東京工業大学大学院総合理工学研究科の大坂武男教授、Zaenal Awaludin博士研究員を中心とした研究チームは、燃料電池の触媒に使われている白金触媒と同等の性能がありながら、優れた耐久性を持つ「多孔性タンタル酸化物(TaOx)ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒」の開発に成功した。
白金は資源的に希少で高価だが、水素‐酸素固体高分子形燃料電池では高い触媒活性を示す白金を用いることを余儀なくされている。同研究グループが開発した触媒の電気化学的に活性な白金の面積は従来の白金触媒と比べて小さいが同等の触媒活性を示しており、実用化のための新触媒開発の指針となる。
水素エネルギー利活用社会の実現の入口として、2009年の家庭用定置型燃料電池の市場投入に続き、2015年には燃料電池車の市場投入が予定されている。
燃料に水素、酸化剤に空気中の酸素を用いる固体高分子形燃料電池の電極触媒としては、希少で高価な白金を用いているが、燃料電池の本格普及には一層の高性能化、高耐久性化および低コスト化が不可欠である。特に酸素極での酸素還元反応触媒の新材料の開発が求められている。
大坂教授らが開発した「多孔性タンタル酸化物(TaOx)ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒」は、従来の白金触媒に比べ、白金の電気化学的に活性な面積が約4分の1と小さいにもかかわらず、白金触媒と同等の触媒活性を有する。さらに白金触媒に比べて、耐久性は約8倍に高まった。
新触媒が白金触媒に優る高い耐久性を有する理由として、多孔性TaOxマトリックスの中に白金ナノ微粒子が包含されて凝集と溶解が抑えられると考えられ、また酸素還元活性が促進される理由としては、白金表面上の被毒種(OH吸着種など)のTaOxへのスピルオーバー効果の結果として酸素分子の4電子還元配向吸着が促進されること、白金ナノ微粒子近傍の局所pHの低下、白金ナノ微粒子とTaOxとの電子的相互作用などが考えられている。
論文情報
- 著者:Zaenal Awaludin, James Guo Sheng Moo, 岡島武義, 大坂武男
- 論文タイトル:TaOx-capped Pt nanoparticles as active and durable electrocatalysts for oxygen reduction
- 記載雑誌:Journal of Materials Chemistry A, 1, 14754-14765 (2013)
- DOI: