東京工業大学は、科学技術創成研究院先導原子力研究所を改組し、ゼロカーボンエネルギー研究所(略称「ゼロカーボン研」、ZC)を2021年6月1日(火)に設置します。
設置の趣旨
世界各国では、2050年までに脱炭素社会実現に向けて、二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルに取り組んでいます。
カーボンニュートラルを実現するためには、ゼロカーボンエネルギーである再生可能エネルギーの積極的かつ実効性ある活用や安全性に優れた原子力エネルギーの研究開発と利用が必須です。また、持続可能な社会とするために、炭素および物質を循環利用することも併せて必要です。
東京工業大学は、本学でこれまで培ってきたエネルギー研究に関わる資源とその成果を本研究所に集約し、ゼロカーボンエネルギーを用いたエネルギーの安定供給と経済性を有した炭素・物質循環社会の実現に取り組みます。
具体的には、ゼロカーボンエネルギーの製造、効率的な利用、貯蔵、物質変換、社会利用、循環利用などの要素技術と、これらを最適化したエネルギーネットワークの構築を包括的に研究します(図)。さらに、エネルギーを利用する産業、市民、地域などの社会のステークホルダーと連携して、問題解決のための技術ソリューションを提供するとともに、国際社会とも協調してグローバルな環境・エネルギー課題の解決に寄与します。
本研究所の構成
本研究所は、フューチャーエネルギー部門及び原子力工学部門の2つの部門から構成されます。また、本研究所のミッションの重要性に鑑み、外部有識者のアドバイザリー委員会を所長の下に設置して社会との連携を図ります。究極的なゼロカーボン産業プロセスとして、排出CO2を還元、資源化し循環再利用する本学独自の能動的炭素循環エネルギーシステムの社会実装を産学官共同で進めます。
フューチャーエネルギー部門
ゼロカーボンエネルギーに基づく炭素・物質循環エネルギーシステムの研究を推進します。再生可能エネルギー導入による発電非定常性を考慮したフューチャーエネルギーネットワーク[用語1]、電力および熱エネルギーの貯蔵、エネルギーキャリアシステム[用語2]等の研究開発を行い、先進カーボンニュートラル技術の社会実装を進めます。
原子力工学部門
ゼロカーボンエネルギー社会の一員として安全性・機動性を追究した小型炉、核融合炉などの先進原子力システム研究及びその波及効果としての癌治療など生命・医療放射線利用研究に取り組みます。
なお、これまで先導原子力研究所で行ってきた福島復興・再生研究ユニット及び東京電力と連携したTEPCO廃炉フロンティア技術創成協働研究拠点の活動を引き続き推進し、福島第一原発事故により甚大な被害を受けた福島の復興にも貢献します。
研究所の概要
- 名称国立大学法人東京工業大学科学技術創成研究院ゼロカーボンエネルギー研究所
- 場所大岡山キャンパス(東京都目黒区)
- 設置日2021年6月1日
- 研究所長科学技術創成研究院 教授 竹下健二
用語説明
[用語1] フューチャーエネルギーネットワーク : ゼロカーボンエネルギーを効率的に運ぶエネルギー供給網
[用語2] エネルギーキャリアシステム : ゼロカーボンエネルギーから製造される水素、一酸化炭素、メタン、アンモニアなどの二次エネルギー(エネルギーキャリア)の製造から輸送、利用に至る体系
- プレスリリース 二酸化炭素排出実質ゼロに向けて「ゼロカーボンエネルギー研究所」を設置 —再生可能エネルギー、原子力エネルギーを活用したエネルギーシステムの構築へ—
- 科学技術創成研究院 先導原子力研究所
- 科学技術創成研究院(IIR)
- エネルギー産業の技術力向上へ「TEPCO廃炉フロンティア技術創成協働研究拠点」を設置|東工大ニュース