東京工業大学 環境・社会理工学院とオープンイノベーション機構(OI機構)は共同で3月13日、東工大の戦略分野SSI(Sustainable Social Infrastructure)をテーマとした初の国際シンポジウムをハイブリッド形式で開催しました。
SSIとは、人生100年時代の安全・安心で一人ひとりの幸せを支える次世代の社会インフラを構築することを目的とした東工大の研究分野です。このシンポジウムでは東工大と海外4機関の最先端の研究を紹介し、「人」を中心に据えた社会インフラ創造のための課題と解決策について議論しました。日本国内だけでなく、海外からも多数の参加がありました。
開会にあたり、渡辺治理事・副学長が東工大SSIの目的とシンポジウムの趣旨について述べました。続いて、SSI分野アドバイザーの中井検裕教授(当時)があいさつし、ゆるやかな研究者の連合体、生活に密着した分野、学際性といった東工大SSIの特長について話しました。さらに岩波光保環境・社会理工学院副学院長からは、東工大のこれまでのSSI関連研究実績とこれからの中長期的なビジョンや戦略が説明されました。
次のセッションでは、SSIの4つの課題であるレジリエント社会の実現、地球の声のデザイン、スマートシティの実現、イノベーションそれぞれについての関連研究を、東工大教員と海外4か国(エジプト、フランス、タイ、英国)の大学・研究機関の研究者が幅広く紹介しました。
レジリエント社会の実現に関しては、まず、環境・社会理工学院 土木・環境工学系の鼎信次郎教授が、世界の洪水・水不足の予測をテーマに、国際的な研究活動とこれからの研究の方向性について話しました。次いで、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)のモナ・ガマール・エルディン・イブラーヒーム教授は、気候変動に対するコミュニティのレジリエンスに関して、E-JUSTキャンパスでのプロジェクトも含めた講演を行いました。
地球の声のデザインに関しては、環境・社会理工学院 融合理工学系の大友順一郎教授から、エネルギートランスフォーメーションとエネルギー多様化について、東工大の統合エネルギー科学への取組みも含めた紹介がなされました。次いで、フランスのポン・ゼ・ショセのジェローム・レスーアー学院長が、ポン・ゼ・ショセにおけるエネルギー転換と持続可能な開発に関する研究、長年にわたる東工大とのパートナーシップについて話しました。
スマートシティの実現に関しては、環境・社会理工学院 建築学系の大佛俊泰教授が人間行動の計測、モデリング、シミュレーションをテーマに、災害時の帰宅困難に関する研究などを紹介しました。そしてタイ国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC)のパニター・ポングパイブール博士からは、NECTECのスマートシティ活動について、ラボのプロトタイプから全国展開のプラットフォームまで幅広い活動が紹介されました。
イノベーションに関しては、環境・社会理工学院 イノベーション科学系の笹原和俊准教授が計算社会科学と社会イノベーションについて話し、情報の多様性を促進することの重要性を指摘しました。次いで、プロダクトデザイナーでもあるロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズのアッサ・アシュアック氏は、「成長しながら学ぶ―オブジェクトの人間化」というテーマで、ユニークな研究とデザイン活動を紹介しました。
このセッションでは、参加者との質疑応答も行われ、今後の協働につながることが期待されます。
若手研究者によるパネルディスカッションでは、環境・社会理工学院の千々和伸浩准教授がモデレーターを務め、同学院の三井和也助教、中山一秀助教、田岡祐樹助教が「SSIを通じて東工大が目指すべき方向性」をテーマに議論しました。社会との対話の場をつくる、東工大キャンパスを社会実験の場にする、異端なことにチャレンジする、といった新鮮なアイディアが次々に出されました。
続いて、OI機構の副機構長を務める大嶋洋一副学長の講演があり、東工大における企業との協働研究拠点を紹介するとともに、OI機構のエコシステム構築事業について述べました。
最後に、益一哉学長から閉会あいさつが述べられ、東工大はSSI推進に当たりグローバルな視野で協働したいと語り、シンポジウムは幕を閉じました。