解明したMKRN2による炎症反応の抑制機構は、炎症性疾患や自己免疫疾患の治療を目的とした人為的な免疫制御法の開発に役立つことが期待できます。

本研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』(4月5日付け:日本時間4月5日)に掲載されました。

背景

ウイルスや細菌に感染したとき、私たちの体は炎症反応という一連の反応を起こすことで、これらの病原体と戦います。病原体を見つけ出す働きをする代表的な免疫細胞である樹状細胞[用語7]は、細胞膜上のToll(トール)様受容体(TLR)[用語8]というセンサーを使って病原体を認識します。そしてTLRから細胞内へシグナルが伝わり、最終的に炎症反応を誘導する際に鍵となる転写因子「NF-κB」を活性化します。活性化したNF-κBは、炎症反応に必要な多くの遺伝子が順序よく働くように指令を出すという、炎症反応の開始と進行に必要不可欠な役割を果たしています。ところが、このNF-κBが何らかの原因で過剰に活性化して免疫細胞が暴走する状態が続くと、アレルギー疾患や炎症性疾患、自己免疫疾患を発症することが報告されています。このため、正常な免疫応答を保ち炎症性疾患の発症を防ぐには、NF-κBの活性をオンにするだけでなく、それを適切な時点でオフにするシステムが重要です。

2007年に田中貴志チームリーダーらは、炎症反応の抑制を研究する中で見いだした「PDLIM2(PDZ and LIM domain protein 2)」という核内タンパク質が、NF-κBの分解を誘導することにより炎症反応を抑制することを明らかにしました[注1]。NF-κBは活性化すると細胞質から核へと移行し、炎症反応に必要な多くの遺伝子の転写を誘導しますが、PDLIM2は核内に移行したNF-κBにユビキチンという小さなタンパク質を付加(ユビキチン化)します。ユビキチン化はタンパク質分解酵素の目印となることから、ユビキチン化されたNF-κBは、プロテアソーム[用語9]というタンパク分解酵素複合体により分解され炎症反応が抑制されます。このように標的タンパク質を選別して結合することでユビキチン化する役割を担う分子を「ユビキチンリガーゼ」といいます。PDLIM2は、NF-κBに対するユビキチンリガーゼとしては世界で最初に報告されました。

しかし、PDLIM2がNF-κBをユビキチン化して分解する反応の詳細なメカニズムは不明でした。そこで共同研究チームは、酵母ツーハイブリッド法という手法を用いて、PDLIM2と結合するタンパク質分子を網羅的に探索することで炎症反応を抑制する新たなタンパク質を同定し、ユビキチン化のメカニズムを解明することを試みました。

注1)
2007年4月30日 理研プレスリリース「炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明」PDF

研究手法と成果

酵母ツーハイブリッド法とは、2つのタンパク質が結合するかどうかを、酵母の細胞内で検出するシステムです。共同研究チームはこの手法を用いて、PDLIM2と結合するタンパク質を同定することを試みました。その結果、「MKRN2」というタンパク質が、PDLIM2と結合していることが分かりました。MKRN2は「RINGフィンガードメイン」という構造を持っています。一般的に、RINGフィンガードメインを持ったタンパク質はユビキチンリガーゼとして働くことが知られています。そこで、MKRN2のNF-κBに対する作用を調べたところ、MKRN2はPDLIM2と同様に、NF-κBと結合し、NF-κBをユビキチン化して分解に導くことでNF-κBの働きを抑制しました。このことから、MKRN2もNF-κBに対するユビキチンリガーゼであることが明らかになりました。

次に、NF-κBをユビキチン化・分解する反応において、MKRN2とPDLIM2という2つのユビキチンリガーゼがどのように働くのかを調べました。実験の結果、MKRN2を欠損させた細胞においては、PDLIM2がNF-κBをユビキチン化・分解する反応が著しく低下することから、PDLIM2が正常に働くためにはMKRN2の存在が必要であることが分かりました。さらに、MKRN2とPDLIM2の両者が存在するときには、それぞれ単独の場合と比べて、より効率的にNF-κBをユビキチン化・分解することも明らかになりました。

また、MKRN2を欠損させた樹状細胞をリポ多糖[用語10]で刺激したときの炎症性サイトカイン[用語11]の産生量を測定しました。その結果、コントロールの細胞と比べて2~3倍に増加しており、同時にNF-κBの分解も妨げられていました。

以上の結果から、MKRN2は、PDLIM2と共同でNF-κBをユビキチン化・分解して免疫反応を適切な時点で収束させることで、生体に過度な炎症反応が起こらないように制御していることが明らかになりました。

MKRN2およびPDLIM2による炎症反応制御機構

図1. MKRN2およびPDLIM2による炎症反応制御機構

樹状細胞において、NF-κBは活性化すると細胞質から核へ移行し、炎症反応に関連する一連の遺伝子の転写を促進することにより炎症反応を誘導する。MKRN2は、PDLIM2と共同して、核内に移行したNF-κBにユビキチンを付加(ユビキチン化)する。その結果、NF-κBはプロテアソームで分解されることで不活性化され、炎症反応は収束に向かう。

今後の期待

MKRN2とPDLIM2は、互いに協調し合って炎症反応を抑制していると考えられます。これらのタンパク質による炎症反応の抑制機構は、炎症性疾患や自己免疫疾患の治療を目的とした人為的な免疫制御法の開発に役立つと期待できます。

用語説明

[用語1] 自己免疫疾患 : 何らかの免疫異常によって自分の体や組織を異物のように認識し、自己抗体や自己に反応するリンパ球を作り、自分の体を攻撃する疾患。代表的なものに関節リウマチなどあるが、根本的な治療法は見つかっていない。

[用語2] PDLIM2 : PDZドメインとLIMドメインという2つの特殊な構造を持つタンパク質で、田中チームリーダーらが発見した。標的タンパク質となる転写因子をユビキチン化し分解を誘導することで、シグナル伝達を抑制させるように働く。

[用語3] NF-κB : 特定のDNA配列に結合して遺伝子の発現を制御するタンパク質を転写因子という。転写因子のNF-κBにはp65を含む5種類のサブユニットが知られており、これらが二量体を形成したものが転写因子として機能する。Toll様受容体が認識する菌体成分などの刺激で活性化され、炎症性サイトカインなどの発現を亢進させることで、炎症反応の誘導に中心的役割を果たす。

[用語4] ユビキチン : ユビキチンは76個のアミノ酸からなる小さなタンパク質で、標的となるタンパク質に多数のユビキチン分子が鎖状に結合すると、標的タンパク質はプロテアソームという巨大なタンパク質分解酵素複合体に認識され分解される。

[用語5] ドメイン : タンパク質分子中で複数の領域に分けることができる場合がある。これをドメインと呼び、特定の機能や構造で他と区別できる。

[用語6] 酵母ツーハイブリッド法 : 酵母の細胞内で目的のタンパク質を発現させて、タンパク質間の結合を検出する手法。試験管内で2つのタンパク質のみ存在する状態で相互作用を検討する実験系と比べて、酵母という真核細胞を用いることで、より生体内に近い条件での検討ができる。

[用語7] 樹状細胞 : 樹状突起を持つ白血球で、病原体を認識して取り込み、Tリンパ球に異物の情報を伝える。Tリンパ球は、病原体を攻撃したり、他の免疫細胞を刺激して抗体の生産を活性化する免疫細胞。

[用語8] Toll(トール)様受容体(TLR) : 病原体由来のさまざまな成分の認識に関与する膜タンパク質群の総称。ヒトでは10種類、マウスでは12種類が報告されており、それぞれのTLRが病原体特異的な成分(膜分子や核酸)を認識する。TLRはToll-like receptorの略。

[用語9] プロテアソーム : 細胞質や核内に分布しているタンパク質を分解する巨大な酵素複合体。ポリユビキチン鎖により標識されたタンパク質を選択的に分解する。

[用語10] リポ多糖 : グラム陰性桿菌の細胞壁を構成する糖脂質の1つ。樹状細胞の細胞膜表面にあるToll様受容体の1つTLR4を刺激することにより、転写因子NF-κBを活性する。

[用語11] 炎症性サイトカイン : サイトカインとは、細胞同士の情報伝達にかかわるさまざまな生理活性を持つタンパク質の総称。炎症性サイトカインとは、体内への病原体の侵入を受けて産生されるサイトカインで、生体防御に関与する多種類の細胞に働き、炎症反応を引き起こす。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
MKRN2 is a novel ubiquitin E3 ligase for the p65 subunit of NF-κB and negatively regulates inflammatory responses
著者 :
Chanyoung Shin, Yuma Ito, Shota Ichikawa, Makio Tokunaga, Kumiko Sakata-Sogawa, Takashi Tanaka
DOI :

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
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理化学研究所 統合生命医科学研究センター
炎症制御研究チーム 国際プログラム・アソシエイト
東京工業大学生命理工学院博士課程(研究当時)
シン・チャンヨン
チームリーダー 田中貴志

E-mail : takashi.tanaka@riken.jp
Tel : 045-503-9283 / Fax : 045-503-7064

東京工業大学 生命理工学院
准教授 十川久美子
教授 徳永万喜洋

E-mail : mtoku@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5711 / Fax : 045-924-5831

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理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
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東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


第2回「末松賞」授賞式を実施

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2月14日、第2回末松賞の授賞式が行われました。

末松賞は、末松安晴栄誉教授の「若い研究者たちが様々な分野で未開拓の科学・技術システムの発展を予知して研究し、隠れた未来の姿を引き寄せて定着させる活動が澎湃としてわき出て欲しい」との思いから、本学に対し多額の寄附をいただいたことにより創設され、今回で2回目の授賞式となりました。

(前列左から)相川清隆准教授、末松安晴栄誉教授、岩谷駿助教、吉田啓亮助教<br />(後列左から)日置滋副学長(基金担当)、三島良直学長、安藤真理事・副学長(研究担当)
(前列左から)相川清隆准教授、末松安晴栄誉教授、岩谷駿助教、吉田啓亮助教
(後列左から)日置滋副学長(基金担当)、三島良直学長、安藤真理事・副学長(研究担当)

末松栄誉教授は、光通信工学の分野において、光ファイバーの伝送損失が最小となる波長の光を発し、かつ、高速に変調しても波長が安定した動的単一モードレーザーを実現しました。現在のインターネット社会を支える大容量長距離光ファイバー通信技術の確立に大きく寄与するなどの優れた業績を挙げ、本領域の発展に多大な貢献をしました。その功績が評価され2015年度の文化勲章を受章しています。

相川准教授(左)、岩谷助教(中)、吉田助教(右)
相川准教授(左)、岩谷助教(中)、吉田助教(右)

第2回目となる本年度は、科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の吉田啓亮助教、生命理工学院 生命理工学系の岩谷駿助教、理学院 物理学系の相川清隆准教授の3名が選考されました。

授賞式には末松栄誉教授も出席し、三島良直学長からの挨拶の後、賞状の授与が行われました。次いで末松先生からも挨拶があり、その後、受賞者3名が受賞に対しての感謝と今後の意気込みを述べました。

受賞式に続き、記念撮影、懇談会が行われ、懇談会では、昨年度の第2回受賞者である理学院 物理学系の井上遼太郎助教も参加しました。

吉田助教、岩谷助教、相川准教授からは、現在行っている研究についての説明が、井上助教からは、受賞から1年が経過した現在の状況についての説明があり、それに対して末松栄誉教授と三島学長から自分たちの若手時代のことを交えた話がなされ、大変盛り上がった懇談会となりました。

懇談会の様子
懇談会の様子

東工大基金

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Email:bokin@jim.titech.ac.jp

Tel:03-5734-2415

BS ジャパン「田村淳のBUSINESS BASIC特別編 with 未来EYES」に情報理工学院の篠田浩一教授が出演

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情報理工学院 情報工学系の篠田浩一教授が、BSジャパン「田村淳のBUSINESS BASIC特別編 with 未来EYES」に出演します。

「田村淳のBUSINESS BASIC」は今ホットなビジネスの話題について、毎回様々なゲストと共に深く切り込んでいく番組です。今回は「AIが人間を支配する? ―未来の暮らしとビジネスモデル―」というタイトルで、AIの進む先や人間生活との共存について、熱い議論が行われました。

また放送に先立ち3月30日(木)に、本学レクチャーシアターにて公開収録が実施されました。収録の模様はニコニコ生放送でも配信され、レクチャーシアターにお越しいただいた約130人に加え、生放送の来場者数は約1万人にのぼりました。

篠田教授
篠田浩一教授

篠田教授からのコメント

人工知能(AI)が社会に深く浸透していく中で、職業の概念も大きく変わろうとしています。現在のAIができること・できないことは何か?

