11月9日、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院が主催、東工大ANNEXバークレー、カリフォルニア大学バークレー校日本研究センターの共催によるZoomコロキウムが行われました。このZoomウェビナーは、東工大ANNEXバークレーの開設を記念し、両大学間の共同研究を促進する2回目の試みとなりました。
コロキウムでは、リベラルアーツ研究教育院の安納真理子准教授が著作「Piercing the Structure of Tradition: Flute Performance, Continuity, and Freedom in the Music of Noh Drama」(「伝統の型を貫くもの―能の音楽における笛の演奏、継承と自由」2020年Cornell University Press出版)からの発表を行いました。
安納准教授は、能の歴史的背景を説明した後、なぜ能管(能の笛)には世界のどの笛にもない独自性があるのかを解説、さらに、夢幻能や小段(能の骨格部分)、能で使われる能管の旋律型やメロディーについても紹介するとともに、世阿弥(1363?–1443)によって書かれた能<敦盛>の一場面を分析しました。また、自らが師事した一噌流笛方の一噌幸弘さんを紹介し、新作能の背景について説明し、一噌さんの勤める新作能<鷹の泉>呪掛リ(At the Hawk's Well, the Mantra)の一場面を解説しました。この講演を通じて安納准教授が明らかにしたのは、他の笛とは異なる能管の特徴、能における能管の役割、古典能と新作能において能管がその役割をどのように果たしているのかということでした。
様々な分野にまたがる安納准教授の講演に続いて、ディスカッサント(討論者)であるカリフォルニア大学バークレー校日本研究センターのスーザン・マティソフ名誉教授がコメントしました。著名な日本文学者でもあるマティソフ名誉教授が、能の文学を通じて能の世界に入ったという経緯を紹介しました。また、自身が3つの異なる舞台を観たという能<蝉丸>について解説し、それらの舞台における視覚的な側面や装束のつけ方などに感動した経験を語りました。さらに、能を楽しむための「3つの習慣」を披露した後、英語能を演じた経験や能楽師との共演について質問しました。
最後に、米国、日本、カナダ、インドネシアを含む様々な国からの参加者70人との短い質疑応答をもってコロキウムは終了、両大学間の絆を深めた意義深いイベントとなりました。
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リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。