要 点
- オキソボリル配位子(ホウ素-酸素多重結合)が3つのルテニウムに架橋した新規な化学結合を合成
- 不安定なオキソボリル種を複数の金属原子に配位することで安定化に成功
概 要
東京工業大学大学院理工学研究科鈴木寛治教授らは、ホウ素(B)-酸素(O)の多重結合を有するオキソボリル基(BO)が3つのルテニウム原子(遷移金属)に架橋した新規な化学結合様式を持つ「オキソボリル架橋遷移金属クラスター」の合成に成功した。金属錯体分野で、複数の金属をカルボニル基(CO)で架橋したクラスターとその反応および触媒作用は広く知られているが、カルボニル基の炭素(C)をホウ素(B)に置換したクラスターの合成は初めてあり、今後の新物質創製や触媒化学などへの展開が期待される。
新しいクラスターは、同教授らが1988年に開発したルテニウムをヒドリド(水素)で架橋した「ルテニウムヒドリドクラスター」を、ホウ素-水素結合を持つ「ボリレン錯体」に変換した後、水と反応させて合成した。これまで、ホウ素-酸素の多重結合は不安定であるため単離が難しく、2010年にブラウンシュヴァイク(Braunschweig)教授らにより報告された白金-BO単核錯体の1例しかなく、BO基によるクラスター構造(複核)の形成は知られていなかった。
この成果はドイツの化学誌「アンゲバンテ へミー(Angewandte Chemie International Edition)」に速報として掲載された。