AIが今後の働き方をどのように変えていくか、そのために、今、大学で何を学んだらいいのか、など、幅広い話題について、各界の識者の方々やご来場の皆さんと楽しく議論しました。

  • 番組名
    BSジャパン「田村淳のBUSINESS BASIC」
  • タイトル
    「2045年 AIが人間を支配する?未来の暮らしとビジネスモデル」
  • 放送予定日
    2017年4月22日(土)21:00 - 22:00

公開収録の様子

  • 公開収録の様子
  • 公開収録の様子

公開収録の様子

情報理工学院

情報理工学院 ―情報化社会の未来を創造する―
2016年4月に新たに発足した情報理工学院について紹介します。

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藻類オイル抽出残渣から化学品原料の合成に成功 ―藻類バイオマスを徹底的に活用する技術を確立―

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要点

  • 石油の代替資源になりうる藻類バイオマスのさらなる有効利用
  • 均一系スズ触媒による有用化学品原料への選択的な化学変換プロセスを開発
  • オイル抽出残渣から、さらに化学品原料を合成することに成功

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の山口渉助教と科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の今村壮輔准教授らは、藻類からオイルを抽出した残渣に含まれる糖質成分から化学品原料(レブリン酸メチル[用語1]及び乳酸メチル[用語2])を合成する新たな化学変換プロセスを開発した。

トリフルオロメタンスルホン酸スズ(II)あるいは臭化スズ(IV)という2種類の均一系スズ触媒[用語3]を用いると、一段階かつ高収率の化学変換により、藻類のオイル抽出残渣からレブリン酸メチル及び乳酸メチルを合成できることを見出して実現した。この成果により、石油資源の代替になる藻類の利用価値が飛躍的に向上することになる。

石油資源の枯渇が懸念される現在、藻類の細胞内からバイオオイルを抽出してジェット燃料やバイオディーゼルへ応用する試みが注目されている。一方、藻類からバイオオイルを抽出した残渣には、デンプンを主とした糖質成分が含まれているにもかかわらず、これまで、その有効な利活用法が存在しなかった。

本研究成果は4月12日に英国科学誌ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・レポート(Scientific Reports)」オンライン版に掲載された。

研究成果

藻類の細胞内に蓄積するバイオオイルを燃料源として利用する試みが近年、注目されている。藻類からオイルを抽出した残渣には、デンプンを主成分とした多様な糖質成分が含まれている。今回は藻類バイオマス[用語4]の有効利用法の確立に向けて、藻類由来の糖質成分から有用化学品原料(レブリン酸メチル及び乳酸メチル)を選択的に合成することを目的とした。

有用化学品原料のうちレブリン酸メチルは燃料添加剤に利用されているほか、さまざまな化合物に展開することで医薬品、化粧品、プラスチックなどの化学品の合成に使われる。乳酸メチルはバイオプラスチックの一つであるポリ乳酸(PLA)の原料として利用されている。

2種類の均一系スズ触媒を使い分けることにより、目的とする化合物を一段階かつ高収率で取り出すことができる新たな化学変換プロセスを開発することに成功した。

本研究の概要

図1. 本研究の概要

背景

近年、石油資源の代替エネルギー源として「藻類バイオマス」が注目を浴びている。藻類の中には光合成の副産物として細胞内にオイルを蓄積する種類が存在する。藻類は単位時間・単位面積当たりのオイル生産性がトウモロコシの約800倍、パームの約23倍に及び、炭水化物の生産性がほかのバイオマス資源と比較して、極めて高い。

また、耕地として適さない土地および水域を利用して培養できるため、食糧生産と競合しない。こうした利点から、藻類が生産するバイオオイルを石油の代替として利用するための研究が盛んに行われている。

研究の経緯

藻類の細胞内からオイルを抽出して燃料への利用が行われている。一方、藻類からバイオオイルを抽出した残渣を利活用するための有効な技術は確立されていなかった。藻類の細胞内にはオイルだけではなく、デンプンなどの糖質成分も多く含まれている。したがって、残渣に含まれている糖質成分を有用化合物へと変換することができれば、石油の代替資源としての藻類の利用価値を飛躍的に向上させることができると考えた。

今後の展開

今回は均一系触媒による高選択的な化学変換を達成した。しかし、今後、本技術を実用化する上で、不均一系触媒への展開は必要不可欠である。また、藻類内で生産される糖質の生合成(生体内での有機物の合成)に関する詳しい分子機構を明らかにし、それらの情報を基にして、バイオマス生産性を向上させた藻類株の育種を試みる。これらの研究開発により、藻類バイオマスを炭素資源とした、有用化学品生産の実用化に向けて大きく前進することが期待される。

用語説明

[用語1] レブリン酸メチル : 工業的には燃料添加剤として利用されている。 出発物質として種々の有用化合物へと展開することで医薬品、化粧品、プラスチックなど様々な化学品の合成にも用いられている。

[用語2] 乳酸メチル : バイオプラスチック(バイオマスを原料とするプラスチック)の一つであるポリ乳酸(PLA)の原料として利用されている。PLAは植物由来のプラスチックであり、石油由来のABS樹脂の代替として利用が推進されている。

[用語3] 触媒 : ある特定の化学反応の反応速度を進める物質のこと。固体、気体、液体のいずれの形態でもよく、作用中、自身は変化し続けるが、消費・再生を繰り返し、反応の前後で正味の増減はない。均一系触媒とは相(液相、固相、気相)が同じ場合で、不均一系触媒は相が異なる場合である。生成物との分離回収や耐久性の観点から、工業的には不均一系触媒の使用が多い。

[用語4] バイオマス : 生物由来の炭素資源を指す言葉である。生物により固定された二酸化炭素は生物体内に貯蔵され、再利用される。これがバイオマスとして再度エネルギー源として利用されるとき、化石資源と同様に二酸化炭素が放出されることとなる。しかし、放出された二酸化炭素はどこかでまた生物体内に取り込まれるため、二酸化炭素の収支はゼロである(カーボンニュートラル)。二酸化炭素-バイオマス-エネルギー生産-二酸化炭素という循環の規模が大きくなれば、社会は循環型社会へと近づくことができる。

研究サポート

この研究は、JST・CREST「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」の支援を受けて実施した。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Development of New Carbon Resources: Production of Important Chemicals from Algal Residue
著者 :
Sho Yamaguchi, Yuuki Kawada, Hidetaka Yuge, Kan Tanaka, Sousuke Imamura
DOI :

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
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物質理工学院

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東京工業大学 物質理工学院 応用化学系
助教 山口渉

E-mail : yamaguchi.s.ag@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5417 / Fax : 045-924-5441

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所
准教授 今村壮輔

E-mail : simamura@res.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5859

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

TSUBAME e-Science Journal Vol.15 を発行

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学術国際情報センターが、TSUBAME e-Science Journal Vol.15を発行しました。

TSUBAME e-Science は、東工大のスーパーコンピュータTSUBAMEを利用した研究成果を発表する広報紙です。

Vol.15には、TSUBAMEグランドチャレンジ大規模計算制度で採択されたouter挑戦的な大規模計算の研究課題を含む、3つの事例が掲載されています。

  • TTX:反応性乱流の直接数値計算
  • GPUを用いた高性能並列AMRのためのハイレベルフレームワーク
  • クラウド的GPU利用を簡単にするツール:DS-CUDA

TSUBAME e-Science Journal Vol.15

TSUBAME e-Science Journal Vol.15

お問い合わせ先

学術国際情報センター TSUBAME ESJ 編集室

Email:tsubame_j@sim.gsic.titech.ac.jp

Tel:03-5734-2085

平成28年度「東工大の星」支援STAR 採択者決定

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平成28年度「東工大の星」支援(英語名称:Support for Tokyotech Advanced Researchers 【STAR】)の採択者2名が決定しました。

受賞者の集合写真(左から)三島良直学長、前田和彦准教授、瀧ノ上正浩准教授、安藤真理事・副学長(研究戦略室長)
受賞者の集合写真(左から)三島良直学長、前田和彦准教授、瀧ノ上正浩准教授、安藤真理事・副学長(研究戦略室長)

「東工大の星」支援【STAR】とは、東工大基金を活用し、将来、国家プロジェクトのテーマとなりうる研究を推進している若手研究者や、基礎的・基盤的領域で顕著な業績をあげている若手研究者に対し、大型研究費の支援を行うものです。次世代を担う、本学の輝く「星」を支援します。

また、今年度より、本支援開始以来初めての試みとして2名の「星」による研究発表会を、百年記念館フェライト記念会議室にて行ないました。研究発表は、三島良直学長、安藤真研究戦略室長、大竹尚登副学長をはじめ、リサーチ・アドミニストレーター(URA)や産学連携コーディネーター、さらに日頃より本学の産学連携活動にご理解とご協力をいただいている産学連携会員の皆様にご覧いただきました。研究発表後の交流会では、名刺交換や歓談が行なわれ、盛況のうちに終了しました。

「東工大の星」支援【STAR】の概要

目的

東工大基金を活用し、本学における優秀な若手研究者への大型支援を実施することにより、本学の中期目標である基礎的・基盤的領域の多様で独創的な研究成果に基づいた新しい価値の創造を促進し、もって、学長の方針に基づく本学の研究力強化に資することを目的とする。

支援対象者

公募によらず、様々な業績を勘案し、学長及び研究戦略室長の協議により選考する。

観点

  • 将来、国家プロジェクトのテーマとなりうる研究を推進している若手研究者
  • 基礎的・基盤的領域で顕著な業績をあげている若手研究者

役職等

若手研究者は准教授以下(原則40歳以下)とする

第4回目の今回は、2名の「星」が学長及び研究戦略室長の協議により選考されました。

所属部局
担当系
職名
氏名
准教授
准教授

研究発表をする瀧ノ上准教授
研究発表をする瀧ノ上准教授

交流会での歓談の様子
交流会での歓談の様子

東工大基金

この事業は東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

研究推進部研究企画課 研究企画第1グループ

Email : kensan@jim.titech.ac.jp

安藤真理事・副学長が平成28年度日本放送協会放送文化賞を受賞

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本学安藤真理事・副学長(研究担当)(専門分野:電磁界理論、アンテナ工学、無線通信)が、日本放送協会(NHK)の第68回(2016年度)日本放送協会放送文化賞を受賞しました。

放送文化賞は1949年度に設けられ、放送事業の発展に寄与し、放送文化の向上に貢献があった方々に毎年贈られるものです。今年度は、安藤理事・副学長(研究担当)、タレントのタモリ氏等6名の方が受賞し、贈呈式はNHKホールにて3月17日に行われました。

賞状等の記念品を授与される安藤理事・副学長(研究担当)
賞状等の記念品を授与される安藤理事・副学長(研究担当)

安藤真理事・副学長(研究担当)受賞コメント

受賞挨拶
受賞挨拶

この度は歴史ある放送文化賞をいただき、推薦いただいた方々、選考していただいた方々に感謝いたします。私は電波・アンテナの研究をしておりますが、放送文化という観点から、一番関わりの深い衛星放送を中心に書かせていただきます。

私は、1979年に大学院を修了しました。その前年に実験衛星である「ゆり」が打ち上げられています。3年後に大学に戻った時、放送文 化基金の研究助成を受けて進められていた、本学の私の恩師である後藤尚久先生の発明による 「平面型導波管スロットアンテナ」に関する研究に参加しました。ちょうどその2年後に「ゆり2号」という形となって衛星放送が始まったわけです。世界に先駆けての放送開始でした。 衛星放送は、たった100ワットで3万6千km離れた離島を含む日本全体を照らすものです。受信する側から見ますと、100倍以上の感度を持つ極めて高感度のアンテナで電波を受けるシステムです。また、むやみに隣国へ電波(干渉)を撒き散らすことは許されませんので、アンテナを設計する者にとって、これほどチャレンジングなテーマはありませんでした。それ以来、私は平面型アンテナの研究を続けております。先日スイングバイに成功し、金星に向かって旅をしている探査機「あかつき」や、火星に向かっている「はやぶさ2」に搭載されている、90 cm大の円形で1 kgに満たないような軽量のハニカムアンテナも、同じ形式のラジアルラインスロットアンテナであり、広川二郎准教授や学生と共に本研究室で設計し、NTスペース社とともに共同研究して開発したものです。搭載前の特性確認までを学内で行いました。これらの探査機が間もなく星々に到着し、このアンテナから遠い地球へ情報が送られてくる時が来るのを、我々はわくわくしながら待っております。

衛星放送に関して、私はNHK放送技術研究所の方々といろいろな場面で一緒に仕事をさせていただいています。実は、「ゆり2号a」という衛星を用いた世界で初めての放送衛星サービスが始まる1年前、最初の放送衛星では送信機が故障しました。私は、世界に先駈けて失敗したことは、成功と同様に、あるいはそれ以上に価値があることと考えています。未踏の技術の開発に主導的に携わったNHK放送技術研究所の方々のチャレンジングな姿勢と勇気に改めて敬意を表したいと思います。「直接衛星放送」そして「緊急警報放送」、「ハイビジョン」。NHKが先導して手掛けたこの3つの技術は歴史上偉大な電気・電子の業績ということで国際的にも評価され、「IEEEマイルストーン」の認定を受けております。

