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地球の自転に合わせて観測のバトンを渡す~国際共同研究教育パートナーシップ

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東京工業大学がカリフォルニア工科大などとともに提案した国際共同研究「GROWTH」が、日本学術振興会が米国国立科学財団と連携して実施する国際共同研究教育パートナーシッププログラム(PIRE)に採択されました。このプログラムの援助を受けて、2016年から5年間にわたり7カ国13機関による共同研究を実施します。

本プロジェクトGROWTH(Global Relay of Observatories Watching Transients Happen)は、米国、アジア、ヨーロッパを結んで地球の北半球を一巡りするように位置する天体望遠鏡のネットワークを結成し、地球の自転に合わせて観測のバトンを渡していくことによって、一箇所では夜が明けるために不可能な長時間連続天体観測を実現します。

PIREプログラムとは、一国のみでは解決が困難な課題に対して、若手研究者に国際共同研究の機会を提供することを目的として、米国国立科学財団が日本学術振興会など世界各国の機関と連携して実施しているものです。2005年に開始され、5回目にあたる今回は、全部で17課題が採択されました。本プロジェクトは、日本が参加する2課題のうちの一つです。

望遠鏡と研究者のネットワークGROWTHは日の出によって観測が中断されません。米国パロマ山ZTFで発見された突発天体は、消えるまでに国から国へとバトンのようにリレー観測されます。

望遠鏡と研究者のネットワークGROWTHは日の出によって観測が中断されません。米国パロマ山ZTFで発見された突発天体は、消えるまでに国から国へとバトンのようにリレー観測されます。

近年特に注目されている分野である時間領域天文学※1、特に突発天体※2現象の研究においては、発生してから最初の1日の間に何が起こるのかが非常に重要です。例えば、超新星は数カ月にわたって輝きますが、未解明の点の多い爆発前の星の正体を調べるためには、爆発直後の衝撃波の観測が有用です。

※1
時間領域とは横軸を時間にして信号を観察(表現)する世界のこと。時間領域天文学では天体を時系列で追う。
※2
突発天体とは、急激に増光や減光を示すなどの激しい光度変化を、突発的に示す天体のこと。代表的な突発天体現象には、ガンマ線バースト、超新星等が挙げられる。

他にも、中性子星※3同士、あるいは中性子星とブラックホールの連星の合体で起きる爆発から、宇宙に存在する金や白金が生まれたという説が有力ですが、この爆発は極めて稀なため、その後短時間に進行する元素合成の現場が捉えられたことはありません。このような現象を見つけて直ちに対応するために、GROWTHが必要となります。カリフォルニア工科大が、パロマ山天文台の広視野天体望遠鏡PTFの広天域掃天観測によって突発天体を見つけたら、日本、台湾、インド、イスラエル、スウェーデン、ドイツと連携して連続観測を行います。特に興味深い場合には、すばる望遠鏡やケック望遠鏡のような、ハワイの大望遠鏡も動員します。広視野望遠鏡PTFは2017年にはさらに高感度、広視野のZTFへと増強される予定です。

※3
超新星爆発を起こした質量の大きな星の核が残ったもので、大きさは10km程度と小さいが、重さは太陽と同程度と非常に密度が高い。

また、今年から動き出す米国のLIGOや日本のKAGRAなどの重力波※4望遠鏡が、近い将来に他の銀河で発生する中性子星合体からの重力波を検出すると期待されています。しかし、重力波の到来方向を精度よく決めることはできません。PTFやZTFで、発生源の存在する可能性のある広い点域を探し、可視光や赤外線で光る対応天体を見つけることは、GROWTHの大きな目標です。ただ、広い天域では、多数の紛らわしい候補も同時に見つかることが予想されます。新しい情報処理技術を活用したソフトウェアを用いて候補を少数に絞り込み、GROWTHの追跡観測の対象とすることになります。東京工業大学は、日本での観測とデータ処理技術において共同研究を分担する予定です。

※4
質量をもつ物体はすべて時空のゆがみを引き起こす。物体が運動すればゆがみも運動し、その運動が波となって伝わる。重力波とはこの波のことを指す。

さらに、GROWTHは大きさ140m以下の小さな小惑星が地球近傍で見つかったときに、その起源と軌道を調べることができます。これらは小さいために、通常監視の対象になっていませんが、もし地球に衝突すれば大災害を起こしうるものです。

なお、これらの研究を推進するとともに、その研究を支える若手研究者の育成も、本プロジェクトの大きな柱です。研究テーマの基礎となる教材・教育コースを協力して製作し、学部学生、大学院生、博士研究員の国際交流も進めていきます。

GROWTHコンソーシアムを結成する、参加機関と各機関の主要研究者は次の通りです。

  1. 1.アメリカ カリフォルニア工科大 [幹事機関]: マンシ M.カスリワル博士(GROWTH代表)、シュリ・クルカルニ教授、トム・プリンス教授、リン・ヤン博士
  2. 2.アメリカ ポモナ大学: ブライアン・ペンプレーズ教授
  3. 3.アメリカ サン・ディエゴ州立大学: ロバート・クインビー准教授
  4. 4.アメリカ ロス・アラモス国立研究所: プルゼメク・ウォズニアク博士
  5. 5.アメリカ メリーランド大学カレッジパーク校: スチュアート・ヴォーゲル教授
  6. 6.アメリカ ウィスコンシン大学ミルウォーキー校: デイヴィッド・カプラン教授
  7. 7.日本 東京工業大学: 河合誠之教授
  8. 8.台湾 台湾国立中央大学: 饒兆聰博士
  9. 9.インド インド宇宙物理学研究所バンガロール: G. C. アヌパマ教授
  10. 10.インド インド天文学天体物理学大学連携センター: ヴァルム・バレラオ教授
  11. 11.イスラエル ワイツマン科学研究所:エラン・オフェク博士
  12. 12.スウェーデン アルバノヴァ大学センター: アリエル・グーバー教授
  13. 13.ドイツ フンボルト大学: マレク・コワルスキー教授

問い合わせ先

国際部国際事業課

Email : kokuji.jsps@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7690


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