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メダカ飛行士、再び宇宙へ

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11月7日、ロシアの宇宙船ソユーズで、宇宙飛行士の若田光一さんらが国際宇宙ステーションでの長期滞在ミッションへ出発しました。約6か月間宇宙ステーションに滞在する間、若田さん達は様々な科学実験に取り組みます。その一つが、本学 大学院生命理工学研究科 工藤明教授らのチームによるメダカを用いた骨代謝実験、 "Medaka Osteoclast II" です。

宇宙ステーションのような非常に重力の小さな環境で長期間生活すると、宇宙飛行士の骨量は減少してしまい、将来長期間の宇宙探査を行う際の大きな問題となります。これは骨をつくる「骨芽細胞」のはたらきと、骨を吸収する「破骨細胞」のはたらきとがバランスしなくなるためだと考えられています。工藤教授らはこのメカニズムの解明に挑んでおり、本実験は2012年に国際宇宙ステーションで行ったメダカの骨代謝実験 "Medaka Osteoclast" に続くものです。
前回の実験では、蛍光タンパク質で骨芽細胞と破骨細胞を識別できるようにした「トランスジェニックメダカ」を用い、微小重力下で長期間飼育したメダカのサンプルを得ました。今回の実験では、1週間にわたって、生きたトランスジェニックメダカをリアルタイムで観察し、骨の細胞のはたらきに迫る計画です。これが明らかになれば、宇宙飛行士の活動期間の延長だけではなく、骨粗しょう症の原因究明にもつながる可能性があります。

メダカ飛行士たちは、若田宇宙飛行士らに一足遅れて来年の2月に宇宙へ向かう予定です。実験の詳細は関連リンクをご覧ください。

骨の細胞が蛍光で光って見えるメダカ。赤は骨を作る細胞、緑は骨を吸収する細胞


  • 宇宙ステーションでのメダカ飼育の様子
    提供:宇宙航空研究開発機構 (JAXA)


  • 実験運用管制室で実施の様子を見守る工藤明教授
    提供:宇宙航空研究開発機構 (JAXA)


タンパク質中の還元型チオール基の定量を可能にするDNAマレイミドの開発

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要点

  • DNAを利用した新規タンパク質チオール基定量用マレイミド試薬の合成
  • 電気泳動において、タンパク質の種類や泳動条件に依らない一様な移動度変化を与え、フリーのチオール基の逆算が可能になる。

概要

我々は、タンパク質中のチオール基の酸化還元状態を検出するために、DNAにマレイミド基を導入した新規マレイミド試薬(DNAマレイミド)を合成した。これは、従来用いられてきた複数のマレイミド試薬の欠点を克服するもので、幅広い種類のタンパク質に適用可能である。DNAマレイミドを用いることにより、酸化還元状態の検出のみならず、還元状態であるチオール基の数を直接決定することが可能になった。

研究の背景と経緯

タンパク質は、細胞内の状況に応じて様々な翻訳後修飾を受けている。翻訳後修飾の代表的なものの1つが、システインのチオール基の酸化である。チオール基の酸化でもっとも一般的なのはジスルフィド結合形成であるが、その他にもスルフェン化、グルタチオン化、ニトロソ化などが知られている。チオール基の酸化還元(酸化還元制御)によってタンパク質の機能が制御されていることや、チオールによる制御が生理的に重要な意味を持つことは広く知られている。チオール基の翻訳後修飾によるタンパク質の機能制御を理解するためには、個々のチオール基の酸化還元状態を検出することが必須である。

この検出には、これまで4-acetamido-4- maleimidyl-stilbene-2,2-disulfonate(AMS)やPEGマレイミドというチオール基修飾試薬が一般に用いられてきた。これらのチオール基のみに特異的に結合するマレイミド試薬を用いることで、対象タンパク質のシステインの酸化還元状態、すなわち、チオール基の数に対応した分子量の増加をもたらし、この分子量の増加は電気泳動法上の移動度変化として容易に検出できる。しかし、AMSは分子量が500程度と小さいため、大きなタンパク質(50,000~)では、移動度変化が有意にあらわれない。一方、PEGマレイミドの分子量は5,000程度ではあるが、電気泳動法で検出される移動度変化はチオール基の数と正確には一致しない。さらに、PEGマレイミドは重合反応によって合成された化合物であり、分子量分布が広いため、電気泳動法によって現れるタンパク質のバンドがブロードになる。このため、正確なチオール基数の定量が出来ない。このような点から、従来のマレイミド試薬は、チオール基が酸化型なのか還元型なのかを区別することはできても、酸化還元に関わるチオール基の数を決定することは困難だった。

研究成果

今回、我々が新規に開発したDNAマレイミドは、これらの欠点を克服し、タンパク質中のチオール基の数を直接定量することを可能にした。DNAマレイミドは、24塩基の一本鎖DNAの5'末端にリンカーを介してマレイミド基が導入された構造をもっている。DNAマレイミドは、その分子量が大きいため、AMSに比べて極めて大きな移動度変化をもたらす(Fig.1)。また、PEGマレイミドは、電気泳動条件により、得られる移動度変化が異なってしまうが、DNAマレイミドの場合は、電気泳動条件に依らない一様な移動度変化を与える(Fig.2)。DNAマレイミドの付加によって起こる移動度の変化は、タンパク質の種類や電気泳動条件に依存せず一律に9 kDa相当分であった。そのため、電気泳動上で観察される分子量のみから、還元型チオール基の数を決定することが可能になった。

Fig.1 (左) AMS と DNA マレイミドの比較 / Fig.2 (右) PEG マレイミドの電気泳動条件依存性

今後の展開

本試薬は、DNAの長さ次第で様々な大きさのタンパク質にも適用可能であり、酸化還元制御の分子レベルでの解明に用いられることが期待される。また、タンパク質に結合した後でもDNAとしての機能を損なっていないため、ハイブリダイゼーションなどを利用したさらなるアプリケーションへの応用も可能である。

論文情報
  • 著者:原怜、野島達也、清尾康志、吉田賢右、久堀徹
  • 論文タイトル:DNA-maleimide: An improved maleimide compound for electrophoresis-based titration of reactive thiols in a specific protein
  • 掲載雑誌:Biochimica et Biophysica Acta 1830, 3077 (2013)
  • Digital Object Identifier (DOI):10.1016/j.bbagen.2013.01.012outer
  • 所属:資源化学研究所

波多野教授の研究提案が科学技術振興機構の「戦略的創造研究推進事業(CREST)」に採択

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大学院理工学研究科電子物理工学専攻の波多野睦子教授の提案課題「炭素系ナノエレクトロニクスに基づく革新的生体磁気計測システムの創出 」が(独)科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)に採択されました。
CRESTは、科学技術政策や社会的・経済的ニーズを踏まえ、国が定めた社会的インパクトの大きい戦略目標の達成に向けた、独創的・挑戦的かつ国際的に高水準の発展が見込まれる基礎研究を推進するものです。

