東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の山中一郎教授が触媒学会の2019年度学会賞(学術部門)を受賞したと触媒学会が1月6日発表しました。授賞式は3月26日、第125回触媒討論会(工学院大学)で行われます。
触媒学会によると、学会賞(学術部門)は、「触媒に関する貴重な学術的研究をなし、その業績の特に顕著な者」に授与されます。受賞者は毎年2名以内で、同一人が重ねて受賞することはできません。
受賞題目
高難度反応を実現する電極触媒の開発と触媒作用の解明
受賞理由(抜粋)
電極触媒を研究対象として、これまでの触媒反応では実現が困難あるいは不可能であった高難度反応を高い選択率で実現する道を拓いた。
具体的には新規Co-N-C化合物電極触媒と燃料電池反応を組み合わせることにより、外部電力を用いずに高濃度純過酸化水素水の直接合成に成功し、あるいは世界で初めてフェノールの電解カルボニル化による炭酸ジフェニル直接合成をPd−Au系アノードを開発することで実現し、それぞれの新電極触媒の作用機構を解明したなど、触媒化学と電気化学を協奏的に融合させた新しい学問領域を開拓し発展させており、本賞に値するものと認めた。
山中一郎教授は次のようにコメントしています。
触媒学会を中心に研究活動している科学者にとって大変栄誉ある賞をいただき、関係者に深く感謝いたします。
基幹化学産業を支えている触媒化学と電池やセンサーを牽引する電気化学、両学問領域は古くは乖離していました。電子移動を伴う化学反応という意味合いにおいては、単語が多少違うだけで根本的な化学的作用や反応機構は共通していると理解しています。これらを融合させることにより、これまで不可能と考えられ回避されてきた高難度反応を実現させることに成功しています。この研究過程で学生さんや助教の先生たちと真剣かつ真正面からの議論をして研究を推進し、何度となく破れ、再び立ち向かうことが楽しくて仕方がありません。共に立ち向かってくれた山中研チームメートに深く感謝しています。
現在、研究の方向性を地球温暖化の抑制に貢献すべく、CO2排出削減や省エネルギーに寄与できるエネルギー・物質変換触媒・電極触媒の開発と作用機構の解明を中心に置いています。安易な道は選ばず、不可能を可能にする応用化学を開拓し続けます。研究を始める学生さん、一緒に頑張りませんか。