リベラルアーツ研究教育院の若松英輔教授の著作『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋刊 2017年12月10日発行)が第16回角川財団学芸賞を受賞しました。
若松教授のコメント
「書物」とは、書かれたときにではなく、読まれたときにはじめていのちを帯びるものです。その言葉は、読む者の知性と経験によって新生するとさえいえます。
このたび、本作に与えられた栄誉も、選考委員をはじめとした関係者の皆さんのそのような「読み」の助力があったからに違いないと思います。
また、書物は、書き手のほかに編集者、校正者、装丁者らの参与があって初めてかたちを帯びます。このたびの光栄をまず、この同志たちと共に喜びたいと思います。
この作品にはもうひとり重要な協同者がいます。越知保夫(1911年~1961年)です。
彼は一冊も著作を遺すことなく、亡くなりましたから、その名前を知る人は多くないかもしれません。しかし、没後、有志らによって編まれた遺著の冒頭に置かれた「小林秀雄論」は、数多ある小林論のなかで、きわめて独創的なだけでなく、小林以上に、小林の精神に肉薄した秀作であり、遠藤周作をはじめとした人々に影響を与えてきました。
十代の終わりごろ、この人物とその作品を知り、以来、私にとって書くとは、彼が病のためになし得なかったことを実現することと同義になりました。
この著作に良きところがあれば、多くを越知保夫に負うことをここにお伝えしないわけには参りません。この機会に彼の言葉がよみがえることを切に願います。
『小林秀雄 美しい花』について
帯の一節を紹介します。
「小林秀雄は月の人である。
中原中也、堀辰雄、ドストエフスキー、ランボー、ボードレール。
小林は彼らに太陽を見た。
歴史の中にその実像を浮かび上がらせる傑作評伝。」
角川財団学芸賞について
角川財団学芸賞は、アカデミズムの成果をひろく一般読書人・読書界につなげ、知の歓びを共有するとともに、研究諸分野の発展に寄与することを目的として、公益財団法人 角川文化振興財団によって2003年に設立されました。
対象は、日本の文芸・文化(文学・歴史・民族・思想・宗教・言語等とその周辺分野)、あるいはそれらを広範・多義的にテーマとする著作で、高レベルの研究水準にありながら、一般読書人にも読まれうる、日本語で書かれたものとされています。
今回は、10月12日に大澤真幸氏(社会学者)、鹿島茂氏(明治大学教授)、佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)、松岡正剛氏(編集工学研究所所長、イシス編集学校校長)によって選考会が行われ、受賞作が決定しました。
候補作4点の中には、本学リベラルアーツ研究教育院の中島岳志教授の『親鸞と日本主義』(新潮社刊)も選ばれており、その中での受賞となりました。
2018年12月6日(木)にホテルメトロポリタンエドモント(東京・飯田橋)で、本賞の贈呈式が行われます。
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