(1) 研究の概要

  • 研究領域
    素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成
  • 研究課題名
    炭素系ナノエレクトロニクスに基づく革新的生体磁気計測システムの創出
  • 研究期間
    平成25年10月~平成31年3月

今回採択された研究提案は、ダイヤモンド半導体での特異な物性を用いた2次元高密度磁気センサの要素技術を開発し、生体及び細胞計測への適用可能性検証を目的とするものです。 ダイヤモンド中の窒素-空孔複合体(NVセンタ)は、固体で唯一、常温大気中で単一スピンを操作・検出することが可能であり、高感度で高空間分解能な磁気センサの実現が期待できます。 炭素系ナノ物性理論、新機能材料、薄膜プロセス、ナノデバイス、磁気計測プロトシステム、生体/細胞観測アプリケーションの各レイヤに渡る融合的な研究開発を行います。

(2) 社会的・経済的・科学的課題と本研究による解決策

本研究で開発する要素技術を発展させ、常温動作の高感度・高空間分解能磁気センサが実現すれば、以下三分野の重要課題に貢献することができます。

1. ライフ
生命現象の解明、病気や創薬につながる情報取得、
医療(脳/心磁計、MRI、ハイパーサーミアなどの癌治療)
2. ICT
量子コンピューティング・通信、ストレージ・LSI検査
3. グリーン
高温・高放射環境下計測、環境計測、資源探索
常温化による利便性・経済性に加え、並列チャネル数拡大の新機能が計測の高性能化やユーザー親和性向上に直結します。

火星の水の起源:火星隕石の水素同位体分析からの制約

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火星は約30億年より古い地質体を中心に多くの流水地形が存在し、かつては表層に液体の水が存在しうるほど温暖で湿潤な惑星であったと考えられている。
しかしながら、生命の存在条件に支配的な影響を与える火星の海の水の起源や進化に関しては統一した見解が得られていないというのが現状であった。

そこで、臼井寛裕(本学 地球惑星科学専攻)は、火星の海の水の起源の解明を目的とし、NASAジョンソン宇宙センターおよび米カーネギー研究所の共同研究者らと共に、火星誕生時に火星内部に取り込まれた水(初生的)の高精度水素同位体分析を行った。

分析の結果、火星の初生的水の水素同位体は、地球のそれと同様の値を示し(図1)、地球と火星の水がお互いに似通った太陽系小天体を起源とすることが判明した。
また、火星や地球の水の起源となった太陽系小天体は、従来研究により示唆されてきた太陽系外縁(例えばオールト雲)を起源とする彗星ではなく、火星-木星軌道間に位置する小惑星(炭素質コンドライト母天体)であることも同時に明らかとなった。

図1:地球型惑星の“水”の水素同位体組成図。重水素/水素比(D/H)を地球の標準海水(SMOW)からの千分率(δD)で示してある。火星の大気は5000‰を超える高いD/H比を示すのに対し、マントルに含まれている初生水()は地球と同様の低いD/H比(275‰)を有することが本研究により明らかとなった。地球型惑星の水の起源と考えられている、彗星(~1000‰)および小惑星(炭素質コンドライト母天体、-200から300‰)の水素同位体も合わせてプロットしてある。

論文情報
  • 著者:Usui, T., Alexander, C.M.O'D., Wang J., Simon, J.I. and Jones, J.H.
  • 論文タイトル:Origin of water and mantle-crust interactions on Mars inferred from hydrogen isotopes and volatile element abundances of olivine-hosted melt inclusions of primitive shergottites.
  • 掲載雑誌:Earth and Planetary Science Letters 357-358, 119-129 (2012).
  • Digital Object Identifier (DOI):10.1016/j.epsl.2012.09.008outer
  • 所属:地球惑星科学専攻

東工大スパコンTSUBAMEシリーズが省エネ性能スパコンランキング2冠を獲得!

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  • 次世代TSUBAME 3.0のテストシステム、オイルによる冷却システムを備えた「TSUBAME-KFC(用語1)」がGreen500(省エネ)において圧倒的な性能で日本のスパコンとして初めて世界1位を達成。同時にGreenGraph500(省エネのビッグデータ処理)においても1位を獲得し、省エネに関するランキングで2冠を獲得。
  • 東工大のスパコン「TSUBAME 2.5」がGreen 500(省エネ)世界6位。TOP500(処理速度)世界11位、国内2位に。高い総合力を示す。

東京工業大学学術国際情報センター (GSIC) が、日本電気株式会社(NEC)、米国NVIDIA社など内外各社の協力で開発し、2013年10月に稼動を開始したスーパーコンピュータ「TSUBAME-KFC」が世界最高の省電力スパコンとして認定されました。The Green 500 List (用語2)の2013年11月版において1ワットあたり4,503.17メガフロップスという2位以下を大きく引き離す値を記録し、世界一位になったことが、米国Denver市で開かれたスパコンの国際会議 "SC13--Supercomputing 2013"で米国時間11月20日に発表されました。The Green 500 Listで日本のスパコンが一位になったのは初めてであり、低炭素社会の実現に向けた日米合同の技術リーダーシップを示したといえます。

同時にビッグデータ処理の省エネルギー性を競うために今年から始まったThe Green Graph 500 List (用語3)のビッグデータ部門においても世界1位となりました。これは前回(2013年5月)のThe Green Graph 500Listにおいて1位となったビッグデータ処理・グラフ処理で高い能力を持つIBM のスーパーコンピュータBlue Gene/Qを押さえての受賞となり、The Green 500Listと合わせて省エネに関するランキングで2冠となりました。

また、今年9月にアップグレードされた同センターのスパコン「TSUBAME2.5」も1ワットあたり3,068.71メガフロップスを記録し、The Green500 Listにおいて世界6位にランキングされました。「TSUBAME2.5」は、The TOP500 Listにおいても世界11位に返り咲き、日本国内ではスーパーコンピュータ「京」に次ぐ第2位となりました。

TSUBAME-KFC
TSUBAME-KFC

TSUBAME2.5
TSUBAME2.5

TSUBAME-KFCはTSUBAME2.0の後継となるTSUBAME3.0及びそれ以降のためのテストベッドシステムとして、同センターが推進する文部科学省概算要求「スパコン・クラウド情報基盤におけるウルトラグリーン化技術の研究推進」プロジェクトによって設計・開発されたものです。同プロジェクトではスーパーコンピュータの消費電力とそれに係る冷却電力の双方の削減を目標としており、TSUBAME-KFCでは計算ノードを循環する油性冷却溶媒液の中に計算機システムを浸して冷却する油浸冷却技術及び冷却塔による大気冷却の組み合わせによって非常に少ない消費電力で冷却できるように設計しています。

