東京工業大学は、大学で行われている最先端研究のダイナミズムを紹介する講演会シリーズ 「インスパイアリング・レクチャー・シリーズ」を開催しています。そのシリーズの第2回が6月12日、大岡山キャンパス東工大蔵前会館くらまえホールにて行われました。
第2回のテーマは、「情報通信と社会—IT社会のための革新的光通信—」です。光通信の世界的研究者として知られる末松安晴・東京工業大学栄誉教授(元学長)を中心に、スウェーデン、デンマークからも著名研究者を招へいし、光通信を中心に情報通信分野をテーマとした講演会を開催しました。
講演会は、160名を超える参加がありました。参加者層も幅広く、大学生から社会人の方まで多くの方にご来場いただきました。講演は英語(同時通訳あり)で行われたこともあり、国際色豊かな内容になりました。
今回は4名の講演が行われました。
1. Optical Fiber Communication for the Information Society
東京工業大学 栄誉教授(元学長)
末松安晴博士
末松安晴栄誉教授は、光ファイバ通信の勃興期から光ファイバ通信の発展を生み出した革新的研究について、新しい情報通信技術(ICT)社会創出の観点から振り返りました。 豊富な写真やデータをもとに聴衆を引きつけるご講演で、1963年の東京工業大学全学祭において、世界で初めて行われたレーザ光を光ファイバで送る「光"ファイバ"通信」実験などの貴重な記録も紹介しました。引き続き、同氏が先導され、大容量長距離光ファイバ通信を可能にした動的単一モードレーザの一連の研究成果とそのインパクトについて講演しました。
2. Playing with Photons and Electrons "Bringing light to life"
デンマーク工科大学
クリスチャン・ストブケジャー教授
クリスチャン・ストブケジャー教授は、光ファイバ通信を可能にしたいくつかの革新的技術について講演しました。同氏が博士課程学生時代に滞在した東京工業大学での懐かしい経験も紹介され、その後同氏が精力的に取り組んだ光信号処理の一連の研究とともに、最近のヨーロッパで展開されるフォトニクスに関する国家プロジェクトについても紹介しました。
3. Tunable lasers from research to production - a personal view
Altitun社・Syntune社 共同創業者/スウェーデン戦略的研究財団 プログラム委員長
ビョルン・ブローベルグ博士
ビョルン・ブローベルグ博士は、同氏のライフワークともいうべき、現在の光通信ネットワークで広く使われる波長可変半導体レーザの研究開発、また、波長可変レーザについてのベンチャー起業についての貴重な経験について講演しました。さらに、同氏の半導体レーザ研究の出発点は、東京工業大学に在籍した1年間が貴重な基盤となっていることを懐かしい写真を交えて語りました。ベンチャー起業に関する失敗談、成功の秘訣など実体験をもとに、若い学生諸君にメッセージを送りました。
4. Terahertz Science and Technology: Innovation with Nanoelectronics
東京工業大学量子ナノエレクトロニクス研究センター
河野行雄准教授
河野行雄准教授は、光領域と電波領域の中間に位置するテラヘルツ波(THz波)を用いた新しいセンシング、イメージング技術について講演しました。半導体中の2次元電子ガスやカーボンナノチューブ・グラフェンなどの低次元ナノ電子材料が持つ特徴を活かした最先端の研究成果を紹介しました。THz波を活用した単一バイオ・分子解析など、新しい分野の開拓への展望と抱負を述べました。
講演後に行われた質疑応答は、ベンチャーの起業や、プロジェクトリーダーとして研究室をけん引する姿勢、情報通信とエネルギー問題、若手研究者へのアドバイスなどがあり、大いに盛り上がりました。
今後も東工大の最先端研究をご紹介する「インスパイアリング・レクチャー・シリーズ」を開催予定です。どうぞご期待ください。