理学院 化学系の金子哲助教、日本学術振興会(JSPS)の星野翔麻特別研究員、日本学術振興会(JSPS)のミランダ・マルティン・サンティアゴ外国人特別研究員、科学技術創成研究院 ハイブリッドマテリアル研究ユニットの脇坂聖憲研究員の4名が、公益財団法人井上科学振興財団(以下、井上財団)の第34回井上研究奨励賞を受賞しました。
同賞は、理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した37歳未満(申込締切日時点)の研究者で、優れた博士論文を提出した若手研究者に対して贈呈されます。受賞者には賞状、メダルおよび副賞が贈呈されます。
今回は、候補者の推薦を依頼した関係242大学のうち50大学から157件の推薦があり、選考委員会における選考を経て40件が採択されました。
贈呈式は2018年2月2日(金)に開催される予定です。
受賞者
金子哲 理学院 助教
受賞対象となった研究テーマ
高電気伝導性を示す単分子接合の界面構造の設計と制御
単分子接合は1つの分子が金属電極間に架橋した構造を持ち、次世代の電子素子への応用が期待されています。本研究では金属と分子の接続点に着目して単分子接合系を作製することで、電気伝導度を飛躍的に向上させました。さらに外力による電子輸送特性の制御を行い、単分子接合の実用化に関して有意義な成果を得ることができました。
この度は、このような名誉ある賞をいただき大変光栄です。細やかなご指導をいただきました木口学教授に心より感謝申し上げます。共同研究者の皆様、支えてくださった研究室の方々、また、多数のご助言をいただいた物質・材料研究機構の塚越一仁博士、ライデン大学のヤン ファン ルーティンビーク(Jan van Ruitenbeek)教授に厚く御礼申し上げます。この賞を励みに今後も研究活動に努めてまいります。
星野翔麻 日本学術振興会(JSPS)特別研究員(東京工業大学 理学院)
受賞対象となった研究テーマ
ハロゲン分子の励起状態間緩和ダイナミクスに関する分光学的研究
電子励起状態にある分子の反応過程は、光合成過程や光エネルギー変換において非常に重要な役割を果たしています。本研究ではハロゲン分子のイオン対状態と呼ばれる、一連の高励起状態を対象として、それら励起状態の示す反応過程を、分子分光学的手法を用いて詳細に調べました。特に、自然放射増幅過程と呼ばれる、レーザー発振に関わる過程がイオン対状態の反応過程に大きく関与していることを明らかにしました。 ご指導いただきました東京理科大学の築山光一教授、共同研究者の広島市立大学の石渡孝教授、東京学芸大学の中野幸夫准教授をはじめとして、研究生活を支えていただいた多くの方々に感謝しております。
ミランダ・マルティン・サンティアゴ 日本学術振興会(JSPS) 外国人特別研究員(東京工業大学 理学院)
受賞対象となった研究テーマ
イッテルビウム量子気体顕微鏡
本博士論文研究では、極低温にまで冷却したイッテルビウム原子気体を、2次元光格子中に導入し、そこで発現する量子多体現象を、各サイトを分解して観測することに成功しました。このシステムを発展させることで、d波超伝導に代表される理論的取り扱いが困難な物性現象を量子的にシミュレートし、微視的発現機構について理解を深めることが可能になると期待しています。博士後期課程において指導していただいた本学理学院の上妻幹旺教授をはじめ、協力していただいた方々に心より感謝申し上げます。この受賞を励みに今後も研究に精進していきたいと思っております。
脇坂聖憲 科学技術創成研究院 研究員
受賞対象となった研究テーマ
電子・プロトンプーリング配位子を有する非貴金属錯体を基軸とした分子性多電子・プロトン移動系の構築
本研究は、レドックス活性配位子と金属イオンから成る錯体を軸とした新しい分子設計の多電子・プロトン移動系を創製しました。その特色は、金属との相互作用や光励起により、配位子上で自在に電子やプロトンが移動する点にあります。うまくいかず苦しんだ期間は長く、論文がまとまり博士号を取得できたときは報われた思いがしましたが、更に今回の受賞は大変励みになります。 基礎研究を積み重ね新しい分野や領域を創り上げることは並大抵ではありませんが、私の信条である「努力」「忍耐」「根性」を胸に、それを目指し熱意を持って精進し続けたいと思います。北海道大学 加藤昌子教授、小林厚志准教授、中央大学 張浩徹教授、松本剛助教を初め、たくさんの方々に大変お世話になりました。御礼申し上げます。