TSUBAME-KFCシステムは40台の計算ノードとそれらを接続するFDR InfiniBandネットワークで構成されています。各計算ノードは1UサイズのサーバにIntel Xeon E5-2620 v2プロセッサ(Ivy Bridge EP)を2基、NVIDIA Tesla K20X GPUを4基搭載しており非常に高密度になっています。40ノードを1つの油浸ラックに収容されるコンパクトな設計になっています。システム全体の理論ピーク演算性能は217テラフロップス(倍精度)になります。

また「TSUBAME2.5」は、2010年11月版のThe TOP500 Listにおいて世界四位、The Green 500 Listにおいて世界二位、またGreenest Production Supercomputer in the World賞を受賞したスパコン「TSUBAME2.0」を今年9月にGPU(用語4)をNVIDIA Tesla M2050から最新のNVIDIA Tesla K20Xへアップグレードしたものです。これにより演算性能が倍精度で5.7ペタフロップス(用語5)、単精度で17ペタフロップスへと大幅に増強されました。また電力効率においても3倍以上向上しており今回のThe Green 500 Listにて再び世界トップクラスの電力効率であることが認定されました。

今回の結果は、東工大学術国際情報センターにおいて省電力化を目指して行われてきた種々の研究成果が結実したものと言えます。ウルトラグリーン化プロジェクトだけでなく、同センターにおける科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(JST-CREST)における「ULPHPC(超低消費電力高性能計算)」などの基礎研究プロジェクト、また米国NVIDIA社との数年来の共同研究プロジェクトにおいて、最新技術であるGPUのスパコンにおける大幅活用やHPCシステムの省電力化の研究などが続けられてきました。それらの成果をもとに、NECと米国NVIDIA社を中心に、米国Green Revolution Cooling社、米国Supermicro社、米国インテル社、Mellanox社などが加わった企業と共同開発が行なわれました。

シンポジウム 「スーパーコンピュータTSUBAMEの進化と未来」
 ―TSUBAMEがどう進化し、どのように使われるのかー

上記の成果を含めて、12/10(火)13時より、「スーパーコンピュータTSUBAMEの進化と未来」 ―TSUBAMEがどう進化し、どのように使われるのかーと題した記念シンポジウムを開催します。TSUBAME2.5のアップグレードと3.0に向けた研究開発から、超大規模アプリケーションの応用、また、産業界での利用に関してまで幅広い講演が行われる予定です。

用語1 TSUBAME-KFC

TSUBAME Kepler Fluid Coolingが語源。TSUBAME2.5と同様にNVIDIA社のKepler世代GPUを搭載していますが、TSUBAME-KFCでは計算ノードを液体に浸けて冷却している特長から名づけられています。

用語2 The Green 500 List

スパコンのベンチマーク速度性能を半年ごとに世界一位から500位までランキングするThe TOP 500 Listに対して、近年のグリーン化の潮流を受けTOP500のスパコンの電力性能(速度性能値 / 消費電力)を半年ごとにランキングしているリスト。
http://www.green500.orgouter

用語3 The Green Graph 500 List

The Green Graph 500 List : The Green 500 Listのように、ビッグデータ解析性能を競うGraph 500のスパコンの電力性能(解析性能値 / 消費電力)を半年ごとにランキングしている今年の5月から始められたリスト。
http://green.graph500.org/outer

用語4 GPU (Graphics Processing Unit)

本来はコンピュータグラフィックス専門のプロセッサだったが、グラフィックス処理が複雑化するにつれ性能および汎用性を増し、現在では実質的にはHPC用の汎用ベクトル演算プロセッサに進化している

用語5 ペタフロップス(Peta flops)、テラフロップス(Tera flops)

フロップスは1秒間で何回浮動小数点の演算ができるかという性能指標。ギガ(10の9乗)、テラ(10の12乗)、ペタ(10の15乗)など。

≪TSUBAMEに関する問い合わせ先≫

■ 東京工業大学学術国際情報センター
TEL: 03-5734-2087
FAX: 03-5734-3198
E-mail: kib.som@jim.titech.ac.jp
http://www.gsic.titech.ac.jpouter

■ 日本電気株式会社(NEC)
コーポレートコミュニケーション部 江澤
TEL:03-3798-6511
E-mail:j-ezawa@az.jp.nec.com

■ エヌビディア
マーケティング本部 広報/マーケティング・コミュニケーションズ
中村 かおり
Tel: 03-6743-8712
Fax: 03-6743-8799
E-mail: knakamura@nvidia.com

小田俊理教授の研究拠点が「革新的イノベーション創出プログラム」のトライアルに採択

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小田俊理 量子ナノエレクトロニクス研究センター教授を研究リーダーとする研究拠点が、文部科学省・JST「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」のトライアルに採択されました。

COI STREAMは、下の2点を目的として公募されたものです。

  • 現在潜在している将来社会のニーズから導き出されるあるべき社会の姿、暮らしのあり方を設定し、このビジョンを基に10年後を見通した革新的な研究開発課題を特定。
  • その上で、既存分野や組織の壁を取り払い、基礎研究段階から実用化を目指した産学連携による研究開発を集中的に支援。

小田教授を研究リーダーとする研究拠点は、将来の拠点候補として、COI STREAMのビジョン達成に向け、コンセプトや要素技術の検証を行ってまいります。

  • 拠点名
    「オンデマンド・ライフ&ワークを全世代が享受できるSmart社会を支える世界最先端ICT創出COI拠点」
  • プロジェクトリーダー
    秋葉重幸(KDDI研究所 主席特別研究員)
  • 研究リーダー
    小田俊理(量子ナノエレクトロニクス研究センター 教授)
  • 研究期間
    平成25年11月~平成27年3月(予定)

"近所"で爆発した宇宙のモンスター -観測史上最大級のガンマ線バーストを日本のグループが宇宙と地上から観測-

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要点

  • 2013年4月27日に過去23年間で最も強いガンマ線バーストを観測
  • ガンマ線バーストとしては"近所"の38億光年の距離で起きたにもかかわらず、その性質は遠方、宇宙初期の「モンスター」と変わらない
  • 従来からの標準的なガンマ線放射モデルに疑問を投げかける

