材料科学研究の新たな拠点としてすずかけ台キャンパスに建設した元素戦略研究センター(通称:元素キューブ)の開所式と記念シンポジウムが、6月3日に開催されました。
学内外関係者約80名が参加た開所式は、三島良直学長の挨拶で始まりました。その後、長野裕子 文科省研究振興局参事官、伊藤宗太郎 科学技術振興機構執行役、澤岡昭 大同大学学長、渡辺広行 旭硝子株式会社執行役員、瀬戸山亨 三菱化学株式会社執行役員、児島宏之 味の素株式会社バイオ・ファイン研究所プロセス開発研究所長による祝辞が述べられました。同センターにおけるこれまでの研究実績に対する賛辞とともに、材料科学研究のさらなる発展への熱い期待が寄せられました。続いて、細野秀雄センター長による基調講演が行われ、参加者は熱心に耳を傾けていました。
開所式終了後には、施設見学会が行われ、和やかな雰囲気のなか、参加者は新しい施設を見学しました。
引き続き、午後からは材料科学分野のトップランナーを招いての記念シンポジウムが行われました。
国際シンポジウム-豊富元素で作る電子材料の新たな地平線
三島良直学長の開会挨拶の後、6件の招待講演が行われました。招待講演者は、新材料エレクトライド※の発見者であるジェームズ・L・ダイをはじめ、いずれも本領域を国際的に先導する研究者であり、参加者約80名を集め活発な議論が行われました。
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- 電子が陰イオンとしてふるまう物質を意味する。電子化物とも呼ばれる。1997年にジェームズ・L・ダイにより発見された。これは低温で不活性雰囲気中でのみ存在できるものであったが、2003年に細野らがセメント成分でもあり資源豊富な12CaO・7Al2O3を用いて大気中で400℃まで安定なエレクトライドを開発した。その後、同物質で超伝導や高性能なアンモニア合成触媒としての機能が見つかり、高い電子供与性と安定性を生かしたユニークな材料展開が期待されている。
招待講演
ヤン・ヒー・リー(成均館大学校/韓国)「2Dワンダーランド」
クラース・ゴラン・グランクビスト(ウプサラ大学/スウェーデン)「環境との調和:自然のエネルギーフローを利用する新材料」
ジョン・ロバートソン(ケンブリッジ大学/英国)「単純な組成を持つ究極の材料」
ジェームズ・L・ダイ(ミシガン州立大学/アメリカ)「捕えられたアルカリ金属—豊富で多彩な材料」
キー・ジュー・チャン(KAIST/韓国)「グラフェンおよびモリブデンジカルコゲナイドの電子および輸送特性」
細野秀雄(東京工業大学/日本)「エレクトライドの材料科学と応用」