東京工業大学と放送との縁を幾つか述べさせていただきます。家庭用のテレビアンテナ「八木アンテナ」で知られる八木秀次先生は、東北大学に在籍していた時代にアンテナを発明され、後に本学の学長を務められました。高柳健次郎先生は本学卒業後、静岡大学で世界初の「電子的テレビ受信機」を発明されています。「温度無依存水晶振動子」は、通信、放送に不可欠な技術ですが、本学の古賀逸策先生が発明されました。これらはいずれも前述した「IEEEマイルストーン」に認定されています。このように本学の先輩たちが様々な放送技術の研究で活躍していらっしゃいます。高柳先生、古賀先生におかれては、この度私がいただいた同じ放送文化賞を受賞されていることを知り、改めて今回の受賞を非常に光栄なことだと受け止めております。

東京工業大学は、昨年4月から教育・研究の大改革を行っております。理工系総合大学ではありますが、リベラルアーツ研究教育院の教員が中心となり、全ての学生が、在学期間を通して、倫理、哲学、文学、芸術などの分野をより身近に学ぶような、カリキュラムを開始しています。近年、さまざまな課題の解決に向けて科学技術の重要性が増しており、その影響も人間や環境にまで及ぶ現在において、人間性あふれる科学技術者の育成を目指して舵を定めたところであります。今回このような時に、テレビ・ラジオでお見かけする多彩な分野の方々と共に放送文化賞をいただくということで、私自身あらためて技術と文化の連携を認識し、非常に感慨深いものがあります。

最後に研究に携わった研究室の先輩、同僚、学生諸君はもちろん、日頃から研究をご支援いただいている学内外の皆様に、改めて感謝を申し上げます。

IEEEマイルストーン:電気・電子分野の世界最大の学会であるIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.)が、開発から25年以上経過し、社会や産業の発展に多大な貢献をした歴史的業績を認定する制度。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

平成28年度手島精一記念研究賞授与式

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2月28日に東工大蔵前会館のくらまえホールにおいて、手島精一記念研究賞の授与式が行われました。授与式には、本学学内関係者ほか、蔵前工業会理事長、蔵前工業会事務局長、元手島工業教育資金団役員が臨席しました。

手島精一記念研究賞は、理工系大学における研究を奨励するために設けたものであり、特に優れた研究業績をあげた本学関係者に対して、賞状並びに副賞の授与を行っています。この賞は、東京工業大学の前身である東京工業学校及び東京高等工業学校の校長であった手島精一先生の功績を記念するため創設された財団法人手島工業教育資金団の事業の一つとして行われてまいりました。2009年4月に同財団の解散に伴い、本学に事業が継承され今日に至っています。

これまで、研究論文賞、博士論文賞、留学生研究賞、発明賞、若手研究賞(藤野・中村賞)の5つの賞を設け、特に優れた研究業績をあげた本学関係者に対して、賞状並びに副賞の授与を行っておりましたが、本年度より新たに著述賞の募集を開始し、本年度は26件・計53名の受賞者に対し、学長から賞状と副賞が授与されました。

授与式に引き続いて、ロイアルブルーホールにおいて、受賞者を囲んで祝賀会が行われ、出席者全員和やかな雰囲気のうちに閉会しました。

授与式の様子
授与式の様子

平成28年度受賞者

今年度の受賞者は、以下のとおりです。(敬称略)

研究論文賞(2件)

  • 安部聡(生命理工学院 生命理工学系 助教)
  • 井尻宏志(東京工業大学 博士研究員)
  • 根岸走(東京工業大学 大学院生)
  • 山中宏之(京都工芸繊維大学 大学院生)
  • 佐々木克人(京都工芸繊維大学 大学院生)
  • 平田邦生(理化学研究所 専任技師)
  • 森肇(京都工芸繊維大学 教授)
  • 上野隆史(生命理工学院 生命理工学系 教授)

"Design of Enzyme-Encapsulated Protein Containers by In Vivo Crystal Engineering"

  • 植木紀子(科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 研究員)
  • 井手隆広(理化学研究所 多細胞システム形成研究センター(CDB) 研究員)
  • 持地翔太(東京大学大学院 理学系研究科 元大学院生)
  • 小林勇気(科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教)
  • 得津隆太郎(基礎生物学研究所 助教)
  • 大西紀和(岡山大学 資源植物科学研究所 助教)
  • 山口勝司(基礎生物学研究所 技術職員)
  • 重信秀治(基礎生物学研究所 特任准教授)
  • 田中寛(科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 教授)
  • 皆川純(基礎生物学研究所 教授)
  • 久堀徹(科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 教授)
  • 廣野雅文(法政大学 生命科学部 教授)
  • 若林憲一(科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 准教授)

"Eyespot-dependent determination of the phototactic sign in Chlamydomonas reinhardtii"

博士論文賞(14名)

数学関係部門

  • 山木大輔(理学院 数学系 教務支援員)

"An approximation of holomorphic 1-forms on Riemann surfaces by holomorphic 1-cochains"

物理学関係部門

  • 竹森那由多(理化学研究所 基礎科学特別研究員)

"Strong electron correlation effects in a quasiperiodic lattice"

  • 永井遼(千葉大学 グローバルプロミネント研究基幹 特任助教)

"Search for direct production of charginos and neutralinos in final states with three leptons and missing transverse momentum in proton-proton collision at sqrt(s)= 8TeV with the ATLAS detector"

地球科学関係部門

  • 須田好(海洋研究開発機構 日本学術振興会特別研究員)

"Origins of Hydrocarbons in On-land Serpentinization Fields and Insights into Hadean Hydrothermal Systems:Systematic Study using Stable Isotopes"

材料工学関係部門

  • 佐藤光(GEヘルスケアジャパン株式会社 技術本部 EEDP)

"Heteroepitaxial Growth and Electron Transport Properties of 122-type Iron-Pnictide Superconductors"

  • 寺本武司(神戸大学 大学院工学研究科 助教)

「立方晶-斜方晶マルテンサイト変態を有するTiNiPd合金の自己調整組織とその形成過程に関する研究」

応用化学関係部門

  • 金子岳史(東ソー株式会社 アドバンストマテリアル研究所)

「三核ルテニウムボリレン錯体を用いた三核錯体上での含ホウ素複素三員環の構築および架橋オキソボリル配位子を有する新規なヒドリドクラスターの合成」

  • 長岡正宏(京都大学 大学院工学研究科 材料化学専攻 特定研究員)

「ルテニウムとコバルトを含む三核異種金属ポリヒドリド錯体を用いた触媒反応の開発」

機械工学関係部門

  • 邱惟(デンマーク工科大学 H.C. Ørsted Postdoc Fellow)

"Efficient Modulation of Friction in Ultrasonic Motors Using Functional Fluids"

  • 和佐泰明(早稲田大学 理工学術院 日本学術振興会特別研究員)

"Game-theoretic Learning and Cooperative Control in Sensor and Power Networks for Welfare Maximization"

電気・電子工学関係部門

  • Azril Haniz Bin Abdul Aziz (環境・社会理工学院 融合理工学系 特任講師)

"Fingerprint-based Localization of Unknown Radio Emitters in Outdoor Urban Environments"

建設関係部門

  • 佐藤公亮(東北大学 大学院工学研究科 都市・建築学専攻 助教)

「正方形中空断面部材の局部座屈決定要因の解明と構造性能の評価」

  • 堀越一輝(環境・社会理工学院 土木・環境工学系 助教)

"An experimental study of seepage-induced transport of fines in embankments"

生産・製造技術関係部門

  • 草野正大(物質・材料研究機構 ポスドク研究員)

「薬液環境で用いるFRP製機器のRBIに資する非破壊検査の適用に関する研究」

留学生研究賞(4名)

  • Chen Zhijie (Beijing University of Technology)

"Low Power Noise Shaping Techniques in a Successive Approximation Register Analog-to-Digital Converter"

  • Tokgoz Korkut Kaan (大学院理工学研究科 電子物理工学専攻)

"A 56Gb/s W-Band CMOS Wireless Transceiver"

  • Yu Lilan (株式会社テックイデア)

"Study of High Speed Open-Loop Pipeline Analog-to-Digital Converters Using Linearization Techniques"

  • 李渝(大学院理工学研究科 化学専攻)

"Novel chemical reaction on the single molecular junction"

発明賞(2件)

  • 加藤之貴(科学技術創成研究院 先導原子力研究所 教授)
  • 劉醇一(千葉大学 大学院工学研究科 准教授)
  • 高橋塁(三菱重工業株式会社 主任)
  • 平尾直也(出光興産株式会社)

「ケミカルヒートポンプ」

  • 湯浅英哉(生命理工学院 生命理工学系 教授)
  • 小倉俊一郎(生命理工学院 生命理工学系 准教授)
  • 高橋究(SBIファーマ株式会社)
  • 井上克司(SBIファーマ株式会社)
  • 田中徹(SBIファーマ株式会社)

「赤外域光による光線力学的治療又は診断剤」

若手研究賞(藤野・中村賞)(2件)

  • 石井秀明(情報理工学院 情報工学系 准教授)

「電力制御システムに対するサイバー攻撃の検知およびロバストな制御手法の構築」

  • 口丸高弘(生命理工学院 生命理工学系 助教)

「近赤外生物発光イメージング手法の開発とがん研究への応用」

著述賞(2件)

  • 伊藤亜紗(リベラルアーツ研究教育院 准教授)

「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(光文社)

  • 植松友彦(工学院 情報通信系 教授)
  • 松本隆太郎(工学院 情報通信系 准教授)

「基本を学ぶ通信工学」(オーム社)

記念写真
記念写真

お問い合わせ先

研究推進部研究企画課 手島記念担当

Email : tokodai.tejima@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2016


植物のエピジェネティクス変化をリアルタイムに捉えることに成功 ―マウスの抗体の一部が生きた植物細胞内でも抗原を認識した―

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概要

東京理科大学 理工学部 応用生物科学科 松永幸大教授、坂本卓也助教、栗田和貴大学院生、理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム 関原明チームリーダー、ケミカルゲノミクス研究グループ 吉田稔グループディレクター、東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター 木村宏教授らの研究グループは、マウスの抗体の一部を植物細胞において発現させることで、植物のエピジェネティクス変化[用語1]を生きたまま解析する方法の開発に成功しました。

植物のエピジェネティクス変化を解析するためには、生化学的手法や免疫染色法がありました。いずれの方法も、エピジェネティクス変化の代表的な指標であるヒストン修飾[用語2]を認識する抗体を使用しますが、生きた植物で解析することはできませんでした。

今回、本研究グループは、マウスで作成された抗体の一部に蛍光タンパク質を結合させた細胞内抗体(ミントボディ)[用語3]を、タバコ培養細胞で発現させました。このミントボディに用いた抗体はヒストン修飾の1つであるアセチル化リジン残基を認識します。このミントボディの動態をライブセルイメージング[用語4]、阻害剤実験、生化学実験を用いて解析しました。その結果、このミントボディは生きた植物細胞内でヒストンのアセチル化リジン残基を正常に認識していることが明らかになりました。これは、マウス由来のミントボディが植物細胞内で正常に働いたことを初めて示した報告になります。抗体を持たない植物細胞内において正常に抗体[用語5]の一部が作られ、ヒストン修飾を認識したことは、新たな植物細胞研究のツールを開発したといえます。

本成果により、時間軸を考えながら植物のエピジェネティクス変化を解析することが可能になり、エピジェネティクスにより制御される植物の環境応答や環境記憶メカニズム解明が進展することが期待されます。また動物の抗体の一部を植物細胞で発現させて、生化学や細胞生物学的な研究を行うことが可能になり、植物科学や農学研究に大きく貢献することが期待されます。

本研究成果は2017年4月18日号のネイチャー出版の科学雑誌Scientific Reportsに掲載されました。

背景

ヒストン修飾は遺伝子の発現制御に関与する重要なエピジェネティクス指標です。ヒストン修飾の中でも、ヒストンのアセチル化は遺伝子の転写活性化と相関することが知られています。そのヒストン修飾は、環境ストレス応答・記憶や発生・分化過程に重要な役割を果たすことが知られています。そのようなヒストン修飾変化の解析は、生化学的手法や免疫染色法によって行われてきました。しかし、生化学的手法では細胞集団や組織全体を実験材料とするため、単一細胞レベルでのヒストン修飾変化を解析することはできません。また、免疫染色法では、細胞固定を必要とするため、同一細胞での時系列を追ったヒストン修飾解析を行うことができませんでした。近年、ヒストン修飾を認識する抗体の一部であるミントボディを動物細胞で発現させて、生きた動物細胞において、ヒストン修飾をモニタリングすることが可能になりました。しかし、植物には抗体の遺伝子がないことから、植物細胞内でミントボディを発現させてもヒストン修飾を正常に認識できるかどうか不明でした。