概要

東京工業大学など日本の研究グループを含む国際共同観測チームは、観測史上最大級の「モンスター」ガンマ線バースト「GRB 130427A」をとらえることに成功した。詳しいデータ解析の結果、今回のバーストは宇宙年齢100億年という現在とほぼ同じ宇宙環境で発生したにもかかわらず、宇宙初期に発生する普通のバーストと同じ「モンスター」としての性質をもっていることが分かった。今までで最も近傍で発生したバーストの場合は爆発エネルギーが著しく小さく、別種の現象の可能性が高かったが、地球に近いからこそ得られた「普通のモンスター」の高品質のデータによって、従来のガンマ線放射機構の理論は再考を迫られることになった。
ガンマ線バーストは、太陽の数十倍の質量をもつ恒星が一生の最後に起こす大爆発で、平均的には宇宙年齢30億年の宇宙初期、すなわち100億光年を超える遠方で発生する。今年4月27日に発生したGRB 130427A はもともと大きな爆発エネルギーをもつガンマ線バーストだったが、38億光年という"近所"で発生したためにとびきり明るく観測された。
この研究成果は11月22日発行の米科学誌「サイエンス」に掲載される。

原論文情報

「GRB 130427A: a Nearby Ordinary Monster」 Maselli et al. Science Vol. 342, #6161

日本人の共著者

東工大
河合誠之(理研客員主幹研究員を併任)、斎藤嘉彦、谷津陽一、吉井健敏
理研
芹野素子
国立天文台
黒田大介、花山秀和
青山学院大学
坂本貴紀

関連リンク

お問い合わせ先

大学院理工学研究科基礎物理学専攻 教授 河合誠之
Email nkawai@phys.titech.ac.jp
電話 03-5734-2390
FAX 03-5734-2390

理化学研究所グローバル研究クラスタ
宇宙観測実験連携研究グループ MAXIチーム 研究員 芹野 素子

電話 048-467-1111(内線3284)
FAX 048-467-9446

GRB 130427Aの発生した天域を星座図上に示す

平成25年度「東工大挑戦的研究賞」授賞式挙行

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平成25年度「東工大挑戦的研究賞」授賞式が10月17日(木)に行われました。

授賞式では、三島学長から受賞者に賞状の授与及び今後さらなる活躍を期待する旨の激励の言葉があり、ついで受賞者代表2名から、採択された研究課題についてのプレゼンテーションが行われました。

この賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開又は解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するもので、第12回目の今回は14名が選考されました。なお、受賞者には支援研究費等が贈呈されます。

平成25年度東工大挑戦的研究賞 受賞者一覧

受賞者
所属
職名
研究課題名 (★は学長特別賞)
大学院理工学研究科
(理学系)数学専攻
助教
一般モノドロミー保存変形のハミルトン力学的描像の確立
大学院理工学研究科
(理学系)地球惑星科学専攻
助教
高精度鉛同位体分析による火星の地殻・マントル化学進化の解明
大学院理工学研究科
(理学系)広域理学講座
准教授
重力波検出器KAGRAにおける標準量子限界を超えた感度の実現
大学院理工学研究科
(工学系)化学工学専攻
准教授
水と二酸化炭素の相乗的な膨潤効果を利用した眼科DDSにおける薬物徐放性の発現
大学院理工学研究科
(工学系)土木工学専攻
助教
構造物の長期性能変化予測と社会動態予測に基づく、インフラストラクチャーの維持管理・更新計画の策定支援プラットフォームの開発
大学院生命理工学研究科
生体システム専攻
准教授
心筋細胞分化の鍵を握る新規コネキシン分子の作用機序の解明
大学院総合理工学研究科
知能システム科学専攻
講師
★マイクロ非平衡場の制御による動的な細胞サイズ分子ロボットの創製
大学院情報理工学研究科
数理・計算科学専攻
准教授
対数行列式半正定値計画問題に対する主双対アプローチ
イノベーションマネジメント研究科
技術経営専攻
准教授
★探索的計量書誌分析による研究開発マネジメント支援手法の開発と応用
精密工学研究所
高機能システム部門
准教授
外力検出可能な腹腔鏡手術用3指ハンドの開発
精密工学研究所
極微デバイス部門
助教
ポリマー光ファイバ中のブリルアン散乱の特性解明とセンシング応用
応用セラミックス研究所
材料融合システム部門
助教
環境負荷低減した大規模木造建築を実現する平面異種混構造の耐震設計法の開発
原子炉工学研究所
物質工学部門
准教授
拡張ナノ流体制御による高選択的ストロンチウム分離分析に関する研究
像情報工学研究所
准教授
液晶性を活用した高品質な多結晶有機トランジスタの開発とその集積化

(所属順・敬称略)


宇宙核時計ニオブ92の起源が超新星爆発ニュートリノであることを理論的に解明

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要点

  • ニオブ92が超新星ニュートリノで生成されたとする新仮説を提唱
  • 超新星モデルによる理論計算で太陽系のニオブ92の量を再現
  • 超新星爆発から太陽系誕生までの時間を100万~3000万年と評価

概要

日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門の早川岳人研究主幹、国立天文台・理論研究部の梶野敏貴准教授、東京工業大学の千葉敏教授らの共同研究グループは、太陽系初期にのみ存在した放射性同位体ニオブ92(半減期は約3千5百万年)が、超新星爆発のニュートリノで生成されたことを理論的に解明しました。

現在の太陽系にニオブ92は存在しません。しかし、隕石研究によって、約46億年前に太陽系が誕生した時点では、ニオブ92が存在していたことが明らかになっていました。ところが、ニオブ92が宇宙のどこでどのように生成されたかは未解明の問題でした。これまで、いくつかの仮説が提唱されましたが、いずれもニオブ92の量を定量的に説明できませんでした。本研究グループは、太陽系誕生の直前に、太陽系近傍で超新星爆発が発生し、放出されたニュートリノによって超新星爆発の外層でニオブ92が生成され、爆発によって吹き飛ばされて太陽系に降り注いだとの仮説を立てました。超新星爆発モデルにニュートリノ核反応率を組み込んで計算したところ、ニオブ92の量を定量的に説明できることが判りました。

本研究によって、長年に亘って謎であったニオブ92の起源が明らかになりました。さらに、ニオブ92を生成した超新星爆発から太陽系誕生までの時間を100万~3000万年と評価しました。このように年代を計測できる放射性同位体を宇宙核時計と呼びます。今後、隕石研究が進み、より正確な量が判れば、より正確に時間を評価できます。なお、本成果は11月22日発表のThe Astrophysical Journal Letterに掲載されました。

お問い合わせ先

(研究内容)
原子炉工学研究所 教授 千葉 敏

TEL: 03-5734-3066

(報道対応)
東工大広報センター(プレス担当)
TEL: 03-5734-2975

グリーンスパコン世界一になったTSUBAME-KFC及びTSUBAME2.5について記者発表

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本学 学術国際情報センター(以下、GSIC)は、11月25日、表記の件について記者発表を行いました。

記者発表では、学術国際情報センター松岡聡教授、遠藤敏夫准教授、額田彰特任准教授から説明があり、
報道各社から活発な質疑応答の後、TSUBAME-KFCの見学会が行われました。


