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中性子が多い原子核に現れる特異構造を解明

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要点

  • 理研RIビームファクトリーでの実験により、ネオン31の微視的構造を決定
  • 中性子が非常に多い原子核に現れる3つの特異構造を統一的に理解
  • より重く、より中性子が多い不安定核に中性子ハローが普遍的に現れる可能性を示唆

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の中村隆司教授と理化学研究所(理研)の研究グループは、中性子が非常に多い原子核でみつかっている「中性子ハロー(用語1)」「魔法数(用語2)の消失」、「強い変形」という3つの特異構造が、重いネオン同位体(用語3)「ネオン31」(31Ne)にすべて発現していることを定量的に明らかにし、これを統一的に理解することに成功した。

この研究は東工大、理研のほか、ソウル国立大学(韓国)、サレー大学(英)、日本原子力研究開発機構、カン素粒子原子核研究所(LPC-CAEN)(フランス)、東京大学原子核科学研究センター(CNS)、東京理科大学と共同で行った。研究成果は4月7日に米国物理学会の学術誌「フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)」電子版に掲載された。

今回観測されたネオン31の描像

図1
今回観測されたネオン31(31Ne)の描像。30Neというコンパクトで硬い芯原子核のまわりに、中性子1個が薄く拡がって雲のようになっている部分(中性子暈、あるいは中性子ハローと呼ばれる)がとりまいている。 31Neが約3:2(長軸:短軸比)で変形していることもわかった。

核図表、いわゆる原子核の地図

図2
核図表、いわゆる原子核の地図。横軸が中性子数、縦軸が陽子数(原子番号)を表わしている。ネオン31(31Ne)は陽子数が10、中性子数が21で、存在限界に近い原子核である。31Neはハロー構造が発見されている原子核の中では最も重い。

用語説明

(1) 中性子ハロー
1個または2個の中性子が芯原子核から外にしみだして薄く雲のように大きく拡がった状態(図1は31Neの例). 中性子が非常に多い原子核に10種程度みつかっている。31Neはその中で最も重い原子核である。なお、日常用語としてのハロー(Halo)は日本語では暈(かさ)と呼ばれ、薄曇りの日に太陽や月に現れる光の環を指す。

(2) 魔法数
原子核は特定の中性子数や陽子数を持っていると、殻が閉じることにより、球形になり、より安定になる。安定核で知られている魔法数は2, 8, 20, 28, 50, 82, 126である。この機構はマイヤーとイェンゼンによって発見され、彼らはこの業績により1963年にノーベル物理学賞を受賞している。最近の不安定核の研究から、従来知られていた8や20などの魔法数が消失する一方、新しい魔法数も幾つかみつかり注目されている。

(3) 同位体
陽子数が同じで中性子数が異なる原子核(または原子)を同位体と呼んでいる。観測されているネオンの同位体は最も軽いものが17Ne(ネオン17)で最も重いものが34Ne(ネオン34)である。また、天然に存在するネオンの安定同位体は20Ne(ネオン20)、21Ne(ネオン21)、22Ne(ネオン22)の3種である。

論文情報

Deformation-Driven p-Wave Halos at the Drip Line: Ne 31, T. Nakamura et al., Phys. Rev. Lett. 112, 142501 - Published 7 April 2014

DOI: 10.1103/PhysRevLett.112.142501outer

お問い合わせ先

中村隆司

東京工業大学 大学院理工学研究科 基礎物理学専攻教授

TEL: 03-5734-2652

Email: nakamura@phys.titech.ac.jp


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