内容

本研究グループは、植物細胞内で恒常的に遺伝子発現を誘導するカリフラワーモザイクウイルスのプロモーターに、ヒストンのアセチル化リジン残基を認識するミントボディ遺伝子を組み込み、タバコBY-2培養細胞に発現させました(図1)。このミントボディが植物細胞核内のヒストンのアセチル化リジン残基を認識していることを以下の実験で確認しました。まず、新規に開発したヒストン脱アセチル化酵素阻害剤・Ky-14を用いて、ヒストンのアセチル化リジン残基量を上昇させ、その条件下ではミントボディとアセチル化リジン残基の顕著な相互作用が検出されることを証明しました。次に、細胞分裂をライブセルイメージングにより経時的に解析を行い、ミントボディの核と細胞質における蛍光強度比の変化が、固定細胞を用いた免疫染色のパターンと一致することを見出しました。また、ミントボディを発現した植物細胞では細胞周期に変化がないことから、植物細胞内でも毒性がなく、細胞増殖や細胞分裂に影響を与えないことがわかりました。以上の解析結果から、生きた植物細胞においてミントボディが正常に構造を保持して、抗原であるヒストンのアセチル化リジン残基を認識することを証明しました。

ミントボディの構造と検出原理

図1. ミントボディの構造と検出原理

a:ミントボディの遺伝子構造 マウスのモノクローナル抗体由来のVHとVL遺伝子に蛍光タンパク質GFP遺伝子を連結して、植物ウィルスのプロモーターの下に挿入した。
b:ミントボディによるヒストンアセチル化のモニタリング 今回用いたミントボディはヒストンのアセチル化アミノ酸残基に結合する。低アセチル化状態では核の中に検出されるミントボディの蛍光は少ないが、高アセチル化状態ではミントボディがヒストンのアセチル化リジンを認識して結合するので、核内のミントボディの蛍光が増える。

タバコ細胞は、低温ストレスや塩ストレス[用語6]時に、ヒストンのアセチル化が上昇することが知られています。そこで、ミントボディ発現・タバコ細胞を用いて、低温や塩ストレス後のアセチル化状態をモニタリングしました。その結果、ストレスを与えてからの時間経過に伴って、ミントボディの蛍光輝度は核内で高くなり、対照的に細胞質では減少しました。ミントボディを用いて単一の植物細胞レベルで低温や塩ストレスによるエピジェネティクス変化を世界で初めて捉えることに成功しました(図2)。

ミントボディのイメージング像

図2. ミントボディのイメージング像

ミントボディを発現させたタバコ細胞の蛍光イメージング像 2個の細胞が連なっている様子を示している。中央が抜けている丸い領域(細胞核)にヒストンが存在する。低温ストレスを与えてから0(左)、1(中央)、2(右)時間後の像を示す。暖色系の色ほど、蛍光の強度が強いことを示している。ストレス経過に伴って、核内の黄色の部分が赤色に変化していることがわかる。核内のミントボディの蛍光が増えてきていることから、低温ストレスに応答してヒストンのアセチル化が増えていることがわかる。

本研究の社会的貢献

今回の研究を通じて、植物細胞におけるヒストン修飾イメージング技術を確立しました。植物の環境応答や環境記憶メカニズムを担うエピジェネティクス制御を、ヒストン修飾動態からリアルタイムで解析できるようになります。この技術を用いることで、植物細胞は外部環境の温度変化・湿度変化や物理的障害を、どのくらいの時間で応答し、どのくらいの期間、記憶しているか明らかになると期待されます。

さらに、動物の抗体の一部であるミントボディは、植物細胞内で産生された後正常な立体構造をとって、抗原を認識する事実が明らかになりました。抗体を持たない植物細胞にとって、明らかに異物であるミントボディを発現させても、速やかなオートファジーによるタンパク質分解が起こりませんでした。このことは、植物細胞が少なくとも抗体の一部には、寛容的なメカニズムを保持していることを示しています。今後はこの植物の抗体寛容の性質を利用して、特異的な抗原を精製する生化学技術や特異的な抗原の細胞内局在を明らかにする細胞生物学技術の開発が進み、植物科学や農学研究が加速することが期待されます。

本研究は、東京理科大学において、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化と生産物活用のための基盤技術の創出」(研究総括:磯貝彰 奈良先端科学技術大学院大学 名誉教授)(研究課題名「エピゲノム制御ネットワークの理解に基づく環境ストレス適応力強化および有用バイオマス産生」、研究代表者:関原明(理化学研究所 環境資源科学研究センター チームリーダー)および文部科学省・新学術領域・科学研究費「植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム」の助成を受けて実施した研究成果です。

用語説明

[用語1] エピジェネティクス変化 : DNA配列の変化が起こらないにも関わらず、遺伝子発現や表現型が変化する現象。例えば、1卵性双生児(全く同じDNAを持ったヒト)でも育った環境によって性格や体質が異なるのは、エピジェネティクス変化が起こっているためと説明される。

[用語2] ヒストン修飾 : DNAに結合する塩基性タンパク質であるヒストンのアミノ酸残基に起こる化学修飾。ヒストン修飾はエピジェネティクスの指標の一つである。

[用語3] 細胞内抗体(ミントボディ) : ミントボディは、マウスハイブリドーマ細胞由来の抗ヒストン修飾抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)をコードするcDNAを一本鎖可変断片(single-chain variable fragment、scFV)としてクローニングし、蛍光タンパク質遺伝子配列と結合させた抗体様・人工タンパク質(図1a)。特異的に認識するヒストン修飾のレベルが高いときに、ミントボディは細胞質(発現部位)よりも核(ヒストンの認識部位)に集積するため、ミントボディの核と細胞質における蛍光強度比を解析することで、単一細胞レベルでヒストン修飾をモニタリングすることが可能(図1b)。

[用語4] ライブセルイメージング : 細胞を生きたまま顕微鏡下で観察する技術。

[用語5] 抗体 : 特定の物質(抗原)を認識して結合する働きをもつタンパク質。植物には抗体の遺伝子がない。

[用語6] 塩ストレス : 植物は吸水する水分中に塩が一定以上含まれていると、ストレスが生じて成長に影響が出る。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Live imaging of H3K9 acetylation in plant cells
著者 :
Kazuki Kurita, Takuya Sakamoto, Noriyoshi Yagi, Yuki Sakamoto, Akihiro Ito, Norikazu Nishino, Kaori Sako, Minoru Yoshida, Hiroshi Kimura, Motoaki Seki, and Sachihiro Matsunaga*
*松永幸大が責任著者)
DOI :

お問い合わせ先

(本研究内容に関するお問い合わせ先)

東京理科大学 理工学部 応用生物科学科
教授 松永幸大

E-mail : sachi@rs.tus.ac.jp
Tel : 04-7124-1501(内線3442)
携帯電話 : 090-9156-4419

(JST事業に関するお問い合わせ先)

科学技術振興機構 戦略研究推進部 川口哲

E-mail : crest@jst.go.jp
Tel : 03-3512-3524

取材申し込み先

東京理科大学 研究戦略・産学連携センター(URAセンター)

E-mail : ura@admin.tus.ac.jp
Tel : 03-5228-7440

理化学研究所 広報室 報道担当

E-mail : ex-press@riken.jp
Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

科学技術振興機構 広報課

E-mail : jstkoho@jst.go.jp
Tel : 03-5214-8404 / Fax : 03-5214-8432

東工大関係者9名が平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰で「若手科学者賞」を受賞

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このたび、東工大関係者9名が、平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「若手科学者賞」を受賞しました。

「若手科学者賞」は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象としています。

科学技術分野の文部科学大臣表彰には、「若手科学者賞」の他に、特に優れた成果をあげた者を対象とする「科学技術特別賞」、顕著な功績をあげた者を対象とした「科学技術賞」等があり、「科学技術賞」でも本学から3名の教員が受賞しました。

「若手科学者賞」を受賞した東工大関係者は以下のとおりです。

相川清隆 理学院 物理学系 准教授

受賞業績:内部構造の複雑な粒子のレーザー冷却に関する研究

相川清隆 理学院 物理学系 准教授
相川清隆 理学院 物理学系 准教授

レーザーによって原子の運動を極限的に抑える技術をレーザー冷却と呼びます。これまで、レーザー冷却はアルカリ原子のような単純な内部構造を持つ原子に対してしばしば適用され、原子気体の量子的な振る舞いを明らかにする研究が行われてきました。

本研究では、この流れの延長として、より複雑な内部構造を持つ原子・分子のレーザー冷却の技術を確立し、単純な原子には見られない特有の振る舞いを明らかにしました。本研究により、複雑な粒子ならではの新しい方向性の研究が可能となりました。今後は、このような流れをさらに発展させ、原子・分子よりもはるかに複雑な内部構造を持つナノ粒子の冷却に取り組んでいきたいと考えています。

今回、このような名誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。受賞は、ひとえに共同研究者の方々、および学内外の関係者の方々のご指導・ご支援・ご協力に基づくものであり、これらの方々にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

今岡享稔 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 准教授

受賞業績:デンドリマー内包金属粒子の原子精度合成とその機能の研究

今岡享稔 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 准教授
今岡享稔 科学技術創成研究院
化学生命科学研究所 准教授

金属を極限まで微小化した、ナノ粒子よりもさらに小さいクラスターと呼ばれる物質は、長らく触媒等の機能材料として注目されてきましたが、所望のサイズのものを自在かつ選択的に得る方法は超真空チャンバー中で行われるピコモルスケールの手法であり、応用展開の目処は全く立っていませんでした。我々は、これを化学的に合成することに初めて成功し、クラスター科学の新しい領域を切り拓きつつあります。今後、本研究をさらに発展させ、新しい物質、新概念を通して世の中の役に立つような研究に励んでいきたいと思います。

今回、このような栄誉ある賞をいただくにあたり、長年にわたりご指導賜った本学の山元公寿教授をはじめ、研究室の皆様、共同研究やプロジェクト等でお世話になった学内外の関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

北野政明 元素戦略研究センター 准教授

受賞業績:無機電子化物を利用した固体触媒に関する研究

北野政明 元素戦略研究センター 准教授
北野政明
元素戦略研究センター 准教授

今回受賞対象となった研究は、無機電子化物(エレクトライド)を触媒として利用すると、温和な条件下で様々な化学反応を速やかに進行させることを見いだしたというものです。その中でも特に、アンモニア合成において、無機電子化物触媒が既存の触媒よりも低温条件下で優れた性能を示すことを見いだしました。工業的アンモニア合成では、強固な三重結合を有する窒素分子の活性化は困難であるため、高温・高圧の反応条件が必須でしたが、本触媒を用いれば、飛躍的な省エネ化に繋がる可能性を秘めています。

本触媒では、無機電子化物内に含まれる電子やヒドリドイオン(H-イオン)の役割によって優れた触媒活性が発現しており、従来の触媒とは全く異なる反応メカニズムであることを明らかにし、温和な条件下でのアンモニア合成を実現する道を開拓することに成功しました。今後は、実用化も視野に入れたアンモニア合成触媒の開発を進めていきたいと考えています。

今回の受賞にあたり、細野秀雄教授、原亨和教授、ともに研究に携わっていただいた多くの学生、博士研究員、技術員の皆様、そしてこれまで支えてくれた家族に感謝いたします。本研究が、社会に貢献できるものにつながるよう今後も努力していきたいと思います。

電子化物触媒を用いたアンモニア合成反応
電子化物触媒を用いたアンモニア合成反応

瀧ノ上正浩 情報理工学院 情報工学系 准教授

受賞業績:人工細胞構築の生物物理に関するナノマイクロシステムの研究

瀧ノ上正浩 情報理工学院 情報工学系 准教授
瀧ノ上正浩 情報理工学院
情報工学系 准教授

生命システムは、各スケールの階層が強く相関した動的な自己組織化現象です。つまり、ナノスケールの分子の化学反応や自己組織化が、物質やエネルギーの流れのある非平衡開放系のマイクロスケールの空間(細胞や組織)によって制御され、またその空間自体も分子の化学反応や自己組織化によって構築・制御される、という複雑に入り組んだ構造を持っています。このような複雑な現象の原理を解明するとともに、それにインスパイアされた有用な人工システムを構築することは、科学技術の大きな目標となっています。このような観点から、私は「人工細胞」の実現と制御を目指して研究を行ってきました。特に、マイクロ液滴を用いた人工細胞リアクタでの非平衡化学反応の制御や、情報分子DNAによる分子コンピュータの構築などを行い、動的な人工細胞の構築のための生物物理学的な基礎を進めてきました。将来的には、「生命とは何か?」といった問いに迫る基礎科学や、細胞を模倣した分子ロボットの開発などの応用科学につながると期待しています。