Green 500(省エネ)Green Graph500(省エネのビックデータ処理)において
日本のスパコンとして初めて世界1位省エネに関するランキング2冠となったTSUBAME-KFC


左から学術国際情報センター佐伯教授、額田特任准教授、遠藤准教授、松岡教授、大谷理事・副学長

熱帯熱マラリア原虫に対する5-アミノレブリン酸と鉄の相乗的な増殖阻害メカニズムを解明

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国立大学法人東京大学(所在地:東京都文京区、総長:濱田純一)と国立大学法人東京工業大学(所在地:東京都目黒区、学長:三島良直)、MRC National Institute for Medical Research(所在地 :英国ロンドン、所長:Jim Smith)、SBIファーマ株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役執行役員CEO:北尾吉孝)は、5-アミノレブリン酸(ALA)と2価の鉄が熱帯熱マラリア原虫の生育を相乗的に阻害する作用メカニズムについて12月2日発刊のThe Journal of Biochemistryに発表しました。

発表のポイント

  • ALAと2価の鉄との組み合わせによって、相乗的にマラリア原虫の生育を阻害するメカニズムの一端について解明しました。
  • 本成果は、多くの人たちを苦しめているマラリアを治療するための新規の医薬品の開発につながるものと期待されます。

発表概要

マラリアは、3大感染症の一つであり、年間の罹患者が数億人、死亡者が100万人を超えるといわれる重大な感染症です。ALAを投与するとマラリア原虫に感染した細胞にポルフィリンが蓄積され、そのポルフィリンを手がかりに光照射でマラリア原虫を殺せることはすでに知られていますが、血液に光照射を行うことは現実的ではなく実用化の障壁となっていたため、光照射を伴わないALA薬剤の開発が望まれていました。

東京大学大学院医学系研究科の北 潔教授、東京工業大学大学院生命理工学研究科の小倉 俊一郎准教授とSBIファーマ株式会社は、ALAと2価の鉄の併用により、光照射する ことなく熱帯熱マラリア原虫の生育を阻害できることを2011年に学会で発表しました。その後MRC National Institute for Medical Researchも研究に加わり、マラリア原虫の 各オルガネラにおけるポルフィリン類の分析結果から、今回ALAと2価の鉄の併用が特定のオルガネラへのポルフィリンの蓄積と活性酸素の発生を引き起こし、それらがマラリア原虫の成長阻害を誘導するという作用メカニズムの一端を明らかにしました。

本成果は、多くの人たちを苦しめているマラリアを治療するための新規の医薬品の開発につながるものと期待されます。ALA、2価鉄ともにすでに安全性が確保され、食品や医薬品として利用されている化合物であり、早期に臨床開発に移れる可能性があり、既存の抗マラリア薬と比べて副作用が小さく予防的にも服用可能な画期的な抗マラリア薬となることが期待されます。

40ボルトの低電圧で動く次世代超小型冷却装置を開発

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概要

異種機能集積研究センターの大場隆之特任教授は東京大学、大日本印刷、PEZY Computing(東京都千代田区、齊藤元章社長)、WOWアライアンスと共同で、40Vの低電圧で1平方cm当たり140W冷却することができるチップ状の冷却装置(Closed-Channel Cooling System = C3S)の開発に成功した。

同装置は電気浸透流を利用して液体を循環し、冷却する仕組みであり、駆動ポンプを用いないことから、機械的故障がなく、わずか100マイクロメートル(μm)の厚さに収まる。マイクロプロセッサー(MPU)など発熱が大きい半導体の冷却や、小型電子機器への応用が期待される。

この成果は米国ワシントンで12月9~11日に開かれる国際電子デバイス会議「IEDM2013」で報告する。

論文

発表雑誌
IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM) 2013
題名
High Performance Closed-Channel Cooling System Using Multi-channel Electro-osmotic Flow pumps for 3D-ICs

添付資料より

岡田 健一 准教授と河野 行雄 准教授が第10回日本学術振興会賞受賞

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大学院理工学研究科電子物理工学専攻の岡田 健一 准教授と量子ナノエレクトロニクス研究センターの河野 行雄 准教授が、第10回日本学術振興会賞 を受賞しました。

同賞は、独立行政法人日本学術振興会が、優れた研究を進めている若手研究者を見い出し、早い段階から顕彰してその研究意欲を高め、独創的、先駆的な研究を支援することにより、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させることを目的に平成16年度に創設されたものです。

受賞対象者は、人文・社会科学及び自然科学の全分野において、45歳未満で博士又は博士と同等以上の学術研究能力を有する者のうち、論文等の研究業績により学術上特に優れた成果をあげている研究者となっています。 受賞者には賞状、賞牌及び副賞として研究奨励金110万円が贈呈されます。記念受賞式は平成26年2月10日(月)に日本学士院にて開催される予定です。

岡田 健一 准教授
受賞対象となった研究テーマ及び内容:「リコンフィギュラブルなアナログ集積回路技術の研究」PDF

今回の受賞をうけ、岡田准教授は次のようにコメントしています。

「20世紀最大の発明と言われる半導体集積回路は、高度情報化社会を支える基盤技術として、今やなくてはならないものとなっています。本研究は、このような集積回路において、情報を0と1のみのディジタル値として捉えるのではなく、実世界同様にアナログ値として扱うハイブリッドな集積回路に関するものです。アナログな人の温もりを伝え、人々の安心・安全を支えるこれからの社会基盤技術を目指し、実用化への研究に邁進しております。また、本賞で評価して頂いた成果は独力では成し得なかったものです。これまで御指導頂いた恩師、苦楽を共にした共同研究者の皆様や学生の皆様、最大限の理解とともに支えてくれた家族に大変感謝しています。」

河野 行雄 准教授
受賞対象となった研究テーマ及び内容:「テラヘルツ電磁波の画像化技術とその物性研究への応用」PDF

今回の受賞をうけ、河野准教授は次のようにコメントしています。

「マックスウェル方程式の完成とヘルツによる電磁波伝搬の実験的実証以来、人類は電磁波を上手に活用することによって、新しい科学技術を切り拓いてきました。テラヘルツ波は、電磁波の広大なスペクトルの中で最後の未開拓領域と言われ、物質・宇宙・生命科学から情報通信・医療等に至る幅広い分野での応用が期待されています。この興味深い領域において、「新しい発想」と「極限計測」にこだわりを持って研究をし続けてきました。今回このような栄誉ある賞を頂けたことを大変光栄に感じますとともに、お世話になりました共同研究者の皆様、研究室のメンバーに深く感謝申し上げます。今後も新規分野を立ち上げる意気込みで研究に邁進したいと思っております。」

