4月16日、大岡山キャンパス東工大蔵前会館くらまえホールにて、国際シンポジウム「International Symposium for Frontier of Bioinformatics(バイオインフォマティクス分野の最前線についての国際シンポジウム)」が開催されました。
バイオインフォマティクスとは、生物に関係する膨大なデータをコンピューターで解析する研究分野で、今や生命科学において欠かすことのできない重要な分野となっています。NGS※1や、その他のオミクスデータ※2は日々膨大な量で蓄積されており、その解析技術も日進月歩です。生命科学においてデータ生産の大規模化は今後も進んでいくことが予想され、バイオインフォマティクスが益々重要視されていくことは間違いありません。
- ※1
- NGS [Next Generation Sequence] : 21世紀に入って開発された革新的な遺伝子解析技術のこと。遺伝子(DNA)から遺伝子情報を読む技術、読み込んだデータを解析する新しい技術を指す言葉。
- ※2
- オミクス(オミックス)データ [Omics data] : 生物学のある分野で集められるデータのこと。遺伝子情報とそれを調べることから派生的に分かる様々な情報をまとめて指した言葉。
今回のシンポジウムは、EMBO(欧州分子生物学機構)、日本バイオインフォマティクス学会、ライフサイエンス統合データベースセンターの共催により開催されました。バイオインフォマティクス分野で活躍する、国内外8名の精鋭の研究者が、大規模データ解析の最前線について、英語で講演を行いました。
人間の腸マイクロバイオーム(生物環境を構成する微生物群のゲノムの総称)のための代謝経路データベースの構築
山田 拓司(東京工業大学)医療データとテキストマイニング(テキストデータを計算機で定量的に解析、有用な情報を取り出すための技術):リンク疾患、薬物、および副作用
ラース ユール ヤンセン(コペンハーゲン大学)メタゲノム(培養を行わずに環境中の微生物のゲノムDNAをすべて抽出・収集し、これらの塩基配列を網羅的に読む手法)の機能アノテーションのためのKEGGデータベース
五斗 進(京都大学)人間の腸マイクロバイオームのメタゲノム解析とその先
ピア ボーク(欧州分子生物学研究所)構造的側面からのゲノム機能の理解
須山 幹太(九州大学)ゲノミクスデータからの繊毛に関連する遺伝子の特定
マルタイン ハイネン(ラドバウド大学)てんかんにおける遺伝学および薬理遺伝学 - バイオインフォマティクスの視点
ローランド クラウス(ルクセンブルク大学)翻訳後修飾の機能とその進化
ヴェラ ヴァン ノールト(ルーヴァン・カトリック大学)タンパク質存在量の進化とそのシステムレベルの制約
クリスティアン フォン メーリング(チューリッヒ大学)
シンポジウムには本学の教職員・学生、関連分野の大学教員、および、国内外の大学の研究者、企業研究者など110名を超える参加がありました。最新の生命情報研究と将来について活気ある講義が行われ、会場からも多くの質問がありました。
また、翌日からは場所を移し、沖縄科学技術大学院大学にてバイオインフォマティクスの実践演習コースが1週間にわたり開催され、欧州分子生物学研究所から派遣された講師陣により、世界各国の学生や若手研究者に有意義な演習がおこなわれました。