このたびの栄誉ある賞の受賞は、ご指導下さった先生方、および研究室メンバーをはじめとする共同研究者のご支援のおかげです。関係者の皆様に深く感謝いたします。今回の受賞を励みに、さらに尖った研究分野を切り拓きたいと考えています。

人工細胞リアクタのコンピュータ制御
人工細胞リアクタのコンピュータ制御

西迫貴志 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 准教授

受賞業績:マイクロ流路を用いた液滴および粒子生成に関する研究

西迫貴志 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 准教授
西迫貴志 科学技術創成研究院
未来産業技術研究所 准教授

私は、T字型や十字型のマイクロ流路を用いた、サイズの極めて均一な液滴(エマルション)の生成法を開発し、本手法を応用したヤヌス型、多重型等の複雑な内部構造を有する液滴の精密調製法や、そうした液滴を鋳型としたさまざまな固体微粒子の製造法を開発してまいりました。

こうした研究成果は新しい研究分野開拓の基礎となった一方、産業界においては次世代DNA分析、単一細胞解析、微粒子生産等、国内外の企業を介した成果の実用化が進んでいます。

今回、このような栄誉ある賞を受賞することができ、大変光栄に存じます。一連の研究成果は学生時代からこれまで指導、協力して下さった方々あってのことです。この場を借りて厚く御礼申し上げます。これからもより一層、研究活動を通じた新しい価値の創造と成果の社会実装に向けた取組を精力的に推進していきたいと考えております。今後ともご指導と鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

松田和浩 名城大学 理工学部 建築学科 准教授
元・東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 助教

受賞業績:木質制振建物の動的挙動解明と合理的設計法整備に関する研究

キャプション
松田和浩 名城大学 理工学部
建築学科 准教授

新旧戸建住宅の耐震性を比較的容易に向上させる手段として、建物内にダンパーを設置する制振構造が注目されています。ただし、制振構造の挙動は複雑で、設計・開発には多くの注意を要するのに対し、市場では安易にダンパーを設置した効かない制振も多く売られています。

そこで、木質架構にダンパーを入れた場合の力学的挙動や動的特性を、極めて多くの実験や詳細な数値解析により把握しました。また、等価線形化理論を用いた手法と時刻歴応答解析による手法それぞれで、地震応答の制御に必要なダンパー量を求められる合理的な設計法を提案しました。

この研究成果は、その多くが小規模住宅制振設計指針として公開される予定です。また、将来的な実現・普及が強く望まれている木質高層建物にも応用可能であり、小~大規模の木質建物の耐震性向上に大きく寄与すると考えています。

本研究は東京工業大学の笠井和彦先生、坂田弘安先生のご指導の下で行ってきたものです。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。今回の受賞を励みとし、新たな地で今後も研究・教育活動に邁進していきたいと思います。

矢野隆章 物質理工学院 応用化学系 助教

受賞業績:プラズモニクスの原理限界を超越したナノ分光法の開拓研究

矢野隆章 物質理工学院 応用化学系 助教
矢野隆章 物質理工学院
応用化学系 助教

金や銀などの貴金属からなるナノスケールの構造体に光を照射すると、その近傍に光が強く局在することが知られています。貴金属ナノ構造体と光の相互作用を扱う科学はナノプラズモニクスと呼ばれ、近年注目を集めています。私はこれまでにナノプラズモニクスの技術を駆使し、超解像分光顕微鏡の開発を行ってきました。最近では、貴金属ナノ構造に代わる新奇な光素子として誘電体ナノ構造を活用し、ナノプラズモニクスの原理限界に挑戦しています。

このたび、これまでの研究活動に対してこのような名誉ある賞を受賞することができ、大変光栄に思います。学内外の先生や共同研究者の方々はもちろん、学内の研究戦略室の研究企画委員の先生や事務の方々のご支援ご指導の賜物と厚くお礼申し上げます。特に、これまでご指導いただいた東京工業大学の原正彦先生、大阪大学の河田聡先生、井上康志先生に深く感謝いたします。

横山毅人 理学院 物理学系 助教

受賞業績:異種量子接合の研究

横山毅人 理学院 物理学系 助教
横山毅人 理学院
物理学系 助教

物性物理学の分野では「物」の示す性質(物性)に興味があります。これまでに非常に多くの研究の蓄積があり、様々な物の示す性質が明らかになってきました。

私は2つの異なる物をくっつける(接合する)ことでそれぞれの物自体は示さないような新奇な物理現象を予言してきました。特に、スピンが規則的に並ぶ磁性体や電気抵抗がゼロになる超伝導体、昨年のノーベル物理学賞でも話題になったトポロジカル物質等からなる接合において先駆的な理論を展開してきました。

受賞にあたり、指導教員や共同研究者の方々に感謝申し上げます。

渡部弘達 工学院 機械系 助教

受賞業績:炭素系エネルギー高度変換のための化学反応と輸送現象の研究

渡部弘達 工学院 機械系 助教
渡部弘達 工学院 機械系 助教

石炭やバイオマスなどの炭素系エネルギー変換におけるCO2削減が求められています。受賞対象となった私の研究は、『低炭素社会に向けた炭素系エネルギー変換のフロンティア開拓』をコンセプトにした熱化学反応系(CO2回収型燃焼)と、効率の高い電気化学反応系(燃料電池)の研究になります。これまでに、CO2回収型燃焼の特異性を活用したクリーン燃焼の実現や、固体であるチャー(炭化物)から、直接、電気エネルギーを取り出すことのできるダイレクトカーボン燃料電池の開発を進めてまいりました。

このたびは、このような名誉ある賞を受賞することができ大変光栄に思います。これまでお世話になりました先生方や、共同研究者の皆様、そして共に研究を進めてくれた学生諸氏に心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みとして、より一層、研究活動に邁進し、成果を社会に還元できるよう励んでいきたいと思います。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

東工大教員3名が平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰で「科学技術賞」を受賞

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このたび、東工大教員3名が、平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞」を受賞しました。

「科学技術賞」は科学技術分野で顕著な功績をあげた者を対象としたもので、「開発部門」、「研究部門」、「科学技術振興部門」、「技術部門」、「理解増進部門」に分かれて表彰されています。

日ごろの研究活動、研究成果を認められ、本学からは「開発部門」で2名、「研究部門」で1名が受賞しました。

科学技術分野の文部科学大臣表彰には、「科学技術賞」の他、特に優れた成果をあげた者を対象とする「科学技術特別賞」、高度な研究開発能力を有する若手研究者を対象とした「若手科学者賞」等があり、「若手科学者賞」においても本学関係者から9名の教員が受賞しました。

「科学技術賞」を受賞した東工大関係者は以下のとおりです。

科学技術賞(開発部門)

科学技術賞(研究部門)

科学技術賞(開発部門)

  • 受賞業績:超高速無線伝送ミリ波CMOS集積回路設計技術の開発
  • 受賞者:松澤昭 工学院 電気電子系 教授、岡田健一 工学院 電気電子系 准教授

研究概要

次世代無線LANや第5世代携帯電話等の情報通信インフラ構築に必要な超高速無線通信を実現するために、ミリ波帯(30 GHz-300 GHz)を用いた無線技術が必要とされています。デジタル回路等で用いられる安価で大量生産が可能なCMOS集積回路では、ミリ波帯での位相雑音特性が悪いため多値変調による高速な無線通信ができないことが長年の課題でした。

我々は、注入同期現象をミリ波帯の信号発生に利用することにより、極めて良好な位相雑音特性を実現することに成功しました。位相雑音が改善できたことでミリ波帯においても多値変調が可能となり、CMOS集積回路により世界で初めてダイレクトコンバージョン型のミリ波帯無線機を実現できました。

本開発により、60 GHz帯ミリ波無線機においても、一度に6ビットの送受信が可能となり、世界最高速となる42 Gb/sの無線通信速度を達成できました。

60 GHz帯ミリ波無線機の国際性能競争
60 GHz帯ミリ波無線機の国際性能競争

松澤昭 工学院 電気電子系 教授

松澤昭 工学院 電気電子系 教授
松澤昭 工学院
電気電子系 教授

この研究を開始した10年前、60 GHzを中心とするミリ波はその高い周波数により、超高速無線通信を期待されていましたが、位相(時間)の揺らぎが大きく、十分な通信速度を実現できていませんでした。また、安価で量産が可能なCMOS集積回路での実現も困難と思われておりました。その課題を一つ一つ克服し、CMOS集積回路を用いてミリ波本来の超高速無線通信を実現いたしました。この技術の開発の成功は9年間にわたる総務省の研究開発支援、研究開発に参加された企業や他の研究室との連携のたまものですが、企業でも困難な、先端集積回路の設計・評価を担った多くの学生の献身的な努力の結晶でもあります。関係された多くの方々に深く感謝申し上げるとともに、この技術が無線通信の発展に大きく貢献することを願っております。

岡田健一 工学院 電気電子系 准教授

岡田健一 工学院 電気電子系 准教授
岡田健一 工学院
電気電子系 准教授

高周波デバイス測定評価技術のような基盤的技術の研究から、ミリ波無線システムの設計・開発・評価までを10年間かけて行いました。当初CMOS集積回路での実現は困難であると言われていましたが、共にプロジェクトを推進した多数の企業や大学研究室の研究者からの多大な支援や助言により、世界最高速の60 GHz帯ミリ波無線機を実現することができました。本成果は多数の学生たちの協力なしでは成しえなかったものです。学生たちに感謝するとともに、本受賞を共に喜びたいと思います。

科学技術賞(研究部門)

石谷治 理学院 化学系 教授

受賞業績:二酸化炭素を還元資源化する可視光駆動光触媒の研究

石谷治 理学院 化学系 教授
石谷治 理学院 化学系 教授

人類は、地球温暖化およびエネルギー資源や炭素資源の枯渇という深刻な3つの問題に直面しつつあります。太陽光をエネルギー源とした二酸化炭素の資源化(人工光合成)は、これらの問題を一挙に解決する技術として注目を集めています。この技術の中核を担うのが、可視光により二酸化炭素の還元を駆動する光触媒です。

我々は、二酸化炭素を還元する金属錯体光触媒の性能を、詳細な反応機構の解明を通して発案した新たな分子設計により飛躍的に向上させることに成功しました。開発した光触媒は、これまで報告された中で最も効率が良く、耐久性も最も高いものです(図)。

また、元素戦略を勘案した二酸化炭素還元光触媒としては最も効率と耐久性の高い系を、鉄錯体と銅錯体を組み合わせることで創製しました。このようにして開発した金属錯体光触媒を、光酸化力の強い半導体と創発的に融合したハイブリッド光触媒を初めて開発し、可視光を用いた、水を還元剤とする二酸化炭素の光触媒還元に成功しました。更に、高効率な光捕集機能を持つ二酸化炭素還元光触媒を世界に先駆けて開発しました。

CO2光還元効率(量子収率)の世界記録
CO2光還元効率(量子収率)の世界記録

これらの研究は、資源環境技術研究所、埼玉大そして東工大において、同僚、スタッフ、学生の皆さんと一緒に継続的に行ってきました。これらの皆さんとの共同研究が受賞という形で評価していただけたことをうれしく思っています。共同研究者の皆さまに感謝いたします。人工光合成の研究は、人類の将来にとって重要な研究ですし、また学術的にもチャレンジングで面白いものです。今後も多くの方々と協力しながら、この分野に少しでも貢献できればと思っています。

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

ニュースレター「AES News」No.9 2017春号発行

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科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究(AES)センターouterは、「AES News」No.9 2017春号を発行しました。

AESセンターは、従来の大学研究の枠組みを越えて、企業、行政、市民などが対等な立場で参加する研究拠点である「オープンイノベーション」を推進しています。ここでは、低炭素社会実現のための研究プロジェクトを創生することを大きな目的の一つとしています。

本学教員と本センター企業・自治体が連携し、既存の社会インフラを活かしながら革新的な省エネ・新エネ技術を取り入れ、安定したエネルギー利用環境を実現する先進エネルギーシステムの確立を目指しています。

本センターの活動を、より多くの方々にご理解いただき、また、会員および本学教職員の連携を深めるため、季刊誌「AES News」を発行しています。今回は第9号となる2017年春号をご案内します。

ニュースレター「AES News」第9号 2017春号

第9号・2017春号

  • 科学技術創成研究院 AESセンター 浅野浩志特任教授 巻頭記事「分散型エネルギー資源を活用した地域エネルギーシステム」
  • 三菱商事共同研究講座「スマート水素ネットワークの実現への取り組み」
  • 東京ガス共同研究講座「田町スマートエネルギーネットワークが平成28年度省エネ大賞『経済産業大臣賞』を受賞」
  • AES開催報告(2017年1月~3月)
  • 2017年度の活動、今後のスケジュール等

ニュースレターの入手方法

PDF版

資料ダウンロード | 先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)outer

バックナンバーもリンク先よりご覧いただけます。
冊子版
  • 大岡山キャンパス:東工大百年記念館1階 広報棚
  • すずかけ台キャンパス:すずかけ台大学会館1階 広報コーナー