味に対して顔の皮膚血流が特異的に応答することを発見

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要点

  • おいしいと感じると、瞼(まぶた)の血流が増加、おいしくないと感じると、鼻や額の血流が低下
  • おいしさと血流増加量との関連を突き止める
  • 意思疎通の困難な患者の味覚を客観的に判定可能

概要

東京工業大学社会理工学研究科の林直亨教授と県立広島大学の鍛島(かしま)秀明助教らは、味に対する好き嫌いに応じて顔の皮膚血流が特異的に応答することを明らかにした。すなわち、おいしいと感じられた刺激(オレンジジュースとコンソメスープ)を与えた際には瞼(まぶた)の血流が増加し、主観的なおいしさと瞼の血流の相対的増加量との間には相関関係が認められた。一方、おいしくないと感じられた刺激(苦いお茶)では鼻や額の血流が低下した。 この成果は言語を介しない味の評価法や味の官能評価の新たな手法として期待される。

研究内容は1月5日「Chemical Senses(ケミカル・センス)誌」に掲載された。

研究成果

被験者15名を対象に安静時と、味覚刺激中(オレンジジュース、コンソメスープ、苦いお茶、コーヒー、チリソース、水)に顔の皮膚血流をレーザースペックル法(用語)によって計測し、刺激中の血流の相対変化量を算出した。与えられた味覚の好き嫌いを表す主観的嗜好度を、11段階の主観的嗜好尺度法を用いて測定した。

その結果、おいしいと感じられた刺激(オレンジジュースとコンソメスープ)を与えた際には瞼の血流が増加した(図1参照)。主観的なおいしさと瞼の血流の相対的増加量との間には相関関係が認められた。一方、おいしくないと感じられた刺激(苦いお茶)では、鼻や額の血流が低下した。これら結果は、顔の皮膚血流が味覚に対する好き嫌いに伴って特異的に変化したことを示している。

背景

おいしいものを食べると幸福感がもたらされ、表情が変化するように、表情の変化は味の良し悪しや情動を反映する。ただし、表情は簡単に偽り、隠すことが可能なので、その変化から感じている味覚を評価することは困難である。

林教授らは恥ずかしいと顔を赤らめたり、体調が悪いと顔面が蒼白になったり、顔色にまつわる言語表現が数多く存在していることをヒントに、味覚の客観的評価法として、顔の皮膚血流に着目した。また、2011年に同研究グループは、基本味(甘味、酸味、塩味、うま味、苦味)に対して顔の皮膚血流が特異的に変化することを突き止めていた。複雑な味覚を用いても、顔の皮膚血流とおいしさの関連があることを実証することが、実用化に必要であることから、今回の研究を行った。

今後の展開

食品開発場面において、プロでも長期間のトレーニングが必要な味の官能評価に適用できると考えられる。応用的には、臨床や介護場面において、意思疎通の困難な者(例えば重症筋萎縮硬化症や筋ジストロフィーの患者さん)の味覚を客観的に判定でき、個人の嗜好に合った食事を提供することができると考えられる。

用語説明

レーザースペックル法: 光の干渉の変化する速さが、測定対象表面にある物体の移動速度と関連することを用いた非接触の血流測定法。

論文

雑誌名:
Chemical Senses
論文タイトル:
Palatability of tastes is associated with facial circulatory responses
執筆者:
鍛島秀明、濱田有香、林直亨


図1. コンソメスープをおいしいと評価した被験者の顔面の皮膚血流変化。
赤は血流が高く、青は血流が低いことを示す。スープ投与後には瞼の血流が増加していることがわかる。

お問い合わせ先
大学院 社会理工学研究科 人間行動システム専攻
教授 林 直亨(はやし なおゆき)
電話:  03-5734-3434 FAX: 03-5734-3434
E-mail: naohayashi@hum.titech.ac.jp

平野照幸 研究員と 関根亮二 研究員が第30回井上研究奨励賞受賞

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大学院理工学研究科地球惑星科学専攻佐藤研究室の平野 照幸 日本学術振興会(JSPS)特別研究員と大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻山村研究室の関根 亮二 研究員が、第30回井上研究奨励賞を受賞しました。

同賞は、公益財団法人井上科学振興財団が、理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した35歳未満(医学・歯学・獣医学の学位については37歳未満)の研究者で、優れた博士論文を提出した若手研究者に対し井上研究奨励賞を贈呈します。毎年4~9月に全国の関係大学長に候補者の推薦を依頼して選考を行い、12月に40件を決定します。受賞者には賞状、メダル及び副賞50万円が贈呈されます。今年の贈呈式は平成26年2月4日(火)に開催される予定です。

平野 照幸 JSPS特別研究員

受賞対象となった研究テーマ及び内容:
「惑星移動機構解明に向けたトランジット惑星系の軌道傾斜角測定」

今回の受賞をうけ、平野JSPS特別研究員は次のようにコメントしています。

「最初の太陽系外惑星が1995年に見つかって以来、天文学における新領域として太陽系外惑星の研究は飛躍的に進歩しました。私はトランジット惑星系と呼ばれる、惑星が恒星面上を通過して食を起こす系に着目し、その角運動量進化という観点で惑星系の起源を調べる研究を行ってきました。今回一連のトランジット 惑星の観測的研究を評価して頂き、名誉ある賞を頂いた事を大変光栄に思っております。大学院5年間様々な面で私の研究を支えて下さった恩師の東京大学 須藤先生、京都大学 樽家先生、本学の佐藤先生、また共同研究者の方々にはこの場を借りて深く感謝申し上げます。」

関根 亮二 研究員

受賞対象となった研究テーマ及び内容:
「細胞種多様化のための人工遺伝子回路の設計と制御」

今回の受賞をうけ、関根研究員は次のようにコメントしています。

「我々は、既知の遺伝子を組み合わせた「人工遺伝子回路」によって、大腸菌集団内での細胞種の多様化および多様性の維持を実現しました。将来的には、この人工遺伝子回路を哺乳類細胞に応用することで、生体組織の構築においてブレークスルーをもたらすことが期待されます。本賞を受賞できたことを光栄に思うとともに、これまでお世話になりました恩師、研究室のメンバー、家族など多くの方々に深く感謝申し上げます。本賞受賞を励みとして、今後も人工遺伝子回路をツールとした、生命現象の操作および解明に邁進していきたいと思っています。」


光を捕集する「人工の葉」を開発-植物の光合成に匹敵する人工光合成の実現にめど-

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要点

  • 植物の光合成と同様、2段階のエネルギー移動で光を捕集
  • 単位面積当たりの光量が少ない太陽光を安価な有機分子で集光し、人工光合成の反応中心へ効率よく光エネルギーを集約
  • 高価で稀少な人工光合成用の光触媒の使用量を大幅に減らせる

