ガードナー財団(本部:カナダ・トロント)は、25日、2015年ガードナー国際賞を東京工業大学フロンティア研究機構の大隅良典栄誉教授に授与すると発表しました。ガードナー国際賞は生命科学・医学分野の賞として、最も著名な賞の一つとして知られ、受賞者の多くがノーベル賞を受賞しています。
大隅教授の受賞理由はオートファジー(自食作用)の仕組みの分子レベルでの解明です。オートファジーとは細胞内のタンパク質の分解と再利用の基本的な仕組みで、その機能に異常が生じると神経変性疾患、癌、感染症等の病気を引き起こすなど医療においてもその重要性が認識され始めています。
大隅教授は細胞が自身の一部を分解したり、内部の不要物を除去し、侵入者を排除し、健全な細胞を維持するオートファジー現象を世界で初めて肉眼で観察することに成功しました。オートファジーは細胞のリサイクルシステムであり、体の恒常性を維持する機能を持っています。大隅教授は、オートファジーに関わる遺伝子群を明らかにし、その分子機構を解明しました。
オートファジーは、アルツハイマー病などの神経変性疾患、癌、加齢に伴う病気などを治療する医療への応用が期待されています。多くの研究者が、分子レベルのメカニズムのさらなる解明と、生理学上の重要性を明らかにするために取り組んでいます。
授賞式は2015年10月29日にカナダ・トロントで開催される予定です。
大隅良典栄誉教授コメント
ガードナー国際賞という栄えある賞を受けることになり大変光栄に存じます。27年間にわたって、酵母を用いてオートファジー研究に取り組んできましたが、このような基礎的な研究が契機となり、大きな研究領域が展開され、医療にまでつながる研究成果が生まれつつあることを大変嬉しく思います。分子機構はもとより、健康や病気との関連や生理学的意義についても、まだまだ分かっていないことは多くあります。現在では多くの研究者がオートファジー研究に取り組んでおり、一層の研究の発展を願っています。
三島良直学長コメント
大隅良典栄誉教授がガードナー国際賞を受賞されることを大変嬉しく光栄に存じます。大隅教授はオートファジーという生命科学の全く新しい分野の研究を先導してこられ、基礎的仕組みを解明し、医療への応用につながる大きな礎を築かれました。東工大は基礎から応用までの幅広い科学技術の分野で卓越した研究成果を生み出してきています。今回の受賞を機に、生命科学分野での世界最先端研究をリードできる体制をさらに強化し、全学を挙げて支援していきます。
ガードナー賞: ガードナー国際賞(Gairdner International Award)は、カナダのガードナー財団より、医学にたいして顕著な発見や貢献を行った者に与えられる学術賞。毎年、3名から6名に与えられる。賞金は10万カナダドル。医学に関する賞として、最も著名な賞の一つとして知られる。1959年から開始され、これまでの55年間において15か国320人が受賞、うち82人がその後ノーベル賞を受賞。
ガードナー財団: 実業家、篤志家など様々な分野で活躍したJ. A. ガードナー氏が50万ドルを寄付して1957年にカナダ・トロントに設立。自身も関節炎などに悩まされたことから医学分野での顕著な業績をもたらした研究者を称える賞を設置。
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