お問い合わせ先

科学技術創成研究院 先進エネルギー国際研究(AES)センター

Email : aescenter@ssr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3429

大隅栄誉教授率いる細胞制御工学研究センターを設置

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東京工業大学科学技術創成研究院は、4月1日を以て、新たに「細胞制御工学研究センター」を設置しました。その前身である「細胞制御工学研究ユニット」から継承した数々の強みを最大限活かしながら、基礎生命科学から医療・創薬への応用までを視野に入れた幅広い生命科学研究を牽引・推進することで、細胞制御工学の研究拠点と呼ぶにふさわしい研究センターを目指します。

細胞制御工学研究センターの概要

細胞制御工学研究センターの概要

1.細胞制御工学研究センター設置の経緯

2016年4月1日の科学技術創成研究院の発足に伴い、細胞生物学の新たな研究拠点として「細胞制御工学研究ユニット」を設置しました。同年、研究ユニットリーダーの大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を始めとする多数の賞を受賞し、国際的に極めて高い評価を得ました。これを機に研究拠点形成を加速するため、「細胞制御工学研究ユニット」を発展的に解消し、「細胞制御工学研究センター」を設置することとしました。また、本センターは、科学技術創成研究院において、研究ユニットから研究センターに発展する第1号となります。

2.細胞制御工学研究センターの概要

「細胞制御工学研究センター」では、生命の基本単位である細胞レベルの生命現象に焦点を当てて先端的な基礎研究を進めるとともに、それら基礎研究の成果を利用した細胞医療と創薬の基盤技術の確立という社会還元も見据えた研究拠点となることをミッションとしています。

基盤研究では、細胞の構造や機能を「観る」、分子機構解析により「知る」、 細胞編集や再構成により「操作する」ための基盤的技術を確立することと、それに基づく遺伝子の発現・再編成からタンパク質の合成・修飾・分解に至るまでの分子機構、並びに、それらが織りなす細胞機能のダイナミクスとを理解すること、の2点を中心的な課題としています。

これらを達成するため、「細胞制御工学研究ユニット」から引き継いだ学内外の研究グループにより、国際的にも先導的な細胞研究を行います。これにより、基礎生命科学から医療・創薬への応用までを視野に入れた生命科学領域を牽引・推進し、細胞制御工学の研究拠点と呼ぶにふさわしい研究センターとして活動していきます。

細胞制御工学研究センター首脳陣集合写真

細胞制御工学研究センター首脳陣集合写真
撮影日:2017年4月5日 撮影場所:すずかけ台S2棟エントランス
手前から、大隅栄誉教授
(左)木村教授、(右)田口教授
(左)駒田教授、(中)岩崎教授、(右)加納准教授

  • 様々な分野の細胞研究におけるプロフェッショナルを結集し、それぞれの強みを発揮して国際的な評価に堪える研究成果を持続的に生み出します。
  • センター内および異分野の研究者との日常的な交流を下に、新たな領域を開拓していきます。
  • 各種の最先端機器を導入して細胞研究の加速に努めます。
  • 次世代研究リーダーを輩出するため、若手研究者の自由な発想を伸ばすことが可能な新しい人材育成と研究支援のシステムの構築を進めます。
  • 国内外の研究者との連携、コンソーシアムの形成、企業連携の新しいシステム作り等、持続可能な研究体制構築を目指します。

3.細胞制御工学研究センターの体制(発足時)

  • センター長
    : 大隅良典栄誉教授
  • 大隅研究室
    : 大隅良典栄誉教授、堀江朋子助教
  • 田口研究室
    : 田口英樹教授、丹羽達也助教
  • 岩崎研究室
    : 岩崎博史教授、村山泰斗助教
  • 木村研究室
    : 木村宏教授、佐藤優子助教
  • 駒田研究室
    : 駒田雅之教授、福嶋俊明助教
  • 加納研究室
    : 加納ふみ准教授、中津大貴助教、村田昌之特任教授

お問い合わせ先

研究院事務第2グループ

Email : iir-koho@iir.titech.ac.jp

Tel : 045-924-5991

攻殻機動隊リアライズプロジェクト「ザ アワード 2016」グランプリを鈴森・遠藤研究室が受賞

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攻殻機動隊 リアライズプロジェクト(REALIZE PROJECT)「ザ アワード(the AWARD) 2016」の義体(ロボット)部門グランプリを工学院 機械系の鈴森・遠藤研究室が受賞しました。3月25日に東京ビックサイトで行われた「アニメ ジャパン(Anime Japan)2017」の中で表彰式が開催され、鈴森康一 工学院 教授、鈴森・遠藤研究室の車谷駿一さん(工学院 機械系 博士後期課程1年)、森田隆介さん(工学院 機械系 修士課程1年)が出席しました。

受賞の記念撮影(左から2人目より、森田さん、鈴森教授、車谷さん) ©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
受賞の記念撮影(左から2人目より、森田さん、鈴森教授、車谷さん)
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

攻殻機動隊リアライズプロジェクトとは

アニメ「攻殻機動隊」が発表されて25年の節目となる2014年の秋に、企業、大学の研究開発者、公共機関、そして攻殻機動隊製作委員会が、産学一体となって、攻殻機動隊に描かれている数々の近未来テクノロジーの実現を追究するプロジェクトとして攻殻機動隊リアライズプロジェクトが立ち上がりました。

今回の「ザ アワード 2016」では、2016年4月から2017年2月までに「攻殻機動隊リアライズプロジェクト」の公式ウェブサイトならびにSNSで紹介された国内先端テクノロジーニュースの中から、最も攻殻機動隊らしいテクノロジーが選出されました。読者のリーチ数、インプレッション数、アクション数を事務局が集計、順位付けした1~10位のニュースの中から、プロジェクト顧問である専門家、攻殻機動隊製作委員会ならびに制作陣によって、「電脳(人工知能)」「義体(ロボット)」の2部門のグランプリと、審査員特別賞を選出しました。

鈴森・遠藤研究室が行う人工筋肉に関する研究

人工筋肉を使った筋骨格ロボット ©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
人工筋肉を使った筋骨格ロボット
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

鈴森康一 教授が研究する、これまでより細くしなやかな人工筋肉の研究が評価され、今回の受賞となりました。本研究成果をもとに2016年に東京工業大学・岡山大学発のベンチャーである株式会社 s-muscle(エスマスル)が設立され、人工筋肉を筋繊維として編み込むことで、軽く、柔らかく、着心地のよい介護福祉用サポートスーツやコルセット、 新しいロボットや福祉機器への活用が期待されています。

受賞スピーチ(左から鈴森教授、車谷さん、森田さん) ©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
受賞スピーチ(左から鈴森教授、車谷さん、森田さん)
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

鈴森康一教授のコメント

SFアニメはロボット研究の強い原動力の一つです。その中でも熱心なファンの多い「攻殻機動隊」に評価して頂いたことは大変うれしく思います。これを励みに、人工筋肉のロボット応用研究をさらに加速しようと思います。

車谷駿一さんのコメント

SFアニメの金字塔である「攻殻機動隊」に自分の研究を高く評価していただき、アニメやゲームに親しみを持って育った世代として、今回の受賞を大変嬉しく思っています。今後も新規性、実用性だけでなく、皆さんに身近でワクワクするようなロボット研究に励んでいきたいと思います。

森田隆介さんのコメント

SFロボットに憧れ、それを実現したくてロボット研究の道を選んだ身として、このような賞を頂けたことは非常に光栄です。まだまだ課題は山積みですが、一つ一つ解決していけるよう、引き続き頑張ります。

工学院

工学院 ―新たな産業と文明を拓く学問―
2016年4月に発足した工学院について紹介します。

工学院

学院・系及びリベラルアーツ研究教育院outer

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広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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三次元DRAM、WOW技術で熱抵抗が1/3に削減

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要点

  • 3次元積層デバイスの熱抵抗[注1]計算法を確立
  • バンプとTSVを組み合わせた垂直配線に比べ、バンプレスTSVの熱抵抗は1/3に
  • IoT時代に欠かせない大容量メモリーの多層積層を3倍に

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の大場隆之教授はWOWアライアンス[用語1]と共同で、バンプレスTSV配線[用語2]を用いると、3次元積層デバイスの熱抵抗を従来のバンプ[用語3]の接合構造と比較して、30数%(1/3)まで低減できることを明らかにした。有限要素法(FEM)[用語4]と熱回路網の計算手法を用いて解析した。

解析により、バンプ接合TSV配線の3次元積層デバイスは積層部、絶縁層、有機膜が熱抵抗の主要因であることがわかった。これに対し、バンプレスTSV配線は、バンプの密度を同じにした場合、接合部の熱伝導が150倍良好であり、全体の熱抵抗では、従来手法が1.54 Kcm2/Wであるのに対して、0.46 Kcm2/Wにまで低減可能であることがわかった。

この成果は山形県天童市で4月19~21日に開かれるエレクトロニクス実装国際会議「ICEP2017」で発表された。

背景

3次元積層デバイスは、上下の接続層において、アンダーフィル材料[用語5]のような、絶縁膜、有機膜を使用する必要があるために、熱抵抗が大きくなり、放熱技術が非常に大きな課題となっている。そのため、大場教授らはウエハーを薄化してから積層し、TSVで直接上下チップを接続配線するバンプレスTSV配線を開発した。この技術を用いると、積層方向の熱抵抗の低減が期待できる。実際に従来の積層手法と比較して、バンプレスTSV配線の熱抵抗がどの程度低減するのかを推定した。

研究成果

大場教授らの研究グループは、ウエハーを薄化してから積層し、TSVで直接上下チップを接続配線するバンプレスTSV配線を開発している。この方法を用いれば、バンプが不要になり、薄化プロセスの限界までウエハーを薄くすることができる。また、この方式においては、各層間の接続に、TSV配線を利用できるために、接続部の熱抵抗が低減できると期待される。

今回、全体の熱抵抗を見積もるために、(1)3次元積層デバイスの構造を仮定する、(2)「各層の熱抵抗はFEMを用いて推定する、(3)全体の熱抵抗を熱回路網解析で推定する、という手順で実施した。

3次元積層デバイスはマイクロバンプタイプとバンプレスタイプの断面構造の比較図(図1)に示したように、シリコン基板、TSV設置シリコン基板、BEOL[用語6]、垂直方向の接合構造(マイクロバンプ構造、バンプレス構造)で構成されている。今回の研究では、BEOLと垂直方向の接合構造の熱抵抗に関しては、FEMで熱伝導率を推定、また、全体の熱抵抗の計算に関しては、熱回路網を用いて推定した。

マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの断面構造の比較図

図1. マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの断面構造の比較図

総合的な熱抵抗の推定において、マイクロバンプ構造の熱抵抗の計算に関しては、参考文献[1]の計算手法を参考に計算した。このとき、直径25マイクロメートル(μm)のマイクロバンプを使用し、50 μmピッチで配置した際の、全体の熱抵抗は1.54 Kcm2/Wと算出することができ、熱抵抗が高い要因の多くが、BEOLと垂直配線の接合構造にあることがわかった。

次に、各要素のFEM解析を図2に示すようなモデルを用いて等価熱伝導率を推定していくことにより、バンプレスタイプの熱抵抗を推定した。その結果を図3に示す。同じバンプレスタイプの垂直方向の接合の熱抵抗は、マイクロバンプタイプのそれと比較して、同じ占有率を想定した場合、150倍小さくなることが推定できた。

マイクロバンプタイプとバンプレスタイプのFEMモデルの比較

図2. マイクロバンプタイプとバンプレスタイプのFEMモデルの比較

垂直接合部の熱抵抗の占有面積依存性のグラフ

図3. 垂直接合部の熱抵抗の占有面積依存性のグラフ

この結果から、バンプレスのTSVの密度を全体の1%程度にまで減らしたとしても、熱抵抗が改善できることが分かる。そのため、TSVの本数としては、信号線として使用される本数を想定することで、放熱性としては、十分であることが分かった。

この各要素の熱抵抗から、全体の熱抵抗を計算したところ、従来のマイクロバンプの方式では、1.54 Kcm2/Wであるのに対して、0.46 Kcm2/Wにまで低減可能であることがわかった。また、各要素の熱抵抗と各層の発熱量から、それぞれの温度上昇を推定したところ、マイクロバンプタイプでは約20 ℃の温度上昇が推定されるのに対して、バンプレスタイプは、約4 ℃の温度上昇ですむことが推定された。

マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの温度上昇の比較グラフ

図4. マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの温度上昇の比較グラフ

以上の結果から、現行の温度上昇を許容するとした場合、3~4倍のDRAM積層が可能になる。仮に、現在量産されている積層DRAMが2 GBであれば、6~8 GBに容量を増やすことができる。このようなメモリーの大容量化はIoT(モノのインターネット)に向けた応用が期待される。