概要

東京工業大学理工学研究科の石谷治教授と豊田中央研究所の稲垣伸二シニアフェローの共同研究チームは、2段階のエネルギー移動で、光を効率よく捕集する分子システムを初めて開発した。これは太陽エネルギーを高効率で化学エネルギーに変換する植物の光合成に匹敵する人工光合成の実現につながる成果だ。

光を吸収する有機分子を多量に、しかも規則正しく配置した壁で構成される多孔質材料のメソポーラス有機シリカ(PMO、用語1)に金属錯体を導入することにより、400個を超える有機分子が吸収した光エネルギーを、まず5つの金属錯体が集め、最終的に一つの分子に集約することができた。

この光捕集システムを、二酸化炭素の還元資源化や水からの水素発生を駆動する光触媒(用語2)と融合することで、人工光合成系の開発につながる。地球温暖化と化石資源の枯渇の緩和に役立つと期待される。

この成果は英国化学会の機関誌「Chemistryworld」で10月に紹介され、「Chemical Sciences」に2014年に掲載される。

研究成果

植物の光合成の光アンテナ系(用語3)と同様に、2段階で光を捕集・集約する人工的なシステムを世界に先駆けて開発した。この新たな分子システムを用いると、400個を超える有機分子が吸収した光エネルギーを、まず5つの金属錯体が集め、最終的に一つの分子に集約することが可能である。


(左)
今回開発した光捕集・集約システム: 多くの有機基(ビフェリル)が導入された壁で構成された多孔質材料に、直鎖状の5核レニウム錯体の中心にルテニウム錯体が結合した分子が固定されている。
(右)
このシステムは、400個を越える有機分子が吸収した光エネルギーを、まず5つのレニウム錯体が集め、最終的に一つのルテニウム錯体に集約することができる。

背景

地球温暖化と化石資源の枯渇への危惧が増し、再生可能エネルギー技術の新規開発が急務となっている。これらの問題を根本的に解決する夢の技術として、太陽光エネルギーを分子に蓄える技術、いわゆる人工光合成(太陽燃料)が注目されている。二酸化炭素を還元し燃料や化学原料を作る、また水から燃料となる水素を製造する光触媒の研究は近年、長足の進歩を遂げている。

しかし太陽光の密度が大変低いため、従来の光触媒では、それらを多量に使用しなければならないことになる。高価で稀少な金属を必要とし、さらに合成にも手間のかかる光触媒をこのような方法で使用することは実質的ではない。

一方、植物の光合成は、比較的単純な分子(クロロフィル等)の集合体(光アンテナ、LH2 と呼ばれる)を、葉の表面に幅広く配置することで、大面積で太陽光を捕集している。これをエネルギー移動により、まず単位面積当たり数の少ない LH1(やはりクロロフィルの集合体)に集め、その後、その近傍に配置された、構造が複雑な反応中心(用語4)へと移動させる2段階での光エネルギー集約ステムを構築することで、太陽光の効率の良い利用を達成している。

これまで、植物を真似た光捕集システムの研究は行われてきたが、多量の単純な有機分子から2段階で光を集約するシステムの報告はなかった。

研究の経緯

本成果は、東工大と豊田中研の2つの研究室が独自に開発してきたシステムを組み合わせることで得られた。

豊田中研の稲垣グループは光アンテナ「LH2」モデルとしてのメソポーラス有機シリカ(PMO)を世界に先駆けて開発した。稲垣シニアフェローらが開発したPMOは、光を吸収する有機分子を多量に、しかも規則正しく配置した壁で構成される多孔質材料である。

一方、東工大の石谷研究室は、LH1と反応中心のモデルとしての多核金属錯体(Ru-Re5)を開発することに成功した。5つのレニウム錯体が吸った光が、同じ分子内の中心に配置された一つのルテニウム錯体に集約される1段階光捕集系である。

今回、Ru-Re5をPMOの空孔に導入・固定した。この複合系は、光合成と同様に2段階で光エネルギーを集約することができる。すなわち、400個を超えるPMOの有機分子(植物のLH2に対応)が捕集した光エネルギーは、まずRu-Re5の5つのレニウム(LH1に対応)錯体が集め、最終的に、ただ一つのルテニウム錯体(反応中心に対応)に集約される。

今後の展開

今回開発した光捕集システムを、二酸化炭素の還元資源化や水からの水素発生を駆動する光触媒と融合することで、太陽エネルギーを効率よく吸収し、化学エネルギーに変換する人工光合成系の開発につながる。また、このシステムの導入により、高価で稀少な人工光合成用の光触媒の使用量を激減させることができる

用語説明

1
メソポーラス有機シリカ(PMO): 様々な分子が入ることのできる"トンネル"が大量に、しかも規則的に並んだ多孔性の固体で、トンネルの壁が有機分子を多量に含んでいるので、光を効率的に吸収することができる。
2
光触媒: 光を吸収すると化学反応を引き起こす触媒
3
アンテナ: 光合成において、光を吸収するLH2と呼ばれるクロロフィルの集合体
4
光合成の反応中心: LH2が吸収した太陽エネルギーを最終的に受け、酸化還元反応を開始する部分を反応中心と呼ぶ

論文情報

題 名
Efficient light harvesting via sequential two-step energy accumulation using a Ru-Re5 multinuclear complex incorporated into periodic mesoporous organosilica
著 者
Youhei Yamamoto, Hiroyuki Takeda, Tatsuto Yui, Yutaro Ueda,ab Kazuhide Koike, Shinji Inagaki and Osamu Ishitani
掲載誌
Chem. Sci., 2014, 5, 639-648
DOI: 10.1039/C3SC51959Gouter
Received 14 Jul 2013, Accepted 15 Oct 2013, First published online 16 Oct 2013

お問い合わせ先
大学院理工学研究科 化学専攻
教授 石谷 治
TEL 03-5734-2240 FAX 03-5734-2284
E-mail ishitani@chem.titech.ac.jp

吉松公平助教が日本放射光学会奨励賞受賞

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大学院理工学研究科応用化学専攻大友研究室の吉松公平助教が、第18回日本放射光学会奨励賞を受賞しました。

同賞は日本放射光学会が、放射光科学分野において優れた研究成果を挙げた35歳未満の若手研究者の功績をたたえ、今後の更なる活躍を奨励するために設立されたものです。毎年4月~7月に学会員による候補者の推薦を依頼して選考を行ない、10月に3名以内の受賞者を決定します。受賞者には賞状及びメダルが贈呈されます。授賞式は1月11日から13日に広島国際会議場で開催された第27回日本放射光学会放射光科学合同シンポジウムにおいて開催されました。

