科学技術が急速に進化、発展する中、本学は2030年に「世界トップ10に入るリサーチユニバーシティ」として、教育研究の成果と評価を世界最高水準に引き上げることを目標に掲げています。
「2030年に向けての研究企画」の検討にあたっての基本方針
目標の実現に向け、三島良直学長のもと、大学改革2年目を迎えた2017年4月から、世界トップ10を目指す研究分野について自由な意見交換を行っています。10年後の科学技術の役割を意識した新たな研究領域を創出し、本学の研究力を将来にわたって高めるための「2030年に向けての研究企画」を検討してきました。
第3期中期計画に掲げる「真理の探究・知識の体系化」、「産業への貢献・次世代の産業の芽の創出」、「人類社会の持続的発展のための諸課題の解決」に向け、全学の叡智を結集して社会の想像を超える科学技術を創出し、本学ならではの研究成果を社会に提供するための方策を検討しました。
まず、バックキャストのアプローチを取り入れ、次の1~3について検討することとし、「持続可能な開発目標(SDGs)」を意識しながら、今後の課題や将来の方向性を共有することとしました。
- 1.
- 未来社会と研究のつながり(新しい社会を切り拓く科学技術の姿)
- 2.
- 1を導き出す新しい研究領域・革新的な研究領域
- 3.
- 2の研究領域を包含し、世界トップ10と認知される本学の研究分野
学院等における検討
4月から各学院、リベラルアーツ研究教育院、科学技術創成研究院において個別に検討を開始しました。その結果を研究・産学連携本部 研究・産学連携戦略立案部会、および学長を議長とする戦略統括会議で共有し、改めて学院等において、リサーチ・アドミニストレーター(URA)※を加えて検討を重ねました。こうして集約されたアイデアが、全学ワークショップの開催に繋がりました。
- ※
- リサーチ・アドミニストレーター(URA)とは、大学等において、研究者とともに研究活動の企画・マネジメント、研究成果活用促進を行うことにより、研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化等を支える業務に従事する高度専門人材です。
講演会の実施
9月21日、ワークショップの開催に先立ち、近年の科学技術イノベーション政策を深く理解するため、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 研究開発戦略センターの倉持隆雄センター長代理をお招きし、「大変革期の科学技術イノベーション政策に向けて 鳥の目、虫の目、つながる目」と題した講演会を開催しました。
講演会には、三島学長をはじめ、ワークショップに参加する役員、教員、URAのほか、事務職員など約70名が参加しました。倉持氏からは、「研究開発の俯瞰報告書(2017年)」について、分野ごとの詳細な説明と、科学技術イノベーション政策に向けた具体的な提案事例の紹介がありました。さらに、社会変革の時代における科学技術イノベーションの役割として、「持続可能な開発目標(SDGs)」を巡る国際動向や、日本での取り組みについても述べました。質疑応答も活発に行われ、参加者一同、翌日のワークショップへの期待と意欲が高まりました。
全学ワークショップの開催
ワークショップは、各学院等の長から推薦された教員37名、安藤真理事・副学長(研究担当)から推薦されたURA12名と、三島学長、安藤理事・副学長、岡田清理事・副学長(企画・人事・広報担当)、大竹尚登副学長(研究企画担当)、丸山剛司副学長(特命担当)、屋井鉄雄副学長(産学官連携担当)、佐藤勲副学長(戦略構想担当)、研究・産学連携本部の堀尾容康副本部長、岡本和久副本部長、学長補佐室の伊原学学長補佐、末包哲也学長補佐の11名を合わせた60名で行われました。
ワークショップの冒頭、大竹副学長から、各学院等から提案のあった「未来社会と研究とのつながり」との対応をまとめたイメージ図を示し、ワークショップの趣旨について説明しました。その後、参加者は14のグループに分かれ、リベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗准教授のファシリテーションにより、各学院等における検討結果をもとに設定した「目指す2030 年の“仮の”社会像」とともに、今後の課題や将来の方向性を検討しました。
伊藤准教授からは、「人間中心」(ヒューメイン)について説明があり、その後、各グループは、以下2点について「えんたくん 」※を囲んで議論を交わし、議論の結果を発表しました。
フェーズⅠ:人間中心の観点からベスト・シナリオを1つ~3つ、および検討する過程で見えてきた、社会が人間中心であるための3箇条
フェーズⅡ:人間中心社会実現のための「新研究領域」とは?
各グループの発表内容については、発表と同時並行で、グラフィック・レコーディング により図示化され、その後の議論にも大いに役立ちました。
- ※
- えんたくんとは、円型の段ボールでできた1枚の板であり、それを参加者の膝に乗せながら自由にアイデアを書き込む対話促進ツールです。
ワークショップ終了時には、参加者に追加課題が課されました。後日、ワークショップの議論から浮かび上がってきた“仮の”キーワード等についてさらに検討が加えられ、「サイボーグ工学」や「多様な幸福のための調和学」など、夢のある領域が取りまとめられました。
2030年に向けて、今後これらの領域については、単なる「夢」で終わらせることなく、全学の叡智を結集し推進していきます。
ちがう未来を、見つめていく。
役員・教職員・学生の参加によるワークショップを通じて、2030年に向けた東京工業大学のステートメント(Tokyo Tech 2030)を策定しました。