今後の展開

薄化ウエハーの積層と高密度TSV配線で実証実験を行い、携帯端末およびサーバー向け大容量メモリー技術として実用化を行う。

[注1] 熱抵抗 : 熱の伝わりにくさを表す値のこと。半導体は高発熱体であるため、熱が伝わりにくくなると、半導体の温度が上昇し、動作不良の原因になる。最新の半導体では、単位面積当たり100 Wから300 Wの発熱が起きる。

用語説明

[用語1] WOWアライアンス : 東京工業大学を中心に設計・プロセス・装置・材料半導体関連の複数企業および研究機関からなる研究グループ。薄化したウエハーを簡単に積層することができ、バンプレスTSV配線を用いた三次元化技術に世界で初めて開発に成功した。

[用語2] TSV配線 : Through-Silicon-Viaの略で、シリコンウエハーを貫通させ埋め込み配線で上下チップチップを接続させる接続孔。最近では、シリコン材料以外にも配線するため、前工程における垂直配線(vertical interconnects)とした方がわかりやすい。

[用語3] バンプ : 電極部にメッキで形成した配線接続のための突起。

[用語4] FEM : Finite Element Method の略。有限要素法という数値解析手法の一種。

[用語5] アンダーフィル材料 : バンプが形成されたICチップを実装される際に用いられる絶縁材料。

[用語6] BEOL : Back End of Line の略。半導体前工程の中の金属配線層作成プロセス、および、このプロセスで作成された層のことを指す。

参考文献

[1] Matsumoto, et al., "Thermal Design Guidelines for a Three-dimensional (3D) Chip Stack, Including Cooling Solutions", 29th IEEE SEMI-THERM Symposium, 2013

論文情報

掲載誌 :
IEEE 2017 International Conference on Electronics Packaging (ICEP), pp. 822-825 (2017)
論文タイトル :
A Design Guide of Thermal Resistance down to 30% for 3D Multi-stack Devices
著者 :
H. Ryoson, K. Fujimoto, and T. Ohba

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院
未来産業技術研究所 異種機能集積研究コア
秘書 沼沢文恵

E-mail : numazawa.f.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5866

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661


新アンモニア合成プロセス実用化へ ―細野秀雄教授 味の素、UMIと新会社―

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味の素(株)、UMI、東工大教授ら 世界初となるオンサイトアンモニア生産の実用化を目指す新会社を設立
―アミノ酸等の発酵副原料の安価・安定供給、農業肥料等への活用を図る―

味の素株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 西井孝明)およびユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(以下「UMI」)(本社:東京都中央区、代表取締役 月丘誠一)が管理運営を行うUMI1号投資事業有限責任組合は、東京工業大学(以下「東工大」)の元素戦略研究センター長の細野秀雄教授らと共に、科学技術振興機構(以下「JST」)の支援の下、細野グループが発明した優れた触媒を用いた、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムの実用化を目指す新会社である、つばめBHB株式会社(以下「つばめBHB」)を設立し2017年4月25日に事業を開始しました。

生体を構成するアミノ酸やタンパク質には窒素[用語1]という元素が必ず含まれており、窒素は生命活動を維持するのに不可欠です。アンモニアは窒素源となる重要な化合物で、世界総生産量は年間1億6千万トンを超えています。そのうち約8割が肥料の原料として、残り約2割は様々な食品・医薬品の原料や化成品の原料として利用されています。

現在、アンモニアは100年以上前に発明されたハーバー・ボッシュ法(以下「HB法」)を用いて主に生産されています。HB法は空気中の窒素と、天然ガス等から得られる水素[用語2]のみでアンモニアを合成することができる非常に優れた生産技術であり、世界中で広く活用されています。一方、HB法は高温かつ高圧の反応条件が必要であり、高いエネルギー負荷がかかる大型プラントでの一極集中・大量生産を行わなければならず、設備投資が高額になるという課題があります。加えて、アンモニアを生産拠点から世界各地に点在する需要地に輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから物流コストが非常に大きいことが課題となっています。

この課題を解決するため、細野教授らはJSTの戦略的創造研究推進事業 ACCEL[用語3]「エレクトライドの物質科学と応用展開」(研究代表者:細野秀雄、プログラムマネージャー:横山壽治)の研究開発において、低温・低圧条件下で高効率のアンモニア合成が可能な、HB法で用いられる触媒とは全く異なる触媒を発見・発明しました。低温・低圧の反応条件であることから、従来難しいとされた小型のプラントでの生産が可能となります。将来、この技術の実用化により、世界で初めてとなる、必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する、「オンサイトアンモニア生産」モデルの実現が期待されます。

味の素(株)は、グルタミン酸をはじめとする多種のアミノ酸等の発酵素材の生産において多くのアンモニアを原料として利用しており、従前より細野教授らの発明・発見をアンモニアの安価・安定供給を実現する画期的な基本技術として高く評価し、本技術の実用化に関する共同開発を実施してきました。味の素(株)は、つばめBHBと協力して自社工場でのオンサイトアンモニア生産の実現を図り、発酵素材のコスト競争力を高めるドライバーとする他、発酵副原料の生産および輸送におけるエネルギー消費や環境負荷を抑えることで地球との共生を目指します。

東工大の細野教授は、つばめBHBの技術アドバイザーを務め、新触媒の実用化を支援します。また東工大とつばめBHBとの共同研究により、高効率の触媒の研究開発をさらに推進します。またJST、および東工大はつばめBHBに対して、オンサイトアンモニア生産技術の基礎となる細野グループの開発による新触媒の特許のライセンスを行い、つばめBHBの事業をサポートします。

UMIはつばめBHBに対して、今後の事業推進に必要な資金を供給するとともに、取締役等の経営メンバーの派遣、事業開発体制の強化等の経営サポートを行います。UMIは上記の取り組みを通じて、素材・化学分野における有望なアカデミアシーズの社会実装の成功事例の創出を目指し、当該分野におけるエコシステムの形成に貢献します。

つばめBHBは、味の素(株)の国内外発酵素材工場に本技術を導入し、2021年頃を目処に世界初のオンサイトアンモニア生産の実用化を図ります。将来的には味の素(株)に加え、いろいろなパートナー企業と連携し、農業肥料、食品・医薬品、化成品等への適用拡大を図り、より環境に配慮したサステナブルな生産システムの実現を通じて社会への貢献を目指します。

つばめBHB株式会社について

  • 本店所在地:
    東京都中央区明石町8番1号
  • R&D拠点:
    神奈川県横浜市緑区長津田町4259番地 東工大すずかけ台キャンパス内
  • 代表取締役:
    中谷秀雄
  • 設立:
    2017年4月5日
  • 事業開始:
    2017年4月25日
  • 出資総額:
    4.5億円
  • 資本構成:
    UMI1号投資事業有限責任組合53%、味の素(株)44%、細野教授ほか3%
  • 事業内容:
    オンサイトアンモニア生産システム・触媒の研究開発・製造

参考(1) 本新技術に関連するアカデミアの概要等

国立大学法人 東京工業大学

東京工業大学は、創立から130年を越える歴史をもつ国立大学であり、日本最高峰の理工系総合大学です。「ものつくり」の精神を大切に創造性豊かな教育を実践し、日本の産業界・科学界を支える多くの人材を輩出してきました。確かな基礎力と理工系専門力、そして、人文社会系教養をあわせもち、さらに世界を舞台に活躍できるコミュニケーション能力を身につけた人材の育成を目指しています。

国立研究開発法人 科学技術振興機構

科学技術に関する基礎研究、基盤的研究開発、新技術の企業化開発、情報流通、基盤整備等に関する業務を総合的に行うことにより、日本の科学技術の振興を図る文部科学省所管の国立研究開発法人です。国民の幸福で豊かな生活の実現に向けて、新しい価値の創造に貢献し、国の未来を拓く科学技術振興を進めます。

参考(2) 新会社に出資する2社の概要等

味の素株式会社

  • 本社所在地:
    東京都中央区京橋一丁目15番1号
  • 代表取締役社長:
    西井孝明
  • 創業:
    1909年5月20日(1925年12月17日設立)
  • 資本金:
    79,863百万円(2016年3月31日現在)
  • 売上高:
    1,185,980百万円(2016年3月期 連結ベース)
  • 従業員数:
    33,295名(2016年3月31日時点 連結ベース)
  • 事業内容:
    調味料・加工食品、冷凍食品、コーヒー類、加工用うま味調味料・甘味料、動物栄養、化成品、アミノ酸、医薬の製造および販売、他

UMI1号投資事業有限責任組合

  • 所在地:
    東京都中央区明石町8番1号
  • 業務執行組合員:
    ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社
  • 組成日:
    2016年1月1日
  • 出資総額:
    10,010百万円
  • 組成目的:
    素材・化学産業のベンチャーへの投資及び育成
  • 出資者:
    株式会社産業革新機構、東証一部上場の素材・化学企業(9社)

ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社

  • 本社所在地:
    東京都中央区明石町8番1号
  • 代表取締役:
    月丘誠一
  • 設立:
    2015年10月6日

UMIは「優れた素材・化学企業の育成を通して、日本の技術力を強化し、世界に通用する産業構造を醸成する」というビジョンの下、日本企業やアカデミアが保有する、将来の産業の礎となるような優れた素材・化学分野における新技術・事業への投資活動を行っています。

細野教授のコメント

細野秀雄教授
細野秀雄教授

電子化物の研究は、JST ERATO「透明電子活性」プロジェクト(1999 - 2004)の中で始めたものです。2004年に12CaO・7Al2O3(C12A7)というセメント鉱物を取り上げ、その結晶構造を構成するゲージ中に対アニオンとして存在する酸素イオンを電子で交換することで、室温で安定な電子化物(C12A7:e)を初めて実現しました。C12A7:eは金属のように電気をよく通し、低温にすると超伝導を示します。また、アルカリ金属と同じくらい仕事関数が小さいのに、化学的に安定というユニークな物性をもっています。この性質を活用すべく、C12A7:eにルテニウムを担持し、マイルドな条件下でのアンモニア合成の触媒として検討したところ、優れた特性をもつことが分かりました。これらの一連の成果は、来年度から使われる高校の化学の教科書の一つに掲載されます。

2013年から開始されたJSTのACCELプログラムの第一号課題に選定されて以来、上記のエレクトライドのコンセプトを発展させ、いろいろなアンモニア合成触媒を開発してきました。これらの成果が、味の素(株)と政府系ファンドUMIの目に留まり、その実用化のための新社“つばめBHB”が発足しました。IGZO(イグゾー)-TFTは美しいディスプレイというbetter lifeに貢献していますが、今回は生きるために不可欠なアミノ酸の合成用ですのでessential for lifeに寄与できそうで嬉しい限りです。何とか共同研究者と力を合わせて発展させたいと思っています。

用語説明

[用語1] 窒素 : 窒素ガスは空気の約78%を占め、窒素は地球上のほぼ全ての生物にとって必須の元素。

[用語2] 水素 : 宇宙で最も多く存在する元素。近年では燃料電池車の燃料等クリーンエネルギーとしても着目されている。

[用語3] 戦略的創造研究推進事業 ACCEL : JSTの事業の一つで、世界をリードする顕著な研究成果のうち有望なものの、企業などではリスクの判断が困難な成果を抽出し、プログラムマネージャーによるイノベーション指向の研究開発マネジメントにより、企業やベンチャー、他事業等に研究開発の流れをつなげている。

お問い合わせ先

味の素株式会社 広報部 PRグループ

Tel : 03-5250-8180

ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社
広報担当・佐藤

Tel : 03-5218-7237

国立大学法人東京工業大学 広報・社会連携本部
広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

国立研究開発法人 科学技術振興機構 総務部 広報課

Tel : 03-5241-8404

マイクロ波でマグネシウム製錬の省エネ化に成功―アンテナ構造で生成効率アップ―

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要点

  • 工業的に利用されている金属の中で最も軽いマグネシウムの新たな製錬方法を開発
  • マイクロ波照射時に熱伝導性をあげるため材料の成形方法を工夫
  • 他の有用金属の製錬における省エネルギー化への応用に期待

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の和田雄二教授、藤井知特任教授らの研究グループは、オリコン・エナジー株式会社が出資するマイクロ波共同研究講座を中心に、マイクロ波を用いたマグネシウム(金属マグネシウム)製錬で、従来と比べ、70%近い省エネルギー効果が得られることを見出した。

金属マグネシウムの原料である酸化物(ドロマイト:MgO・CaO)は、マイクロ波のエネルギーを吸収しにくく、発熱しない。

今回、還元剤として導電性のあるフェロシリコン(FeSi)を、原料のドロマイトと混合して成形する際に、アンテナ構造にすることで、マイクロ波のエネルギーを集めやすくして、より低温で還元させることができた。マイクロ波の特徴である内部加熱や接触点加熱が見られ、この製錬における平均反応温度は、従来の1,200~1,400 ℃から1,000 ℃まで下がった。