受賞の対象となった研究テーマ及び内容

「放射光光電子分光による強相関量子井戸状態の観測」

吉松公平助教

吉松公平助教のコメント

「我々は、茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーにおいて、酸化物薄膜試料を作製するレーザー分子線エピタキシ装置と光電子分光装置とを組み合わせた複合システムの建設・改良を行っていました。本賞は、このシステムを用いることで薄膜人工構造により強相関電子の量子閉じ込めに成功し、放射光光電子分光を用いることでその特異な電子状態を初めて明らかにしたものです。今回名誉ある本賞を頂けたのは、学生時代の恩師である東京大学尾嶋正治先生をはじめ、たくさんの共同研究者の協力によるものです。この場を借りて深く感謝申し上げます。」


授賞式にて

地球コアに多くの水素が存在 〜地球誕生時に大量の水〜

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概要

東京工業大学大学院理工学研究科博士課程 野村龍一と 同 地球生命研究所 廣瀬敬教授らは、高輝度光科学研究センター、京都大学、海洋研究開発機構と共同で、地球コアに大量の水素が存在することを突き止めた。このことは、惑星形成時に地球は大量の水(海水の80倍)を獲得したが、その大部分がコアに取込まれたことを意味する。

同研究グループはマントル物質を地球深部に相当する超高圧・超高温環境下に置いた後、融解の痕跡の有無を大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト)にて確認することにより、コア直上のマントルの融解温度は約3600ケルビンであることを明らかにした。マントル最下部は固体であるため、コア最上部の温度はそれ以下でなくてはならない。これは従来の見積りよりも少なくとも400ケルビン低い。一方、そのような低い温度で、コア(外核)は液体でなければならない。それには外核に水素が重量にして0.6%(原子数換算で25%)程度含まれている必要がある。このような大量の水素は、地球形成期にマグマオーシャン中で金属鉄中に取込まれた可能性が高い。今回推定されたコア中の水素量は水に換算すると地球全質量の1.6%(海水の約80倍)にあたり、地球はその形成時に大量の水を獲得していたことがわかる。

今後のさらなる研究により、地球以外の天体の金属コアの組成、地球の水の起源、さらには太陽系外惑星の海水量推定などが大きく進むと期待される。

今回の成果は、米科学誌「サイエンス」に掲載される。

地球の断面図

お問い合わせ先
東京工業大学 地球生命研究所
廣瀬 敬
野村 龍一 (筆頭著者)
TEL 03-5734-3528 FAX 03-5734-3416

東京工業大学 地球生命研究所 広報担当 (pr@elsi.jp)
TEL 03-5734-3163 FAX 03-5734-3416
http://www.elsi.jp/

安価な試薬を用い短時間(<5秒)・高収率のペプチド合成法を開発

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要点

  • 安価な試薬を用い、20℃、4.8秒でアミド結合を形成
  • 副生物が二酸化炭素と塩酸のみのクリーンなプロセス
  • エピメリ化しやすいアミノ酸、嵩高いアミノ酸にも適用可能

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の布施新一郎助教、御舩悠人大学院生らは、薬剤や生体適合性材料として重要なペプチドを迅速、高収率、かつ安価に合成する手法を開発した。この手法により安価で高活性な試薬を使用し、マイクロフロー合成法を駆使して反応時間を5秒以内に制御し、副反応の抑制に成功した。また、この手法は嵩(かさ)高いアミノ酸やエピメリ化を起こしやすいアミノ酸にも適用でき、スケールアップも容易なことから、多様なアミノ酸から構成されるペプチドの大量・低コスト供給に道を開くものである。

従来のペプチド合成法は (1)高価な試薬を要する (2)試薬のスクリーニングが必要 (3)多量の副生物を生じる (4)嵩高いアミノ酸との反応は長時間かかる―といった問題点を持つ。このため多様なアミノ酸から構成されるペプチドの大量・低コスト供給は極めて困難だった。ペプチド合成は、高活性試薬を使用するとエピメリ化などの副反応を誘発するため、高価で温和な活性の試薬の使用が常識とされてきた。本研究では発想を転換して従来法の欠点を解消した。

この成果はドイツの化学会誌「アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie International Edition)」に速報として掲載され、また、「シンレット(Synlett)」誌の「シンパクツ(Synpacts)」にも掲載予定である。

開発された安価な試薬を用い短時間(<5秒)・高収率のペプチド合成法のプロセス

論文情報

Shinichiro Fuse, Yuto Mifune, and Takashi Takahashi, "Efficient Amide Bond Formation through a Rapid and Strong

Activation of Carboxylic Acids in a Microflow Reactor" Angewandte Chemie International Edition, Article first published online: 2 DEC 2013

DOI: 10.1002/anie.201307987outer

お問い合わせ先
東京工業大学大学院理工学研究科 応用化学専攻
助教 布施新一郎
TEL: 03-5734-2111 FAX: 03-5734-2884
Email: sfuse@apc.titech.ac.jp

高水素濃度の特殊な温泉に含まれるメタンの起源を解明

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概要

東京工業大学 地球生命研究所の吉田尚弘教授、丸山茂徳教授、黒川顕教授、同大学院理工学研究科の上野雄一郎准教授らの研究グループは、長野県白馬地域の温泉水が無機的に合成されたメタンガスを含むことを突き止めた。これは地球初期の生命誕生のメカニズムを解き明かすことにつながる成果である。

この温泉水は、蛇紋岩と呼ばれる特殊な岩石と水が反応することによってできた強いアルカリ性の温泉で、かつ水素濃度が高い。このような温泉は、現在の地球では稀であるが、生命誕生前の初期地球ではありふれた温泉環境であったと考えられている。

今回、この温泉で、今まで知られていなかった無機的な化学反応によって生命のもととなる炭化水素が合成されていることを突き止めたことから、同様の化学反応が地球の初期で有機物を作り、それが生命の誕生につながった可能性が示された。

この成果は1月15日発行の欧州の科学雑誌「アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ(Earth and Planetary Science Letters)」に掲載された。

高水素濃度の特殊な温泉に含まれるメタンの起源を解明

論文情報

Konomi Suda, Yuichiro Ueno, Motoko Yoshizaki, Hitomi Nakamura, Ken Kurokawa, Eri Nishiyama, Koji Yoshino, Yuichi Hongoh, Kenichi Kawachi, Soichi Omori, Keita Yamada, Naohiro Yoshida, Shigenori Maruyama, “Origin of methane in serpentinite-hosted hydrothermal systems: The CH4-H2-H2O hydrogen isotope systematics of the Hakuba Happo hot spring” Earth and Planetary Science Letters, 2014, 386 112-125.

お問い合わせ先
東京工業大学 大学院理工学研究科 地球惑星科学専攻准教授
上野雄一郎
Email: ueno.y.ac@m.titech.ac.jp

東京工業大学 地球生命研究所 広報担当
TEL: 03-5734-3163 FAX: 03-5734-3416
Email: pr@elsi.jp

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