東京工業大学 学術国際情報センター(以下、GSIC)は、次世代スパコン「TSUBAME4.0」を4月1日に稼働開始しました。
「みんなのスパコン」から「もっとみんなのスパコン」へ
東工大のスパコンであるTSUBAMEシリーズは、2006年4月に稼働開始したTSUBAME1.0以来、長年にわたり「みんなのスパコン」として国内外の産学官の研究開発を支えてきました。今回、すずかけ台キャンパスにて稼働を開始したのは、その最新システムであるTSUBAME4.0です。TSUBAMEシリーズの特徴であるGPU(Graphics Processing Unit)[用語1]を大幅に活用し、TSUBAME3.0からの継続性を保ちつつ、5.5~20倍の性能向上や利用しやすさの向上を実現します。
さらにTSUBAME4.0ではシリーズ初の試みとして、ラックデザインの公募が行われました。新しいスパコンが持つさまざまな可能性や用途の広がりをイメージし、4羽の「つばめ」が自由な流線を描きながら、どこまでも無限に広がる世界を羽ばたいていく様子をあらわすデザインとなりました。
TSUBAMEシリーズの利用は学内研究者だけでなく、学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)や革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)などの共同利用プログラムを通じて、学外研究者や企業研究者などに開かれています。今後も「もっとみんなのスパコン」として日常的に活用されることを狙います。
TSUBAME4.0の構成と性能
TSUBAME4.0では科学技術計算で主に利用される64 bitの倍精度[用語2]における高性能に加え、AIで利用される16 bitの半精度[用語3]においては952ペタフロップス(Peta Flops)[用語4]の性能を誇り、現存する国内の研究・教育機関のスパコンの中ではスーパーコンピュータ「富岳」に次ぐ2位相当となります。
表1. TSUBAME4.0構成
計算ノード・台数 |
HPE Cray XD665・240台 |
---|---|
以下、1台あたり |
|
プロセッサ |
AMD EPYC 9654(96コア)×2基 |
メインメモリ |
DDR5-4800 768 GiB |
GPU |
NVIDIA H100 SXM5 94GB HBM2e×4基 |
高速ネットワーク |
InfiniBand NDR200 200 Gb×4ポート |
ローカルストレージ |
1.92 TB NVMe SSD |
共有ストレージ |
HPE Cray ClusterStor E1000 |
表2. TSUBAME4.0システム性能
総演算性能 |
|
---|---|
倍精度 |
66.8ペタフロップス(TSUBAME3.0比5.5倍) |
半精度 |
952ペタフロップス(TSUBAME3.0比20倍) |
共有ストレージ容量 |
ハードディスク部 44.2 PB(TSUBAME3.0比2.8倍) |
TSUBAME4.0披露式・見学会と今後の展望
稼働開始を記念してGSICは、4月18日にすずかけ台キャンパスの大学会館およびG4-A棟でTSUBAME4.0披露式・見学会を開催し、約100名の来賓、学内外の関係者らが出席しました。
披露式では、GSIC伊東利哉センター長の挨拶に始まり、来賓の方々から祝辞が述べられました。またGSICの遠藤敏夫教授による「TSUBAME4.0の概要説明」に続いて、情報理工学院 情報工学系の秋山泰教授による「スパコンが加速する中分子創薬の潮流」、GSICの横田理央教授による「東工大・産総研による大規模言語モデルSwallow」の2つの学術講演が行われ、これまでのTSUBAMEシリーズなどで達成されてきた東工大の最先端の研究の紹介とTSUBAME4.0を利用することによる研究の大幅な加速への期待が述べられました。
今後の展望については、10月に東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学(Science Tokyo)として新たなスタートを切ることに関連して、益一哉学長も「TSUBAME4.0は、気象、物性科学、材料科学、計算化学や映像処理、言語処理、人工知能処理など今までの東工大の研究だけではなく生成AI医歯科学や地球環境科学などの医科歯科大との融合学術領域の進展においても重要な役割を果たす」と期待を述べました。TSUBAME4.0はScience Tokyoが目指す「コンバージェンス・サイエンスの展開」においても、不可欠な計算資源インフラとして貢献していきます。
TSUBAME4.0の主な利用プログラム・アカウント申込方法についてはアカウント取得方法を、利用料については利用料の概略をご覧ください。
用語説明
[用語1] GPU(Graphics Processing Unit) : 本来はコンピュータグラフィックス専門のプロセッサだったが、グラフィックス処理が複雑化するにつれ性能および汎用性を増し、現在では実質的にはHPCおよび AI用の汎用ベクトル演算プロセッサに進化している。
[用語2] 倍精度 : 整数以外の数値をコンピュータで扱う場合には浮動小数点数が用いられるが、精度を選択することが可能。科学技術計算では64 bitの倍精度が使用されることが多い。
[用語3] 半精度 : 半精度は倍精度などよりも短い16 bitであり、高速な演算が可能となる。有効な桁数が減るが AI分野では十分な精度とされる。
[用語4] ペタフロップス(Peta Flops) : フロップスは1秒間で何回浮動小数点の演算ができるか、という性能指標である。ギガ(10の9乗)、テラ(10の12乗)、ペタ(10の15乗)など。1ペタフロップスは1秒間に1,000兆回の計算。
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