概要
東京工業大学大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻の末包哲也教授のグループはマイクロフォーカスX線CT(用語1)装置を利用して多孔質内部の流動現象を可視化する手法を開発した。
研究の背景
多孔質内部における混相流(用語2)は二酸化炭素地下貯留技術、原油回収、汚染土壌修復などさまざまな分野でみられる現象である。しかしながら、土壌や岩石などの多孔質媒体は光学的に不透明であるために内部の可視化が容易ではなく、これまでの現象理解は多孔質を体積的に平均化した現象論的な範囲に限られていた。
研究成果
近年、マイクロフォーカスX線CT装置の急激な発達により、多孔質内部の流動現象を空隙スケールで可視化することが可能になって来ている。末包教授のグループでは、X線CT装置内部で流動現象を再現できる実験装置を開発するとともに、X線CT画像において流動場を可視化するトレーサー手法を開発した。
これを用いることにより、油で満たされた多孔質に水が注入される際に、空隙のスロート部分に濡れ性により水が侵入し、油を連続相から切断することを示した。また、いったん油が切断されると、その周囲の水は急激によどみ、流動性が低下することを明らかにした。これらの情報は貯留層からの原油回収率向上のための指針を与えることができる。
今後の展開
開発した多孔質内部の流動現象の可視化手法は、多孔質媒体を扱うエネルギー環境分野の発展に貢献すると期待することができる。
オイル(赤)で満たされた多孔質(半透明)の水による置換。画像は10分おき。最初連続しているオイルが水の侵入により切断され、多孔質内部にトラップされる。
トラップされたオイル(赤)周りの水(透明)の流動場の可視化。画像は10分おき。画像bの後に着色剤を投入。流動が顕著なところほど色の変化が速い。
用語説明
(用語1) マイクロフォーカスX線CT:
物質内部の3次元断層画像を非破壊で取得する装置。
(用語2) 混相流:
気相と液相、液相同士など、複数の相が混在し、相互に影響を及ぼしあう流体。今回は油と水の非混和性(混じらない)混相流を可視化した。
論文情報
著者: |
Arief Setiawan, Tetsuya Suekane, Yoshihiro Deguchi, Koji Kusano |
論文タイトル: |
Three-Dimensional Imaging of Pore-Scale Water Flooding Phenomena in Water-Wet and Oil-Wet Porous Media |
雑誌名: |
Journal of Flow Control, Measurement & Visualization, 2014, 2, 25-31 |
DOI: |
お問い合わせ先
大学院総合理工学研究科 創造エネルギー専攻
教授 末包 哲也
TEL: 045-924-5494 FAX: 045-924-5575
Email: tsuekane@es.titech.ac.jp