東京工業大学の細野秀雄栄誉教授(元素戦略MDX研究センター 特命教授)と神谷利夫教授(同センター長)は、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の野村研二准教授(本学博士後期課程修了、元特任准教授)とともに、ディスプレイ分野で世界最大規模の学会The Society for Information Displays(SID)のカール・フェルディナント・ブラウン賞(Karl Ferdinand Braun Prize)を受賞しました。5月22日、米国ロサンゼルスで開催されたSIDの大会「Display Week 2023」で授賞式が執り行われました。
ブラウン賞は、ディスプレイ業界に多大な影響を与えた優れた技術的業績に対して毎年1件が授与され、SIDの個人賞の中では最高位に位置づけられています。対象となった業績は「高易動度アモルファス酸化物半導体、特に今日の世界の標準となりつつあるIGZO-TFTの技術における先駆的研究、継続的な科学と技術への貢献と産業的リーダーシップ」です。
IGZO-TFTは、2003年に結晶薄膜を使ってScience誌に、2004年にはアモルファス薄膜についてNature誌に、それぞれ初めて報告したもので、既に10,000回以上も引用されています。また、これらのTFTとそのディスプレイやメモリーなどの応用デバイスについて、数10件の特許群として世界各国で権利化されています。TFTはディスプレイの画素を駆動するキーとなる素子で、ディスプレイの性能を支配します。アモルファスIGZO-TFTは、それまで独占的に使われてきたアモルファスシリコンよりも電子が1桁ほど動きやすく、消費電力が少なく、しかも低温で容易に均質な薄膜が作製できるというメリットがあるため、今日では広く実用化が進んでいます。
細野栄誉教授が物質設計と全体のリーダーシップ、神谷教授が電子状態の解析、そして野村准教授がTFTの作製を主に担当し、この技術を完成させました。
細野秀雄栄誉教授のコメント
2011年にSIDからアカデミア対象のJan Reichman Prizeを受賞しましたが、今回は産業への寄与という点を評価していただきました。大学の基礎的研究が大きな産業応用につながることは稀(まれ)ですので、幸運に感謝いたします。今回の受賞は、3人のチームでなければ達成できなかったことです。この点を評価していただけたことに感謝いたします。
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神谷利夫教授のコメント
“材料”の研究をしていますので、広く実用化された例を作れたこと、そのことを評価していただき今回の受賞となったことに大きな喜びを感じています。また、TFTの発明以降はキャリア輸送・欠陥解析などの基礎研究を進めましたが、ここでは学生時代から続けてきた計算材料科学が大きな駆動力になりました。デバイス開発も含め、経験してきたキャリアを全て活用することができたことはよい経験になりました。
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関連リンク
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- 2023 SID Honors & Awards|Information Display Volume 39|SID online library
- 国際先駆研究機構 元素戦略MDX研究センター