本研究成果は4月12日付けの英国科学誌ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・レポート(Scientific Reports)」オンライン版に掲載された。

背景

現在、金属マグネシウムの製錬は、主に材料を高温にするピジョン法(熱還元法)が用いられ、その熱源として石炭が大量に使われている。金属マグネシウムは約80%が中国で生産されている。製錬の際に、大量の石炭を燃焼することで、大気汚染物質であるPM2.5(微小粒子状物質)の発生や二酸化炭素の大気への放出が大きな問題となっている。

ピジョン法とは、ドロマイト鉱石とケイ素鉄を高温で加熱し、蒸気になったマグネシウムを冷却して金属マグネシウムを得る方法だ。

2MgO (s) + 2CaO (s) + (Fe)Si (s) → 2Mg (g) + Ca2SiO4 (s)+ Fe (s)

s:個体、g:ガス
ドロマイト鉱物:MgO・CaO、フェロシリコン:FeSi
熱源:石炭

研究の経緯

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の和田研究室は、オリコン・エナジー(株)と2013年11月からマイクロ波を再生可能エネルギー分野に応用する共同研究をスタートさせた。翌年の7月からは、同大学内に設置した共同研究講座で、金属マグネシウムの製錬について研究を行っている。本成果は、この共同研究講座での共同研究の一環。

研究成果

通常、ドロマイトは、マイクロ波エネルギーの吸収が少なく発熱しない。そこで、還元剤にフェロシリコンを使い、ドロマイトとフェロシリコンを混合したペレット原料の形を工夫して、アンテナ[用語1]として成形することで、2.45 GHz(電子レンジの周波数と同じ)に対して共振構造になるようにして、ペレット内にマイクロ波エネルギーを閉じ込めることに成功した。

小規模実験炉では、1 gの金属マグネシウムの製錬に成功した。また、エネルギーを正確に見積もるために、実験炉の約5倍サイズの実証炉を作製、実験したところ、7 g程度の金属マグネシウムの製錬に成功した。これは、従来法に比べ、68.6%のエネルギー削減ができる。

今後の展開

金属マグネシウム製錬の省エネ化が成功したことで、この技術が酸化物の高温還元プロセスに展開・適用できる可能性が出てきた。

今後は、本研究をさらに発展すべく、他の金属材料の製錬に適用し、なかなか進まない鉄鋼・金属・材料・化学における省エネルギー化を解決し、地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素の削減に貢献していく。

ドロマイトとフェロシリコンを使ってアンテナ構造を作製

図1. ドロマイトとフェロシリコンを使ってアンテナ構造を作製

シミュレーションによるアンテナ構造有無の違いによるアプリケータ内の電場分布

図2. シミュレーションによるアンテナ構造有無の違いによるアプリケータ内の電場分布

小型炉でのマグネシウムの製錬結果

図3. 小型炉でのマグネシウムの製錬結果

用語説明

[用語1] アンテナ : 最も単純なものは、電波の波長/4の大きさにした導体(モノポールアンテナ)、この整数倍の大きさで共振する。アンテナの役割は、空間中のエネルギーを内部に取り込むことである。一般には、アンテナは、携帯電話などの通信機器に搭載されており、電波に含まれるデジタル情報を取り出すことに使われる。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Smelting Magnesium Metal using a Microwave Pidgeon Method
著者 :
Yuji Wada, Satoshi Fujii, Eiichi Suzuki, Masato M. Maitani, Shuntaro Tsubaki, Satoshi Chonan, Miho Fukui & Naomi Inazu
DOI :

物質理工学院

物質理工学院 ―理学系と工学系、2つの分野を包括―
2016年4月に発足した物質理工学院について紹介します。

物質理工学院

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お問い合わせ先

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系
教授 和田雄二

E-mail : yuji-w@apc.titech.ac.jp
Tel / Fax : 03-5734-2879

特任教授 藤井知

E-mail : fujii.s.ap@m.titech.ac.jp
Tel / Fax : 03-5734-2879

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

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オリコン・エナジー株式会社

E-mail : ir@oricon.jp
Tel : 03-3405-5252 / Fax : 03-3405-8189

NHK Eテレ「すイエんサー」に大佛俊泰教授が出演

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本学 環境・社会理工学院 建築学系の大佛俊泰教授が、NHK Eテレ「すイエんサー」に出演します。「すイエんサー」は、視聴者から寄せられる素朴な疑問、やってみたいことに「ちょっとだけ科学」の姿勢で大まじめに取り組む番組です。

左からすイエんサーガールズの(西川茉佑、佐久間乃愛、平塚麗奈さん)、大佛教授

左からすイエんサーガールズの(西川茉佑、佐久間乃愛、平塚麗奈さん)、大佛教授

大佛俊泰教授のコメント

都市解析とは、数理モデルや各種のデータを用いて、都市空間に潜む様々な“なぜ?” “どうして?”を解き明かす学問分野です。この番組では、すイエんサーガールズの皆さんが、1枚の不思議な写真を手掛かりに、東京の都市景観に潜む謎解きに挑戦します。わたしたちの日常生活において、もはや必需品となっている数値地図から意外な事実が解明されます。是非ご覧ください。

  • 番組名
    すイエんサー
  • タイトル
    「キセキの1枚が撮れた! ココドコ見つけ隊」
  • 放送予定日
    【NHK Eテレ】2017年5月16日(火) 19:25 - 19:50
  • 再放送
    【NHK Eテレ】2017年5月20日(土) 10:00 - 10:25

環境・社会理工学院

環境・社会理工学院 ―地域から国土に至る環境を構築―
2016年4月に発足した環境・社会理工学院について紹介します。

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大学内に「島津製作所 精密機器分析室」を開設 ―設備共用化や若手研究支援を加速―

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概要

東京工業大学(以下、「東工大」という)は生命理工学院内に「島津製作所 精密機器分析室」(通称:アンテナショップ[用語1])を開設した。平成28年度の大学改革による同学院の創設を機に、島津製作所から寄贈されたライフサイエンス関連先端精密機器を中心に先端的な機器を備えた施設。先端研究の推進をはじめ、若手研究者や学生などの研究支援、国際共同研究や種々の企業との産学連携の推進に活用する。また、同社においては、新たに開発した機器等を利用した産学連携スペースとして本分析室を活用することを計画している。東工大としては学内に設置された最初の企業との連携による共用機器室になる。東工大は産学連携の一つのモデルとするとともに、全学的な設備共用化をさらに加速する。

なお、東工大の生命理工学院とバイオ研究基盤支援総合センターによる本分析室を核とした設備共用化の取組は、平成29年度の文部科学省先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)[用語2]に採択されている。

島津製作所 精密機器分析室

島津製作所 精密機器分析室

設備共用化による産学連携のモデルに

東工大は平成28年度に文部科学省先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム)に3件採択され、全学的な設備共用化に取り組んでいる。さらには平成29年度に、生命理工学院とバイオ研究基盤支援総合センターによる「島津製作所 精密機器分析室」を核とした設備共用化の取組が、同事業に採択された。本分析室の設置と同事業の採択により、学内のライフサイエンス系機器の集約・共用化を推進するとともに、島津製作所製機器以外にも種々の大型機器類の共用化を進める。

対象機器・設備は事業終了後の資金運用も考慮し、稼働率だけでなく耐用状況、集約による費用効果も踏まえて選定した。それらの機器を9つの共用機器室に再配置し、必要なものは更新再生する。また研究室内に機器類を充実させることが困難な若手研究者などが実験台と汎用機器類を利用でき、実験スペースとして活用できる「共用実験室」も新たに設置する。

「共用実験室」は各研究室から共用設備として提供される汎用機器類を集約し、簡易に使用できる共用実験スペースとして提供する。複数の研究グループが使用するオープンスペースとすることで、交流とディスカッションが生まれ、新たな融合研究を育むことが期待される。実験台と汎用機器を移設し、平成29年度中頃から使用を開始する。

設備共用化の核となる「島津製作所 精密機器分析室」には平成29年度初めに島津製作所からメタボロミクス解析システム(液体クロマトグラフ質量分析計)、マイクロチップ電気泳動装置、ライフサイエンス分光光度計が寄贈された。さらに学院内の研究室に個別に整備されていた同社製機器や新たに学院で導入した同社製精密機器(フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、分光蛍光光度計、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高感度ガスクロマトグラフ、示差走査熱量計など)を平成29年度から本分析室で集約的に維持・管理することで管理運営を効率化する。

東工大では今後、本分析室を先端研究の推進をはじめ、若手研究者や学生などの研究支援、国際共同研究や種々の企業との産学連携の推進に活用することとしており、学術論文の増加や産学連携推進のための起爆剤としての効果が期待される。また、島津製作所では、本分析室を新たに開発した機器等を利用した産学連携スペースの拠点として活用することを計画している。

東工大としては学内に設置された最初の企業との連携による共用機器室になり、産学連携の一つのモデルとするとともに、全学的な設備共用化のさらなる加速を図る。

島津製作所より寄贈された「液体クロマトグラフ質量分析計」

島津製作所より寄贈された「液体クロマトグラフ質量分析計」

「島津製作所 精密機器分析室」設置の背景と経緯

東工大は平成19年に技術職員を集約して技術部を発足した際、技術部の扱う研究設備は全学共用とした。その結果、技術部は現在、約230台の全学共用の研究設備を管理・運営している。平成28年度の大学改革に伴い、「総合的な研究力を高めるための学内資源の効率的配分・運用と環境整備」を中期目標に掲げ、技術部を中心に全学における研究設備の共用化を進めると同時に、研究設備の充実と運用体制強化に取り組んでいる。

一方、生命理工学院は組織改編に伴い、生命理工学に関連した約70の研究分野を構築し、学士課程から大学院(修士課程・博士後期課程)までを一貫して教育する国内最大の生命系理工学教育研究組織として新たにスタートした。医薬品などの有機合成から、細胞、動物実験に至るまでの多彩な生命系学際研究の推進が可能となっている。こうした組織は、国内外で類を見ないものであり、産学連携も含めた様々な融合研究が展開されている。

また多彩な先端研究を行うための基盤環境として、現存する測定機器の効率的利用や先端研究人材の育成強化を加速するための基盤整備が急務となっていた。そこで、平成28年度に同学院内に研究企画推進会議を設け、学内の共同利用施設であるバイオ研究基盤支援総合センターと協力して「既存装置からの共用設備の選定と共用機器室の設置準備」を進めてきた。

用語説明

[用語1] アンテナショップ : 企業の有する高度な設備やノウハウ等を活用し、東京工業大学における研究の高度化を図ることを目的として設ける共同利用の実験室

[用語2] 先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム) : 平成28年度に文部科学省が開始した事業で、大学等の研究機関が所有する設備・機器を共用化することにより、産官学による研究開発成果を最大化することを目的として、各研究室等で分散管理されている研究設備・機器群を一つのマネジメントの下で運営する共用システムの導入を支援している。

生命理工学院

生命理工学院 ―複雑で多様な生命現象を解明―
2016年4月に発足した生命理工学院について紹介します。

生命理工学院

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お問い合わせ先

東京工業大学 生命理工学院
教授 副学院長(研究担当) 太田啓之

E-mail : hohta@bio.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5736 / Fax : 045-924-5527

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

株式会社島津製作所 広報室

E-mail : press@group.shimadzu.co.jp
Tel : 075-823-1110 / Fax : 075-823-1348

細野秀雄教授が英国王立協会外国人会員に選出

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科学技術研究創成院 フロンティア材料研究所の細野秀雄教授・元素戦略研究センター長が、5月5日付けで英国王立協会(The Royal Society)の外国人会員に選出されました。

細野秀雄教授
細野秀雄教授

英国王立協会は、17世紀近代科学の成立と時を同じくして1660年に設立され、アイザック・ニュートンも長らく会長を務めた世界的に最も歴史のある学術団体で、近代的学会の先駆けとみなされています。その会員(フェロー)に選ばれることは英国の科学者にとって最大の名誉の一つとされています。

外国人会員は毎年、全分野を対象に際立った業績を挙げた研究者10名以内が選出され、今年はノーベル賞受賞者2名を含め10名が選出されました。これまでの日本人会員には、故湯川秀樹博士や野依良治博士などがおり、細野教授は日本人として12人目となります。IGZO-TFTなどの酸化物半導体、鉄系高温超伝導体、電子化物など、新物質・材料の発見と創製が業績として評価されました。

入会式は7月14日にロンドンの英国王立協会で開催されます。新フェローと外国人会員の紹介は以下をご覧ください。

細野教授のコメント

15年くらい前に王立協会が主催したシンポジウムに招待された際、歴代のフェローには綺羅星のような科学者が沢山おられ、科学研究の長い伝統を実感しました。今回、外国人会員に選出されたとの連絡を頂き、大変に光栄に思います。推薦を頂いたフェローの方々と選考を頂いた委員会に感謝する次第です。

お問い合わせ先

広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

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