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東工大ANNEXバークレーがコロキウム「見知らぬ者たちの音が聞こえてくる」を開催 戦前の「白豪主義オーストラリア」における日系コミュニティの音楽と舞踊を中心に

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東京工業大学は、9月8日、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)主催、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院(ILA)共催のコロキウム「見知らぬ者たちの音が聞こえてくる ― 戦前の「白豪主義オーストラリア」における日系コミュニティの音楽と舞踊を中心に(The Audibility of Strangers: Music and Disparate Japanese Communities in Prewar 'White Australia')」をオンラインにて開催しました。10月1日に東工大ANNEXバークレーが新たに設立されるのを機に、今後の両大学の研究や教育の協働のきっかけづくりとして企画されたもので、今回は、ILAのヒュー・デフェランティ(Hugh de Ferranti)教授がスピーカーを務めました。UCバークレー校東アジア研究所の山中啓子講師がディスカッサントを務め、10分間のコメントで、デフェランティ教授の研究を「国際移民学」の観点から評価しました。

開催当日は、アメリカ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、イタリアなど世界各国から70名を超える参加者が、共にテーマについての考察を深めました。

Credit left: Tomitaro Fujii: Pearldiver of the Torres Strait, by Linda Miley (Southport, Queensland: Keeaira Press, 2013, p.34) Credit right: The North Queensland Register (Monday, July 31 1905: 33)

Credit left: Tomitaro Fujii: Pearldiver of the Torres Strait, by Linda Miley (Southport, Queensland: Keeaira Press, 2013, p.34)
Credit right: The North Queensland Register (Monday, July 31 1905: 33)

下記のリンクから映像をご覧いただけます。

The Audibility of Strangers: Music and Disparate Japanese Communities in Prewar "White Australia" | YouTube - Cjs Departmental

デフェランティ教授の講演

デフェランティ教授
デフェランティ教授

この発表では主に、白豪主義(White Australia Policy)のさなかにオーストラリアに滞在した日本人たちの音楽活動が、彼らとアングロ・ケルティック社会やその他の諸民族との関係に及ぼした影響について紹介しました。同時に、この事例と、現在の日本社会におけるニューカマー移民たちの状況の類似点を考察しました。彼らは、様々な目的で音楽活動をしていますが、日本は彼らを移民と認めない「単一文化」社会であり、増加し続ける外国人の存在は、人種と文化の整合性を脅かす「脅威」とみなされ、彼らの不安は広がっています。

第二次世界大戦前の、自称単一民族社会であった「白人」のオーストラリア社会において、人種に基づいたヒエラルキーは当然とされていました。そのような時代を生きた日本人たちと、その他の民族や人種との関係に対して、音楽(歌うこと、音楽を奏でること、踊ること)が果たした役割について取り上げました。現在ではオーストラリア人も日本人もほとんど知らない時代と環境における音楽的体験です。大戦が残した多くの傷痕と同様に、オーストラリアにおける日本人の歴史は真っ二つに分けられ、その前半はほとんど誰も知らないものとなってしまいました。

大掴みにいうと、オーストラリアの日系移民コミュニティは、大陸北部の海産物採取企業で働く労働者階級と、シドニーの貿易会社で働く中流階級・エリート階級の2つに分かれていました。それらのコミュニティの様子が写っている写真や文字資料(新聞記事、日記など)を元に発表をしました。大陸の北部地域では、先住民族のアボリジニやトーレス海峡の島民、アジアの諸民族に比べて、ヨーロッパ系の民族はほぼいつも少数派でした。北部では労働力不足が切迫していたため、他の地域よりも柔軟性のある移民政策が必要でした。そのような状況下で、真珠貝採取などの危険な仕事をこなす技術を持っている日本人男性ダイバーと、彼らを支える様々な日本人たちは、白豪主義に基づく移民排斥政策から免除され、ブルーム、ダーウィン、木曜島やケアンズに居住することができました。

発見できた資料からは次のことが言えます。北部の日本人たちが地元社会で公に上演した音楽や舞踊は、主に日本や「東洋」の芸能として確認できるものが多かったようです。一方、シドニーではそのような「民族的な」演奏はほぼなく、クラシックや流行の「洋楽」や西洋風社交ダンスによって、日本人たちは国際主義的でコスモポリタンなスタンスを示していました。それは、白豪主義時代のオーストラリアで自分たちが同化可能な非西洋人であることを証明し、「他者化される」ことを妨げる作戦の一部でした。

山中講師のコメント

山中講師
山中講師

戦前オーストラリアの日本人移民も、彼らの音楽活動も滅多に取り上げられることはなく、この研究は、その両方の側面において刺激的なものです。日系コミュニティの数少ない女性や子供たちの音楽、特に「からゆき・唐行さん」と呼ばれた売春婦の女性たちの音楽活動については、今後も研究の発展が期待されます。現在の日本社会では、「沈黙する(silent)」移民たちは政治政策に反映されておらず、また大抵の日本人からも公的な認知を得ていませんが、彼らの音楽活動は、今日の、そしてこれからの「多文化共生」の実現化にたいして、重要な役割を果たす可能性をもっていると言えるでしょう。

埼玉県川越市内写真 下段中央のみ © Jürgen Horn / for91days.com

埼玉県川越市内写真 下段中央のみ © Jürgen Horn / for91days.com

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